Mini-Mental State(MMSE)|ミニメンタルステート検査
- 公開日: 2022/6/23
MMSEは何を評価するためのもの?
Mini-Mental State(MMSE)は、認知機能障害を簡易的にスクリーニングするためのスケールです。もともとは、認知機能障害を併発する精神疾患患者さんのスクリーニングを目的として開発されたものですが、検査が容易であることから精神疾患の有無によらず、認知症の診断に広く使用されるようになっています。
MMSEは30点満点の検査で、23点以下を認知症疑いとし、27点以下を軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)疑いとします。23点以下を認知症とした場合の感度は83%、特異度は93%と高く1)、優れたスケールとして評価されている一方、年齢や教育歴の影響を受けることも指摘されています2)。
また、認知症の可能性をスクリーニングするにとどまり、認知症のタイプや認知機能障害を引き起こすうつ病など、他疾患との鑑別はできない点にも注意が必要です。
MMSEはこう使う!
MMSEは、「時間の見当識」、「場所の見当識」「物品名の復唱」「注意(計算、言葉の逆唱)」「物品名の想起」「物品名の呼称」「文章の反復」「3段階の口頭命令」「読解」「書字」「図形模写」の11項目で構成され、それぞれの項目に1~5点が割り振られています(表)。合計点をもとに評価を行い、23点以下を認知症疑いとし、27点以下をMCI疑いとします。
スケーリングは検査表をもとに行うため、実施するにあたって特別な暗記事項などはありません。ただし、「物品名の復唱」では、誤った回答であっても複数回繰り返して実施できたり、「注意(計算、言語の逆唱)」では、患者さんが計算できない(したがらない)場合は言葉を逆唱してもらったりするなど、特有のルールがあります2、3)。評価に影響するため、実施する際は手順を誤らないよう注意します。
表 MMSEの評価項目、点数
項目 | 検査内容 |
---|---|
時間の見当識(5点) | 年、月、日、曜日、季節の5つについて質問する |
場所の見当識(5点) | 今いる都道府県、市区町村、施設・建物名、何階にいるか、何地方かの5つについて質問する |
物品名の復唱(3点) | 3つの単語を伝え復唱してもらう。3つの単語はまた後で聞くと伝え、覚えてもらう |
注意(計算、言葉の逆唱)(5点) | 100から順に7を引いていってもらう。計算ができない、またはしたがらない場合は、言葉の逆唱を行う |
物品名の想起(3点) | 「物品名の復唱」で覚えてもらった3つの単語を、もう一度言ってもらう |
物品名の呼称(2点) | 時計や鉛筆を見せて、「これは何ですか」と質問する |
文章の反復(1点) | 「みんなで力をあわせて綱を引きます」と繰り返し言ってもらう |
3段階の口頭命令(3点) | 紙を机に置いた状態で、「右手にこの紙を持ってください」「それを半分に折りたたんでください」「それを私に渡してください」と3つの指示を出す |
読解(1点) | 「目を閉じてください」という文章を見せて、その通りにしてもらう |
書字(1点) | 何か文章を書いてもらう |
図形模写(1点) | 指定した図形を模写してもらう |
MMSEの結果を看護に活かす!
MMSEは、6~10分程度で行える比較的簡単な検査です。患者さんの認知機能に疑問を持った場合は、積極的にMMSEを用いて現状を把握・評価し、看護を行う上でどのような点に注意すべきか、詳細なプランを立てる際に活用するとよいでしょう。
経過が長い患者さんで急激に点数が低くなっている場合は、認知機能に影響を及ぼす疾患を併発している可能性があるため、速やかに医師に報告することが大切です。
引用・参考文献
2)岩佐一,他:地域在宅高齢者における認知機能の縦断変化の関連要因 要介護予防のための包括的健診(「お達者健診」)についての研究.日本老年医学会雑誌2016;43(3):773-80.(2022年5月31日閲覧)https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics1964/43/6/43_6_773/_pdf/-char/ja
3)河月稔:神経心理学的検査.医学検査 2017;66(J-STAGE-2),11-21.(2022年5月31日閲覧) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jamt/66/J-STAGE-2/66_17J2-3/_pdf/-char/ja