1. トップ
  2. 看護記事
  3. 診療科から探す
  4. 消化器科
  5. ストーマ
  6. 「ABCD-Stoma®ケア」ってなに?

【連載】ストーマケア 皮膚トラブル解決法

「ABCD-Stoma®ケア」ってなに?

  • 公開日: 2017/7/17

ストーマ周囲の皮膚のトラブルは、痛み・かゆみといった症状とともに、排泄物の漏れや皮膚トラブルの悪化につながりやすく、早期の対応が望まれます。皮膚トラブルの原因を早く究明し、取り除くことが重要ですが、こういった対処は誰もが簡単に行えるものではなく、臨床経験や直感的な判断かに基づき行われているのが現状ではないでしょうか。

そこでぜひ活用してほしいのが、日本創傷・オストミー・失禁管理学会学術教育委員が開発した『ABCD-Stoma®に基づくベーシック・スキンケア――ABCD-Stoma®ケア』です。手順に沿ってアセスメントすることで、ストーマケアに従事した経験がある看護師であれば、誰でもトラブルの原因がわかり、適切なケアを提供できます。『ABCD-Stoma®ケア』は、日本創傷・オストミー・失禁管理学会のホームページからダウンロードが可能です。ここでは、ABCD-Stoma®、ABCD-Stoma®ケアそれぞれの使用方法についてみていきましょう。


▼ストーマについてまとめて読むならコチラ
ストーマとは? ストーマケアについて


ABCD-Stoma®とは

 ストーマ周囲皮膚障害の重症度を、部位と程度・色調変化の有無によって評価するスケールです。「ABCDStoma®」は、Adjacent(近接部)、Barrier(皮膚保護材部)、Circumscribing(皮膚保護材外部)、Discoloration(色調の変化)の頭文字をとって名付けられたものです。

ストーマ周囲皮膚の区分図

ABCD-Stoma®の使用方法

1)ストーマ周囲皮膚を3つの部位に区分
・Adjacent(近接部)ストーマ接合部からストーマ装具の皮膚保護材までの範囲
・Barrier(皮膚保護材部) 
・Circumscribing(皮膚保護材外部)

2)A、B、Cの各部位ごとに、皮膚障害の程度を5段階で評価
●障害なしは「0点」、赤斑は「1点」、びらんは「2点」、水疱・嚢疱は「3点」、潰瘍・組織増大は「15点」
●同部位に程度の異なる皮膚障害が混在する場合は、障害の範囲にかかわらず最も得点の高い障害の程度を採択します。
●Cの範囲がない場合は、評価できないため「障害なし」とします。
●赤斑、びらん、水疱・嚢疱は急性の病態を示し、潰瘍・組織増大は慢性の病態を示します。

3)A、B、Cの3部位それぞれに、Discoloration(色調の変化)がないか確認
●色素沈着なしは「0」、色素沈着ありは「DP」、色素脱失ありは「DH」とします。
※「DP」のP はPigmentation、「DH」のH はHypopigmentation の頭文字を示します。

4)合計点数を算出
A、B、Cの3部位の得点を合算します。合計点数は0~ 45点で点数が高いほど重症です。D(色調の変化)は皮膚障害の治癒後にみられることから、過去の皮膚障害有無の評価であり、正常な治癒過程の経過中であることから得点はつけません。

5)「A○ B○ C○:○(点)D○」と表記

ABCD-Stoma®ケアとは

 ABCD-Stoma®を用いて採点した結果をもとに、チェックシートを使用してトラブルの原因の特定と、必要なストーマのスキンケア方法を導きだすためのツールです。

ABCD-Stoma®ケアの使用方法

1)ABCD-Stoma®で採点

2)ストーマケアを確認
 装具の剥がし方や貼り方・皮膚の洗浄方法、交換間隔、使用している装具やアクセサリーの種類とサイズ、外用剤使用の有無(ステロイド剤、抗菌剤など)、セルフケア状況などを日頃どのように行っているか実際に装具交換を行ってもらい確認します。見て確認できない部分はヒアリングします。

3)「全身状態に応じたスキンケア」の表で該当するチェック項目がないか確認
 該当する項目があった場合は医師に報告し、必要であれば専門家にコンサルテーションを行います。

4)「皮膚障害に対するスキンケア」の表で該当するチェック項目を確認
 A、B、Cそれぞれの部位で各得点が1点以上あれば「各部位におけるケア」の表でそれぞれ該当するチェック項目(黄色線)を確認し、ケア内容(青色線)を選択します。

