認知症・認知機能障害の看護ケア|原因、症状、アセスメントのポイント
- 公開日: 2014/7/4
治療をスムーズに進めるため、あるいは安全・安楽に支援するために、高齢者特有の症状や機能低下のアセスメント方法を紹介します。今回は「認知症・認知機能障害」です。
(2017年7月4日改訂)
認知症・認知機能障害の基礎知識
主な原因疾患は?
認知症の原因疾患には、アルツハイマー病、脳血管障害、レビー小体病、前頭側頭葉変性症、パーキンソン病、頭部外傷、正常圧水頭症、脳腫瘍、甲状腺機能低下症などがあります。以下に挙げる4疾患は、代表的な原因疾患で、このうち、脳血管障害以外は中枢神経系の変性によって起こります。
アルツハイマー型認知症
脳の変性疾患で、大脳皮質連合野や海馬周辺にβアミロイド蛋白が沈着することで発症するとされている。記憶をつかさどる海馬で発症すると、短期記憶障害と見当識障害が現れる。
大脳皮質連合野では、試行・判断・実行注意が阻害されて、最終的には日常生活に支障をきたし、介助が必要な状態になる。持続的に徐々に進行する特徴を持つ。老化性疾患で、女性に多くみられる。見当識障害の出現は、時間、場所、人の順で起こる。
レビー小体型認知症
大脳皮質にレビー小体が出現するため、早期から現実的で詳細な内容の幻視、幻聴、妄想などの精神症状や、パーキンソン症状が現れる。アルツハイマー病との鑑別が難しい。
前頭側頭型認知症
前頭葉と側頭葉が限局性に萎縮。前頭葉の萎縮では特有な人格障害・常同行動、脱抑制や自発性の低下などが、側頭葉では言語に保続傾向が現れる。記憶障害は進行してから出現しやすい。
脳血管性認知症
脳出血や脳梗塞などによる脳細胞の損傷が起因となって起こる認知症。自発性の低下、抑うつ症状、注意障害、感情失禁などの症状がみられ、失語、先行、失認が生ずる。
比較的、人格や記憶は保持されるケースが多く、基礎疾患を治療することで予防が可能な認知症ともいわれている。
四肢麻痺、言語障害、嚥下障害といった神経症状を伴うことが多く、廃用症候群になりやすいので注意が必要。
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どんな症状?
認知症の症状には、中核症状と二次的に起こる周辺症状(BPSD)があります。
中核症状
記憶障害、言語障害(失語)、失認、失行、遂行機能障害、見当識障害など。
周辺症状
感情障害(不安、抑うつなど)、妄想、幻覚などの心理症状と、活動的行動(不穏、多動、徘徊など)、言語的・身体的攻撃性、睡眠・覚醒障害などの行動症状に分けることができます。
周辺症状は個別性のあるケアを行うことで、症状が改善されるともいわれています。
認知症の中核症状と周辺症状
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重症度を判定するには?
認知機能障害を測定するスケールとして、患者さんの協力が得られない場合でも判定できるツールの1つにClinical Dementia Rating(CDR)があります。CDRは、以下の5段階で判定します。
1. 健康(CDR 0)
2. 認知症の疑い(CDR 0.5)
3. 軽度認知症(CDR 1)
4. 中等度認知症(CDR 2)
5. 高度認知症(CDR 3)
の5段階で判定することができます。
これは、代表的な観察法の1つで、「記憶」「見当識」「判断力と問題解決」「社会適応」「家庭状況および趣味・関心」「介護状況」の6項目について評価点を付けるものです。
しかし、必ずしもツールを使って数値で表すのではなく、生活の中で何ができて何ができないのかを知ってかかわることが必要です。
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加齢による”もの忘れ”は、体験の一部を忘れる
認知症状との鑑別でまぎらわしいのが、加齢による”もの忘れ”です。もの忘れの原因は記憶力の低下で、体験の一部だけを忘れます。