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【連載】見直そう! CKD・透析ケア

第15回 腎機能低下時の薬剤投与の注意点は?

  • 公開日: 2017/12/16

腎排泄または腎毒性のある薬剤に注意する

 通常、投与した薬剤は体内で作用を発揮した後、体外へ排泄されます。薬の排泄方法は何通りかありますが、腎排泄と胆汁排泄が主な排泄方法です。
腎機能低下をきたしたCKD患者さんは、薬の腎排泄ができず、体内に蓄積することがあります。薬剤の高い血中濃度の持続は、重い副作用や中毒症状を引き起こしかねないため、そのような薬剤はCKD患者さんには禁止されます。さらに腎臓に対して直接的な悪影響を及ぼす薬剤もあります(腎毒性)。
例えば、痛み止め・解熱薬として広く用いられている抗炎症・解熱鎮痛薬(NSAIDs)。この部類は、腎臓の血流量を減少させ腎障害を悪化させるおそれがあるため、必要性が低いのであれば、他の薬剤に変えるなど、できるだけ使用を控えるべきです。CKD患者さん以外でも高齢者など腎機能が低下している方は慎重に用いなければなりません。一般的には、腎機能値(CCr等)を目安に、減量もしくは使用間隔の延長を図り、場合によっては使用を控えます。

透析療法を行っている場合の注意点

 透析療法においては、透析により除去されるかどうかに注意が必要です。透析療法により除去されやすい薬剤を透析性が高い、除去されにくい薬剤を透析性が低いといいます。

 容易に除去される抗てんかん薬のフェノバールなど、透析に先立ち追加服用が必要なことがあります。逆に、除去されにくい抗パーキンソン薬のシンメトレルなどは、服用を検討するなど腎臓専門医の厳密な管理が必要になります。

尿中未変化体排泄率から至適薬剤投与量を推算する

 腎機能に応じた至適薬物投与量の推算は、患者さんの腎機能および薬物の尿中未変化体排泄率によって計算が可能です。その計算方法として「Giusti-Hayton法」があります。以下に計算式を記します。

【Giusti-Hayton法】
①投与補正係数(R)=1−尿中未変化体排泄率×(1−腎不全患者のCCr/100)
(CCrの代わりにGFRの代用も可能)
※尿中未変化体排泄率は各薬剤の添付文書に%で表記

 この式の中での尿中未変化体排泄率とは、投与された薬剤がどの程度の比率で未変化体のまま腎から排泄されて尿の中に残っているかを示したものです。
薬剤を100mg投与して未変化体として尿中に30mg排泄されれば、尿中未変化体排泄率は30%となります。薬理活性をもった未変化体が尿に残る量が多ければ多いほど、その薬剤は腎からの排泄依存度の高い薬剤ということになります。
尿中未変化体排泄率が高い薬剤とは、腎臓が障害を受けることで、薬剤の腎での排泄ができず、血液中に残る薬剤が多くなる(体内に蓄積する)ということになります。一般的に腎不全患者さんは、尿中未変化体排泄率が40%以上になると薬剤の減量が必要になると言われています。

①で推算された投与補正係数(R)を用いた至適投与量には以下2つの方法があります。

1. 投与間隔を変えずに1回投与量を減量する方法
 投与量=常用量×R

2. 1回投与量を変えずに投与間隔のみを延長する方法
 投与間隔=通常投与間隔×1/R

投与された薬剤の量は投与経路によって変動する

 しかし、尿中未変化体排泄率を取り扱う上で、上記の式での薬剤量は注意しなければならない点があります。
静脈注射のように、薬剤がそのまま血液内に投与される場合は、未変化体の薬剤がどれだけ尿中に排泄されるかは、素直に添付文書に記載された数字を信じればよいのですが、内服薬の場合は投与された量の内、どれだけが実際に血液内に入っているかが問題になってきます。
内服薬の中でも腸管から吸収されにくい薬は、腸管から吸収されずに便中に排泄されてしまうなど血液内に入る量はほんのわずかです。また、消化管の酵素で分解されやすい内服薬などは、患者さん個々の消化吸収能力にも左右されるため、医師や薬剤師などと連携し、CKD患者さんの薬剤投与量を検討する必要があります。

透析性が高いか低いかを判断する

 血液透析による薬剤の除去は分子の大きさ・蛋白結合率・分布容積などにより決定されると言われています。 一般的に次の条件に当てはまる薬剤は、透析で除去されにくいとされています。

①蛋白結合率が90%以上の薬剤
②分布容積が2L/kg以上の薬剤
③分布容積が1~2L/kgで蛋白結合率80%以上

薬剤の透析性がわかれば、それに応じて薬剤の投与方法を考慮します。透析性が高い薬剤は投与時間を透析後にする、または透析後に追加投与するなどの必要があります。
 薬剤は、病気の診断・治療または予防の目的で使われるなど、期待する効果(有効性)だけではなく、使い方によっては健康障害を引き起こすなど、マイナス効果(副作用)が現れる、諸刃の剣であることを私たち医療者は認識しておかなければなりません。

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