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【連載】臨床で使える精神科看護

リエゾン精神看護について知っておこうー身体疾患の看護に精神看護をうまく取り入れよう

  • 公開日: 2018/5/24

身体疾患の看護に密接にかかわる精神看護とは

 身体疾患で入院してきた患者さんで、精神的な不調が問題になるケースは意外に多くあります。基礎教育では身体疾患と精神疾患は別々に学習することが多く、実際の現場では違いを感じることもあるしょう。精神科看護の知識を身体疾患の看護に生かしていくには、あるいは身体疾患の看護に精神看護を取り入れるためには、どのように考えればよいのでしょう。
その考え方の1つにリエゾン精神看護があります。

リエゾン精神看護の意味と役割

 リエゾンという言葉はフランス語のliaisonで、「つなぐ、連携する、橋渡しをする」という意味があります。つまり、リエゾン精神看護とは、精神科の知識を必要な人や場所につなぎ、患者さんをケアする活動を指しています。日本看護協会が認定する専門看護師(Clinical Nurse Specialist : CNS)の中の精神看護専門看護師の役割の1つとしても挙げられており、総合病院などで活動している人もいます。

精神科リエゾンチームによるリエゾン精神看護の提供

 リエゾン精神看護を提供する形の1つとして、総合病院などで組織している「精神科リエゾンチーム」があります。精神にかかわる問題を抱える患者さんの増加に伴い、このチームによる活動は診療報酬に加算されることになりました。厚生労働省の通知の内容を抜粋で表に示します。

(表)精神科リエゾンチーム加算に関する通知(抜粋)

  通知抜粋
制度の目的 精神科リエゾンチーム加算は、一般病棟におけるせん妄や抑うつといった精神科医療のニーズの高まりを踏まえ、一般病棟に入院する患者の精神状態を把握し、精神科専門医療が必要な者を早期に発見し、可能な限り早期に精神科専門医療を提供することにより、症状の緩和や早期退院を推進することを目的として、精神科医、専門性の高い看護師、薬剤師、作業療法士、精神保健福祉士、公認心理師等多職種からなるチーム(以下「精神科リエゾンチーム」という。)が診療することを評価したものである。
患者像 精神科リエゾンチーム加算の算定対象となる患者は、せん妄や抑うつを有する患者、精神疾患を有する患者、自殺企図で入院した患者であり、当該患者に対して精神科医療に係る専門的知識を有した精神科リエゾンチームによる診療が行われた場合に週1回に限り算定する。

☆専門性の高い看護師とは
一定の研修をうけた常勤の看護師を指します。具体的には、日本看護協会が認定する認定看護師(認知症看護)や専門看護師(精神看護、老人看護)、日本精神科看護協会による精神科認定看護師などの資格を有する看護師となります。

平成30年度診療報酬改定関係資料の「通知02~1」,入院基本料等加算 A230-4 精神科リエゾンチーム加算(週1回)(2018年5月15日閲覧)http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000196438.pdf

リエゾン精神看護におけるさまざまな対象者

 リエゾン精神看護は、一般の診療科の患者さんや家族、病棟スタッフなどを対象にしています。

リエゾン精神看護が必要となる患者さん

 
 精神科リエゾンチームの項で、診療報酬加算の対象として「一般病棟におけるせん妄や抑うつを有する患者、精神疾患を有する患者、自殺企図で入院した患者」とありました。これらは、身体科の病棟では少なからず出会う患者さんです。皆さんが、精神科的な介入の必要性を感じることも多いのではないでしょうか。

 リエゾン精神看護を必要とする患者さんには、次のようなケースがあります。

①精神疾患をもつ患者さんが入院してくる場合
統合失調症やパニック障害など、身近な精神疾患患者さんが入院してくる場合があります。

②身体的な慢性疾患から精神科的な問題をもつ場合
 身体疾患には慢性化しているものが多くあります。そんな疾患に向き合う生活スタイルには、慢性的なストレスが生じます。それが原因で、アルコールや薬物(医療薬物を含む)等への依存形成などがみられる場合があります。慢性疾患患者さんにおける精神疾患、特に物質の乱用、気分障害および不安症の生涯有病率は40%という報告もあり、病苦は自殺の引き金になることで知られています。

③入院や治療の侵襲等で、精神科的な問題をもつ場合
 環境の変化や手術・集中治療等の身体的な負荷が、精神症状を引き起こす場合があります。せん妄などの意識障害や薬物性の精神症状などがあります。

④入院や治療の場面に適応できず、反応が出る場合
 人格水準等によっては、通常の治療でも精神的な問題を発現する場合があります。不安や焦燥感、不眠などの症状が代表的です。些細なことで攻撃的になるなど、対人場面に問題が出る場合があります。

⑤そのほかの問題を鑑別する場合
 さまざまな可能性を排除した後に問題が特定できないとき、精神科的な病態を考慮する必要があります。疑われる病態としては、身体化障害、作為症、詐病などが挙げられます(表)。

(表)疑われる精神科病態

病態 内容
身体化障害 精神症状を身体症状として表現する病態
作為症 ミュンヒハウゼン症候群とも呼ばれ、病気の役割を演じるために身体または心理的症状を故意に装うことを指す。入院願望があり、親子間で起こる多くの場合は子どもの病気を故意に作る
詐病 保険金等の目的で症状を作り上げる

家族やスタッフに対する支援

 精神科看護の技術や知識を生かして、家族支援も行います。配偶者との死別などからくる心理的危機に介入する場合もあります。

 また、スタッフのメンタルサポートも行います。組織、チーム、個人などのさまざまなレベルから、その場の心理的反応をアセスメントし、ケアにつなげていきます。

リエゾン精神看護の活動

 リエゾン精神看護では、精神科リエゾンチームを活動の場とする以外にも次のような活動が行われています。現場での看護や看護師としての自身の活動の一助として、うまく活用していきましょう。

コンサルテーション

 看護チームから相談を受け、カンファレンスに参加したり、受け持ち看護師とアセスメントを行ったりする活動です。看護チームが問題に対処できるようにサポートします。また、チームの中にある感情的な問題や技術的な問題にかかわる場合もあります。例えば、患者さんの症状からくるトラブルが原因で看護師がかかわるのをためらってしまう場合などにおいて、チーム内の気持ちを明らかにして話し合いを促進し、具体的なケアの方法をみつけることでチームをサポートします。

直接ケア

 精神科的な問題をもつ患者さんに、直接話を聞き、ケアを行う活動です。受け持ち看護師からの紹介などを経て、患者さんに会いに行きます。意識障害や不安のアセスメント、患者教育などを行います。

教育活動

 精神科看護の知識を看護師に伝え、スキルを向上させる活動です。症例検討や新人教育などさまざまな方法があります。教育的なスキルはリエゾン精神看護に求められるスキルの1つです。

スタッフの情緒的支援

 現在の医療現場では、スタッフにも多様な情緒的問題が存在します。リアリティショック、バーンアウトなどがよく知られます。看護師個々が悩みを抱え込まないよう相談窓口になることもあります。また、チームの中で相互に支え合えるよう、感情的な問題を取り扱うカンファレンスも有効です。

 一方、看護の管理職も多くの要求やタスクが求められる難しい立場にあります。新人、中堅、ベテラン、管理職、チームなど多くの対象に対して、情緒的な支援をするのがリエゾン精神看護の役割です。


参考文献
●井上令一 監:カプラン臨床精神医学テキスト 日本語版第3版,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2016.
●平井元子 著:身体疾患患者の精神看護―リエゾンナースへの相談事例に学ぶ,へるす出版,2013.

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