認知症とは? 診断方法と4大認知症の特徴・症状・経過
- 公開日: 2017/1/9
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認知症・認知機能障害の看護ケア|原因、症状、アセスメントのポイント
認知症はどんな病気か
認知症とは認知機能の低下を呈する疾患の総称
認知症とは、「脳に器質性の疾患があり、記憶や言語などの複数の認知機能が後天的に低下して、それが慢性的に持続し、社会生活に支障をきたすようになった状態が続くこと」と定義されています。また、認知症は一つの疾患ではなく、記憶障害や見当識障害など、一度獲得された知能が後天的な原因で障害され、認知機能の低下を呈する疾患の総称です。
世界保健機関(WHO)の国際疾病分類第10版(ICD-10)によれば、認知症の診断基準は、
1.認知機能の障害あり
2.社会生活に障害あり
3.意識の障害なし
とされています。
つまり単なる物忘れだけでなく、実行機能障害や見当識障害、注意障害など、日常生活や社会生活に支障をきたすような認知機能の障害があり、意識が清明な状態の場合に認知症と診断されます。
認知症による記憶障害では出来事自体を忘れてしまう
では、知的機能が病的に障害されている人の脳の中では、どんなことが起こっているのでしょう。
例えば、認知症の代表的な疾患であるアルツハイマー病では、神経細胞の変性、脱落が著しく起こり、脳萎縮を生じます。原因の一つとして、β蛋白が脳に沈着することが確認されています。生化学的な変化としては、神経細胞の伝達物質の減少が、さらに生理学的な変化として、脳の血流や神経細胞のエネルギー源となるグルコースの代謝の低下が認められます。
こうした病的な原因がなくとも、脳は老化します。したがって年をとれば誰にでも物忘れ(知的機能の低下)は起こります。
このような加齢現象による物忘れ=質の良い物忘れ(良性健忘)と、認知症による記憶障害=質の悪い物忘れの違いはどこかというと、良性健忘は出来事の一部を忘れるために、本人に忘れたという自覚があります。それに対し、質の悪い物忘れは出来事自体を忘れます。
例えば、昨晩の夕食に何を食べたか思い出せないのは良性健忘ですが、質の悪い物忘れでは夕食をとったこと自体を忘れてしまい、たとえヒントを与えられても思い出せません。
しかし最近は、良性健忘のなかにも質の悪い物忘れの前段階が含まれている場合があると考えるようになってきました。それを軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)と呼びます。
MCIの診断基準は、「50歳以上で、物忘れを自覚しており、記銘力テストで成人の平均値より得点は低いが日常生活は正常で、知的機能の障害がなく、認知症の診断基準を満たさないもの」となっています。したがって老化に伴う物忘れも、慎重に経過を観察する必要があります。
認知症の原因となる病態・疾患とは
認知症をきたす原因疾患はさまざまある
認知症をきたす病態(疾患)には、変性疾患、脳血管障害、外傷性疾患、正常圧水頭症、ブリオン病、代謝・内分泌性疾患、腫瘍性疾患、中毒性疾患など、さまざまなものがあります。脳変性疾患の代表的なものには、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症があります。これらは脳にβ蛋白、タウ蛋白、αシヌクレインなどの異常物質が溜まることで脳が変性すると考えられています。そのほか進行性核上性麻痺、ハンチントン病、パーキンソン病などが挙げられます。