5)「皮膚障害の程度によるケア」を参照して観察
 項目の結果と、ABCD-Stoma®ケアの点数により該当する項目のケア内容を確認します。

6)「D(色調の変化)がある場合」の表で該当するチェック項目を確認し、ケア内容を選択します。

7) 3)~6)のチェックがついた項目のケア内容を確認し、導き出されたケアを実施します。

8)ABCD-Stoma®を採点し評価
●ストーマ周囲皮膚の状況は身体の状態、ケア状況、生活状況、季節などさまざまな要因により変化します。トラブルの予防や改善のためには必ず定期的に評価することが必要です。評価・再評価は、入院中の患者さんでは装具交換ごとに、外来通院患者さんでは外来受診ごとに行います。
●採点は点数が変わらない、または増加した場合は皮膚・排泄ケア認定看護師や専門外来に相談します。
●合計点数が0点でかつD(色調の変化)が0点の場合は適宜評価を行います。
●合計点数が0点でも、D(色調の変化)がDP(色素沈着あり)、DH(色素脱あり)の場合は、「皮膚障害の程度によるケア」「Dがある場合のケア」の見直しを行い該当するスキンケアを行ってください。

 ストーマ周囲皮膚のトラブルは、気づくことができなかった原因から発生あるいは悪化します。「ABCD-Stoma®ケア」のチェック項目は、誰もが見落とすことなく皮膚トラブルの原因を収集できるツール(道具)となります。
また、採点結果をもとに、必要なストーマのスキンケア方法が具体的に提示されているので、効率的に早期に適切なケアが提供できます。
この『ABCD-Stoma®ケア』の活用は、臨床でのストーマケアの質の向上と、オストメイトの幸福な生活につながるといえるでしょう。


【参考文献】
日本創傷・オストミー・失禁管理学会「ABCD-StomaRケア-ABCD-StomaRに基づくベーシック・スキンケア-」

(ナース専科マガジン2015年10月号より転載)

この記事を読んでいる人におすすめ

カテゴリの新着記事

第26回日本小児ストーマ・排泄・創傷管理セミナー 開催のお知らせ

会期 2024年6月12日(水)、13日(木)、14日(金) 6月12日 13時開始、 6月14日 16時15分終了予定 研修内容 ストーマ術前術後のケア(低出生体重児を含む)、創傷ケア(褥瘡予防・局所ケア)、失禁ケア(尿・便失禁、自己導尿指導等) ※当セミナー

2024/3/1

アクセスランキング

1位

心電図でみる心室期外収縮(PVC・VPC)の波形・特徴と

心室期外収縮(PVC・VPC)の心電図の特徴と主な症状・治療などについて解説します。 この記事では、解説の際PVCで統一いたします。 【関連記事】 * 心電図で使う略語・用語...

250751
2位

【血液ガス】血液ガス分析とは?基準値や読み方について

血液ガス分析とは?血液ガスの主な基準値 血液ガス分析とは、血中に溶けている気体(酸素や二酸化炭素など)の量を調べる検査です。主に、PaO2、SaO2、PaCO2、HCO3-、pH, ...

249974
3位

吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コ

*2022年12月8日改訂 *2022年6月7日改訂 *2020年3月23日改訂 *2017年8月15日改訂 *2016年11月18日改訂 ▼関連記事 気管切開とは? 気管切開...

250001
4位

人工呼吸器の看護|設定・モード・アラーム対応まとめ

みんなが苦手な人工呼吸器 多くの人が苦手という人工呼吸器。苦手といっても、仕組みがよくわからない人もいれば、換気モードがわからないという人などさまざまではないでしょうか。ここでは、人工呼...

250017
5位

採血|コツ、手順・方法、採血後の注意点(内出血、しびれ等

採血とは  採血には、シリンジで血液を採取した後に分注する方法と、針を刺した状態で真空採血管を使用する方法の2種類があります。 採血の準備と手順(シリンジ・真空採血管) 採血時に準備...

250858
6位

心電図の基礎知識、基準値(正常値)・異常値、主な異常波形

*2016年9月1日改訂 *2016年12月19日改訂 *2020年4月24日改訂 *2023年7月11日改訂 心電図の基礎知識 心電図とは  心臓には、自ら電気信...

250061
7位

第2回 小児のバイタルサイン測定|意義・目的、測定方法、

バイタルサイン測定の意義  小児は成人と比べて生理機能が未熟で、外界からの刺激を受けやすく、バイタルサインは変動しやすい状態にあります。また、年齢が低いほど自分の症状や苦痛をうまく表現できません。そ...

309636
8位

サチュレーション(SpO2)とは? 基準値・意味は?低下

*2019年3月11日改訂 *2017年7月18日改訂 *2021年8月9日改訂 発熱、喘息、肺炎……etc.多くの患者さんが装着しているパルスオキシメータ。 その測定値である...

249818
9位

第2回 全身麻酔の看護|使用する薬剤の種類、方法、副作用

【関連記事】 *硬膜外麻酔(エピ)の穿刺部位と手順【マンガでわかる看護技術】 *術後痛のアセスメントとは|術後急性期の痛みの特徴とケア *第3回 局所浸潤麻酔|使用する薬剤の種類、実施方...

295949
10位

術前・術後の看護(検査・リハビリテーション・合併症予防な

患者さんが問題なく手術を受け、スムーズに回復していくためには、周手術期をトラブルなく過ごせるよう介入しなければなりません。 術前の検査  術前は、手術のための検査と、手術を受ける準備を...

249741