【ストーマケア】どう指導する? 自己流のケアによる皮膚トラブル
- 公開日: 2017/7/19
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ストーマとは? ストーマケアについて
患者さんはどんな状態?
70歳代男性Dさん。直腸がんで腹会陰式直腸切断術を施行、S状結腸単孔式ストーマを造設しました。術後半年が経過したところで、傍ストーマヘルニアとなり、縫縮術を行いました。退院後はストーマ外来へ通院。傍ストーマヘルニアが再発し、ヘルニアベルトの着用を再開していましたが、最近は定期通院から遠のいていました。
「ストーマ装具のサイズを変更したが、装着しにくくなってきている」と、2年ぶりにストーマ外来を受診されました。
原因はどこにある?
皮膚トラブルはセルフケアにも問題が
Dさんの場合、面板が密着しにくくなっている一番の原因は、ストーマ近接部の変化によるものと考えられました。
Dさんのストーマ近接部には不良肉芽があり、全周にも肥厚している皮膚変化がみられました。不良肉芽は、縫合時に使用する糸などの異物による刺激で発生する場合と、繰り返される排泄物からの刺激で発生する場合があります。
Dさんは、全周に皮膚の肥厚変化がみられたことから、繰り返される排泄物の刺激が疑われたため、日常のケアをみていくことにしました。
自己流のケアで皮膚トラブルが
Dさんは傍ストーマヘルニアがあるものの、ヘルニアベルトを着用しており、装具の密着はサポートされていたと考えられました。また、幼少のときの外傷により片目が義眼でしたが、アクセサリーでの補正も正しく行うことができ、面板も中央に貼付できていました。
これらの情報から、ストーマ近接部の変化の原因は、装具の装着以外のケアにあると考え、本人から話を聞きました。
すると、ストーマ袋内に便が広がり捨てにくいため、排出口から水を入れて洗っていたことがわかりました。
便を排出するたびにストーマ袋に水を入れて洗うことで、防臭効果も落ちます。また、ストーマ周囲の面板が溶解し、露出したストーマ近接部の皮膚が浸軟に至ります。そこへ、排泄物が繰り返し付着することで、組織過形成や不良肉芽形成が起こったと考えられました。
また、ストーマ近接部に皮膚変化が起きたため装具が合わなくなり、Dさんが自身で大きいサイズの装具を選び直して使用したことで、皮膚障害の範囲が広くなったとアセスメントできました。さらに、面板貼付外縁部には色素沈着がみられました。
これについては、装具を剥がす手技が愛護的に行われていない可能性と、傍ストーマヘルニアのため、姿勢を変化させたときに起こる腹壁の変化により、面板と皮膚に繰り返し外力がかかっている可能性の2つが考えられました。
不適切なケアとは?
■問題として認識しにくい自己流ケア
ストーマは自分の意思とは関係なく排泄が起こるため、常時ストーマ装具を装着して、排泄管理を行います。そのため、装具を貼付するストーマ周囲の皮膚をより健常に保つ必要があります。
しかしながら、手術直後に適切な指導を受けていない場合や、術後年数の長い患者さんに多くみられるのが、自己流のストーマケアです。
相談窓口が明確に伝えられていないことに加え、適切な指導を受けていないことも相まって、問題が生じた際に自分なりにケアに工夫を加えます。
その後、患者さん本人が日常生活上に困難を生じなければ、問題は回避されていることになり、医療者へ相談がくることもありません。しかし、この自己流のケアが皮膚トラブルの原因となる場合があります。
アセスメントの POINT
皮膚障害の状態によっては、不適切なケアによるものと考えられることもあります。
例えば、ストーマ近接部の皮膚に円形状のびらんがみられる場合は、面板ストーマ孔のサイズカットが適切にできていない可能性があります。
また、ストーマ近接部の皮膚に浸軟や肥厚がみられ、ストーマ袋が排泄物で汚染されていたり、排出口のマジックテープに劣化がみられるときは、ストーマ袋を洗浄していることが考えられます。
皮膚保護材貼付外周部に皮膚トラブルがあれば、患者さんの判断で医療用テープを使用している可能性があるため、面板の周囲に何か貼付しているものがないか確認します。どこか一定の部位に皮膚トラブルが生じている場合は、面板を勢いよく剥がしていることも考えられます。
ほかに、面板が密着しておらず、皮膚保護材貼付部全体に紅斑がみられるときは、薬剤を塗布している可能性があるため、薬剤の使用についても確認します。
原因に合ったケアを実施!
