【連載】脆弱な高齢者の皮膚を守る ~スモールチェンジエアマットレスの有効性~
脆弱な高齢者の皮膚を守る ~スモールチェンジエアマットレスの有効性~(2)【PR】
- 公開日: 2016/8/15
高齢者の皮膚の脆弱性
上出さんは、高齢者にみられる皮膚の機能不全や脆弱性については、皮膚粗鬆症という言葉を用いて概念づけることができるといいます。ここに含まれる症状としては、老人性紫斑、皮膚萎縮、軽微な外傷による皮膚剥離、創傷治癒遅延、難治性萎縮性皮膚潰瘍、皮下深部解離性血腫による皮膚壊死などが挙げられています(文献1)。
なかでも、最も重篤な症状である皮下深部解離性血腫については、特別な注意が必要となります。初期は丹毒に似た下腿の疼痛と発赤、腫脹を伴うため蜂窩織炎と診断されるケースが多く、治療も遅れがちになることから、早期発見と適切な治療、予防が重要であり、看護師の観察とアセスメント力が大切になると指摘します。
皮膚粗鬆症の高齢者と若年者の皮膚の厚さ(表皮+真皮)を比較した研究では、若年者が1.44mmであったのに対し、高齢者は0.73mmと約半分という結果1)であったことを紹介しました。高齢者の皮膚が摩擦やずれに弱いことを示したうえで、ケアはもちろん、環境を整えることも大切であり、特に長時間過ごすベッドは褥瘡発生の要因にもなることから、高機能なエアマットレスの活用を選択肢の1つとして考えるとよいことを提案しました。
夜間の体位変換
冒頭で須釜さんは、「夜間の2時間ごとの体位変換が患者さんの安楽という点で適切なのか、褥瘡予防に結びついているのか」という疑問を示し、夜間における体位変換間隔の延長の取り組みを紹介しました。この取り組みは、高機能マットレスを積極的に使用している施設で、褥瘡発生のリスクがある高齢者350人を対象に行いました。
まず、体位変換前と2時間ごとの体位変換後の体圧(腸骨部・仙骨部)を測定したところ、平均体圧値は、腸骨部40.7mmHg、仙骨部39.4mmHgでした。その後看護師が十分に皮膚観察を行い、各対象者の状態を考慮したうえで、夜間の体位変換の間隔を2時間から4時間へ、さらに4時間から6時間と延長していきました。
夜間の体位変換の間隔を変更する前と変更した後とで褥瘡の平均発生率を調査したところ、変更前6カ月間は4.1%、変更後6カ月間は3.5%という結果となり、この施設においては、夜間の体位変換の間隔を延長しても、褥瘡発生率は変わらないというエビデンスが得られました。
引用文献
1)Kaya G,et al: Dermatology,2007;215(4):284-94.