がんの治療と暮らしのサポート実践ガイド -通院・在宅治療の継続を支える-
- 公開日: 2017/5/23
本年2月、NPO法人キャンサーリボンにより「がんの治療と暮らしのサポート実践ガイド-通院・在宅治療の継続を支える-」が上梓された。非常に役に立つ本である。
がん患者さんは治療と家庭、仕事、実存面における両立の問題に直面し苦しんでいる。これらは各々が重大な問題であり、早急な解決が必要である。そのためには、様々な情報収集が必要だが、最も良いのは良心的で分かりやすい手引書であろう。よい情報を得ることで闘病や看病の見通しが立ち、気持ちが安定し、医療者との会話も現実に即したものとなる。しかし、これら問題に具体的な回答を与える本はほとんど見当たらない。がんになって混乱のさなかにいる患者さん、ご家族にとって良い状況とは言えなかった。そのような現状を踏まえてこの本が出ることになったのだと思う。
本書は副題で「通院・在宅治療の継続を支える」とあるように、がん治療と生活を結びつけ、かつ両立させるための具体的な方法を導いてくれる。内容は5つに分かれ、Ⅰ暮らしをサポートする、Ⅱ暮らしのシーン別にサポートする、Ⅲ治療と暮らしをつなぐ、Ⅳ役立つ資源を知る・活用する、Ⅴこころをみる、こころを支える、と生活重視の構成になっている。執筆陣はその分野の第一線で活躍している専門家である。各項目は数ページで、図が多く用いられているので混乱の中にいる患者さん、ご家族にもわかりやすい。
特筆すべき点は、患者さんが日常生活を送るうえで最も困難に感じる点が選ばれて、分かりやすく書かれている事である。これは臨床の現場で患者さんの声に真摯に耳を傾け、問題点に答えてきたからこそ出てきた項目と回答なのだろう。
この本は通読するのもよいが、読者が問題としている点を探して勉強するのが良い。主だった点が網羅してあるので、読者の悩みに合致する点が必ず見つかると思う。この素晴らしい本を企画、作成したキャンサーリボンズの方々に敬意を表したい。
この本で救われる患者さん、ご家族は数多くいる。まずは皆様に読んでいただきたい。そして、がんになって悩んでいる患者さん、ご家族に薦めてほしい。また、病院の図書室に必ず置くべき一冊だと思う。
第30回日本サイコオンコロジー学会総会 第23回日本臨床死生学会総会(合同大会)
http://www.asas.or.jp/jpos30-jsct23/
会長:大西 秀樹(埼玉医科大学国際医療センター 精神腫瘍科 教授)
編集:NPO法人キャンサーリボンズ
定価:本体2,000円(税別)
サイズ:A4判
ページ数:212ページ
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