胃瘻・経管栄養患者さんって褥瘡と関係があるの?
- 公開日: 2015/7/9
褥瘡の予防・治癒促進に欠かせない栄養管理。ここでは栄養状態の観察・アセスメント、栄養補助食品の選び方などをわかりやすく解説します。
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胃瘻・経管栄養の患者さんでは、褥瘡発生リスクが高まります
胃瘻患者さんでは非胃瘻患者さんに比べて褥瘡発生は2.27倍増加し、褥瘡の改善は0.7倍と有意に少なかったとの報告1)があることから、胃瘻患者さんでは褥瘡が発生しやすく、発生後も改善しにくいことが明らかになっています。
褥瘡発生リスクが高くなる理由として、次のような要因が考えられます。
1.胃管や胃瘻から栄養剤を投与しているときに頭側を30度以上あげる(ヘッドアップ)ことで「ずれ力」が生じる
2.下痢予防のためにゆっくり経管栄養を投与するため、ヘッドアップの時間が長くなった結果、臀部を長時間圧迫する
3.便失禁を生じがちなため、湿潤環境が持続する
このように、経管栄養の患者さんの場合、褥瘡発生リスクを高める要因があるため、これらを最小限に抑えるケアが必要となります。
プロバイオティクスやプレバイオティクスを活用しよう
下痢に関しては、経管栄養投与時の下痢対策を徹底します。
長期間腸管を使用せずに腸管機能が低下していることが予測される患者さんには、プロバイオティクスやプレバイオティクス、さらにはそれらを併用したシンバイオティクスを投与し、腸管機能を整えて下痢予防を行います。
1.プロバイオティクス:腸内菌叢のバランスを改善することにより人間に有益な作用をもたらす微生物
2.プレバイオティクス:プロバイオティクスの働きを助ける物質
3.シンバイオティクス:プロバイオティクスとプレバイオティクスの両方を含む食品や製剤
代表的な経腸栄養剤であるエンシュアリキッド®やラコール®は医薬品なので、患者さんの経済的負担が少なく選択されることが多いのですが、これらは食物繊維を含まないため、腸管粘膜が萎縮してしまい、下痢を発症しやすくなります。よって、必ず水溶性食物繊維を併用します。
水溶性食物繊維のグアーガム分解物(PHGG)は、欧州静脈経腸栄養学会のガイドラインにおける経腸栄養が引き起こす下痢防止において推奨度Aと評価されています。
ちなみに、固形化に使用される寒天も水溶性食物繊維ですが、腸管粘膜のエネルギー源となる短鎖脂肪酸をほとんど産生しないため、腸管粘膜萎縮予防には適していません。
参考文献
1)Teno JM Gozalo P,Mitchell SL,Kuo S,Fulton AT,Mor V:Feeding tubes and the prevention or healing of pressure ulcers,Arch intem Med,172(9)697-701,2012.
(『ナース専科マガジン』2015年7月号から改変利用)