循環器アセスメント―手順と触診・聴診の部位と評価
- 公開日: 2014/7/12
アセスメントは、患者さんとの会話やケアを通じて全身の状態に目を向け、五感をフルに活用することが大切です。ここでは系統別にフィジカルアセスメントのテクニックをまとめました。普段行っているアセスメントの流れと手技を再確認してみましょう。
循環器のフィジカルアセスメントの進め方
血液により酸素や栄養を全身に送り出しているのが、ポンプ機能を持つ心臓。この心臓と血管の状態の見極めは、予防を含めた看護展開のために重要なポイントです。
1.視診でここをCHECK!
- ●顔面の状態(顔色、浮腫)
- ●上肢の状態(循環状態)
- ●頸動脈の状態(静脈圧)、胸郭の状態)
- ●下肢の状態(循環状態)、姿勢など
2.触診でここをCHECK!
- ●動脈(橈骨動脈・総頸動脈・大腿動脈・足背動脈)の状態(弾力性、脈拍数、リズム、脈圧の大きさ、左右差)
- ●腹部大動脈の状態など
3.打診でここをCHECK!
- ●部位ごと(大動脈弁領域→肺動脈領域→エルプ領域→三尖弁領域→僧帽弁領域)の心音の状態(i音とii音の聴き分け、心雑音・過剰心音の有無)
- ●呼吸音など
循環器のフィジカルアセスメントのコツ
テクニック1 触診のコツ
■触診部位の選択
触診する動脈の第一選択は、心臓に近く最も観察しやすいとされる橈骨動脈です。一般的には、収縮期血圧が60mmHg以下になると橈骨動脈では触知できないため、代わりに大腿動脈、総頸動脈など中枢側を選択します(下図)。
腹部大動脈など動脈系血管の手術後は、血栓や塞栓ができやすくなるので、特に動脈の触診が重要です。このとき使用する動脈は下肢の後脛骨動脈、足背動脈で、詰まりやすい末梢に異常がなければ、上位にある動脈にも異常がないと判断します。
■触診の方法
動脈触知は、示指・中指・環指の3本の指を軽く動脈の上にあてて行います。3本のほうが動脈の性質や脈波を感じ取りやすくなります。爪に近い指先の部分が最も感覚が鋭敏です。
■触診で何がわかる?
動脈を触診することで、心拍数、リズム、脈の性状を把握し、心臓のポンプ機能によって身体の隅々の細胞まで必要な酸素が送られているかどうかを評価します。また、血管壁の弾力性や左右差の観察も行い、動脈硬化や血栓の有無などをみます。橈骨動脈で左右差があった場合、どちらかに血行障害があることが考えられます。
■末梢循環不全の評価
心臓機能の低下による末梢循環不全を評価するには、アレンテストを行うかホーマンズ徴候の有無をみます。
アレンテスト
ホーマンズ徴候
テクニック2 聴診のコツ
■聴診の流れ
以下の順番で各部位に聴診器を当てて聴診します。各部位とも、最初は膜型でi・ii音や心雑音のような高調音を聴取し、僧帽弁に到達したらベル型に変えて、逆の順番でiii音やiv音のような低調音をエルプ領域まで聴取していきます(下図)。
1.大動脈弁領域(第2肋間胸骨右縁)2.肺動脈弁領域(第2肋間胸骨左縁)3.エルプ領域(第3肋間胸骨左縁)4.三尖弁領域(第4肋間胸骨左縁)5.僧帽弁領域(左第5肋間と鎖骨中線の交点)
■聴診で何がわかる?
心雑音は、弁の狭窄や血管の狭窄・拡大、または弁の閉鎖不全による逆流や欠損孔を通る血液がある場合に発生します。
収縮期雑音(i音とii音の間)または拡張期雑音(ii音とi音の間)のどちらで聴取されるかをみます。ここで確認するのは、発生部位、タイミング、持続時間、強さ、振動数、性質などです。
■聴診時の体位
聴診は、座位または仰臥位で行います。肺動脈弁や三尖弁に由来する心雑音は仰臥位、大動脈弁に由来する心雑音は前屈位になってもらうと聴取しやすくなります。
(『ナース専科マガジン』2014年4月号付録から改変引用)