3つのケアでトラブル改善
ストーマ近接部の皮膚の状態を改善しなければ、装具の密着性は維持できません。
そこで、まずは不良肉芽の治療について主治医と相談し、週1回の通院で、硝酸銀にて焼灼する治療を行いました。
また、治療と並行して必要なのは、ストーマ近接部の保護とストーマ袋を洗浄しないことでした。そのため、原因として考えられることをDさんへ説明したうえで、以下3つのケア方法を提案しました。
■装具を密着させる方法
不良肉芽部位への治療が終わった後は、排泄物を付着させないようにするため、粉状皮膚保護材を散布しました。
また、ストーマ近接部の皮膚を露出させないように、用手成形皮膚保護材を使用してフィットさせ、くぼみがある箇所には2重に厚みをもたせ、全周を保護するように貼付しました。
■ストーマ袋を洗わずに便を破棄する方法
便がストーマ袋内で広がるのを防ぐため、消臭潤滑剤を使用しました。さらに、排ガスがたまるとストーマ袋が少し膨らみ、便が広がらず、下方にたまりやすくなるため、ガスフィルターのない装具に変更しました。購入してしまっている残りの装具を使用する場合は、ガスフィルターをシールまたはセロテープで閉鎖するように説明しました。
■ストーマ周囲皮膚を機械的刺激から守る方法
「ストーマ袋内に便を少しでも残したくない」「入浴ごとに装具を交換したい」というDさんの希望に合わせて、装具を1日貼付用のものへ変更しました。
ほかにも、愛護的に装具をはがすための剥離剤、剥離刺激や外力から皮膚を保護するための被膜剤を使用しました。
ケア方法の POINT
不適切なケア方法が原因で皮膚トラブルが起きている場合は、患者さんが適切なケアに取り組めるように指導をする必要があります。
不適切なケアには、患者さん自身の工夫や選択した理由があります。そのため、適切なケアができていないことを注意するのではなく、まず今までの苦労を労い、現在の問題を共有します。そのうえで、ケア方法の変更を提案する姿勢が大切です。
面板のストーマ孔のサイズが適切でないようであれば、はさみを使わない自在孔や既成孔への変更を検討します。
皮膚保護材貼付外周部に医療用テープを使用している場合は、テープを使用する理由を確認し、テープの中止や変更、被膜剤の併用を提案します。
剥離方法に問題があるときは、剥離剤の使用や愛護的に剥がす手技を指導します。また、皮膚保護材貼付部に薬剤を塗布している場合は、油性の薬剤を使用すると皮膚保護材が密着しなくなることを説明し、必要があればローションタイプの薬剤を提案することも考えます。
患者さんにどう指導する?
根気強く長期的なサポートを
Dさんはストーマ袋を洗うという動作をなかなかやめることができなかったために、ストーマ近接部の皮膚状態は改善と悪化を繰り返し、半年を経て改善しました。
そこで、外来の度に一緒に皮膚状態を確認して評価し、良かった点をDさんにフィードバックしました。悪化がみられる場合は自己流のケアをやめるように説得するのではなく、何か困ったことがあったのか確認し、共感したうえで、解決案を提案するようにかかわりました。その過程のなかで、Dさんはストーマ袋を水で洗うという行為が皮膚の状態を悪くすることを理解し、ストーマ袋は洗わなくなりました。
ただし、皮膚の状態が改善しても、晩期合併症である傍ストーマヘルニアもあることから、ストーマや腹壁の変化は常に起きやすく、ストーマ外来で長期的にサポートしていく必要があります。Dさんの場合、問題解決できる相談窓口としてストーマ外来が役割を果たしたことで、定期的な通院へとつなげることができました。
(ナース専科マガジン2015年10月号より転載)
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