Alzheimer’s Disease Assessment Scale(ADAS)
- 公開日: 2022/6/19
ADASは何を評価するもの?
Alzheimer’s Disease Assessment Scale(ADAS)は、アルツハイマー病の病状を評価するためのスケールです。
アルツハイマー病による認知機能障害を評価する「ADAS-cog」と、精神状態などを評価する「ADAS-non cog」の2つの下位尺度から構成されていますが、ADAS-cogが単独で使用されることが多く1)、アルツハイマー病の診断時に進行の程度を判定したり、継続的に検査を行って病状の変化を把握する目的で用いられます。また、アルツハイマー病に対するコリン作動薬の効果を評価する際にも活用されます。
ただし、評価項目が多く、検査には40分前後を要するため、簡易的なスクリーニング検査には適さないとされています1)。
ADASはこう使う!
ADASは、アルツハイマー病による認知機能障害を評価する「ADAS-cog」と、精神状態などを評価する「ADAS-non cog」の2つの下位尺度で構成されています。
認知機能に関しては、「記憶」「言語」「行動」の3つの領域における計11項目(「単語再生」「口頭言語能力」「言葉の聴覚的理解」「自発話における喚語困難」「口頭命令に従う」「手指および物品呼称」「構成行為」「観念運動」「見当識」「単語再認」「テスト教示の再生能力」)について評価します(表)。
スケールの評価表には各評価に対する点数が記載されており、最終的に全ての項目の合計点を算出して評価を行いますが、認知機能障害の程度が高度になるほど点数も高くなります。
一方、精神状態など非認知機能に対する評価は、「涙もろさ」「抑うつ気分」「集中力の欠如」「検査に対する協力度」「妄想」「幻想」「徘徊」「多動」「振戦」「食欲の亢進/減少」の10項目で行います。
表 ADAS認知機能検査(採点表)
ADASの結果を看護に活かす!
ADASは評価項目が多岐にわたり、検査に多くの時間を要することから、アルツハイマー病のスクリーニングには適しませんが、病状変化の詳細な評価が可能なため、治療経過を評価するのに適しています。
アルツハイマー病の自然経過では、ADASによる認知機能の評価は年間で9~11点ほど上昇するとされています2)。
アルツハイマー病は進行性の疾患ですが、短期間で点数の上昇がみられる場合は、投薬量などが患者さんに適さないことや、認知機能の悪化を引き起こす他疾患を併発している可能性などが考えられます。ADASを用いる場合は日頃から点数の変化に注意し、目立った上昇があるときは医師に報告しましょう。
引用・参考文献
2)Stern RG,et al:A longitudinal study of Alzheimer’s disease: Measurement, rate, and predictors of cognitive deterioration.Am J Psychiatry 1994;151(3):390–6.
●佐藤篤,他:認知症の心理検査の実際―近畿大学医学部附属病院メンタルヘルス科における現状―.近畿大学臨床心理センター紀要 2010;第3巻.159-67.