1. トップ
  2. 看護記事
  3. 医療・看護技術から探す
  4. 薬理学・薬剤
  5. アトピー性皮膚炎に新たな治療選択

アトピー性皮膚炎に新たな治療選択

  • 公開日: 2018/6/7

アトピー性皮膚炎とは?

 アトピー性皮膚炎は湿疹の一種で、発疹などを伴う慢性炎症性疾患です1)。皮膚の乾燥や保護機能の異常が発生し、そこにさまざまな内的、外的刺激やアレルギー反応が加わって生じると考えられています。炎症症状があまりなく乾燥を主とした症状を呈する軽微なものから、重症なものになると高度の腫脹、びらん、多数の掻破痕など幅広い症状があります。中等症から重症のアトピー性皮膚炎では広範囲な発疹が特徴で、持続する激しい難治性の掻痒感、皮膚の乾燥、亀裂、紅斑、痂皮化、毛細血管からの出血を伴うことがあります2)、3)。また、中等症から重症ではさまざまな症状によって睡眠障害、不安や抑うつ症状が引き起こされ、生活の質に影響を及ぼすことが考えられます。

どんな治療薬が使われる?

 遺伝的な素因やさまざまな内的、外的要因により引き起こされるため、現時点では完全に治す薬物療法はなく、対症療法が基本的な考え方になっています。ステロイド外用薬や非ステロイド系消炎外用薬などが一般的に使われています。

既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎

 既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎の治療薬として、4月23日に「デュピクセント皮下注300mgシリンジ」が発売されました。この治療薬はインターロイキンの過剰な働きを特異的に阻害する抗体です。

 インターロイキンとはサイトカインのうちの一つで、白血球から分泌され免疫系の調整に機能します。アトピー性皮膚炎などの慢性炎症は、インターロイキン4とインターロイキン13の働きが大きく影響しているといわれています5)、6)。ステロイド外用薬や非ステロイド系消炎外用薬などの治療薬は中等症から重症のアトピー性皮膚炎では効果が不十分な場合があります。そういった、既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎に対して、新たな治療の選択肢となることが考えられます。さまざまな症状によって生活の質に影響が考えられるため、新たな治療の選択肢ができたことで、生活の質の改善に繋がることが期待されます。


引用文献
1)加藤則人ら,アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2016年版.日本皮膚科学会誌.126巻,pp.121-155,2016
2)National Institutes of Health(NIH),Handout on Health:Atopc Dermatitis(A type of eczema)2013.http://www.niams.nih.gov/Healthinfo/AtpicSermatitis/defalt.asp.Accessed October 31,2016.
3)Mount Sinai.Patient Care Atopic Dermatitis.Available at:http://www.mountsinai.org/patoemt-care/health-librarv/diseases-and-conditions/atopic-dermatitis#risk.Accessed July 2017.
4)Zuberbier et al.Patient Perspectives on the management of atopic dermatitis.J allergy Immunol vol.118,pp.226-232,2006.
5)Dupixent Summary of Product Characteristics.
6)Simpson et al.Two Phase 3 Trials of Dupilumab versus Placebo in Atopic Dermatitis.New Engl J Med,vol.375,pp.2335-2348,2016.

この記事を読んでいる人におすすめ

カテゴリの新着記事

抗血栓薬を使用している患者さんの注意点

10月の脳卒中月間に合わせ、アストラゼネカが「抗血栓薬を服用中の患者さんに知っておいてほしいこと」と題するメディアセミナーを開催しました。本セミナーに登壇された国立病院機構九州医療センター 脳血管・神経内科、臨床研究センター臨床研究推進部長の矢坂正弘先生と、国際医療福祉大学医

2022/12/21

アクセスランキング

1位

心電図でみる心室期外収縮(PVC・VPC)の波形・特徴と

心室期外収縮(PVC・VPC)の心電図の特徴と主な症状・治療などについて解説します。 この記事では、解説の際PVCで統一いたします。 【関連記事】 * 心電図で使う略語・用語...

250751
2位

【血液ガス】血液ガス分析とは?基準値や読み方について

血液ガス分析とは?血液ガスの主な基準値 血液ガス分析とは、血中に溶けている気体(酸素や二酸化炭素など)の量を調べる検査です。主に、PaO2、SaO2、PaCO2、HCO3-、pH, ...

249974
3位

吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コ

*2022年12月8日改訂 *2022年6月7日改訂 *2020年3月23日改訂 *2017年8月15日改訂 *2016年11月18日改訂 ▼関連記事 気管切開とは? 気管切開...

250001
4位

人工呼吸器の看護|設定・モード・アラーム対応まとめ

みんなが苦手な人工呼吸器 多くの人が苦手という人工呼吸器。苦手といっても、仕組みがよくわからない人もいれば、換気モードがわからないという人などさまざまではないでしょうか。ここでは、人工呼...

250017
5位

採血|コツ、手順・方法、採血後の注意点(内出血、しびれ等

採血とは  採血には、シリンジで血液を採取した後に分注する方法と、針を刺した状態で真空採血管を使用する方法の2種類があります。 採血の準備と手順(シリンジ・真空採血管) 採血時に準備...

250858
6位

心電図の基礎知識、基準値(正常値)・異常値、主な異常波形

*2016年9月1日改訂 *2016年12月19日改訂 *2020年4月24日改訂 *2023年7月11日改訂 心電図の基礎知識 心電図とは  心臓には、自ら電気信...

250061
7位

サチュレーション(SpO2)とは? 基準値・意味は?低下

*2019年3月11日改訂 *2017年7月18日改訂 *2021年8月9日改訂 発熱、喘息、肺炎……etc.多くの患者さんが装着しているパルスオキシメータ。 その測定値である...

249818
8位

SIRS(全身性炎症反応症候群)とは?基準は?

*この記事は2016年7月4日に更新しました。 SIRS(全身性炎症反応症候群)について解説します。 SIRS(全身性炎症反応症候群)とは? SIRS(全身性炎症反応...

250839
9位

第2回 小児のバイタルサイン測定|意義・目的、測定方法、

バイタルサイン測定の意義  小児は成人と比べて生理機能が未熟で、外界からの刺激を受けやすく、バイタルサインは変動しやすい状態にあります。また、年齢が低いほど自分の症状や苦痛をうまく表現できません。そ...

309636
10位

第2回 全身麻酔の看護|使用する薬剤の種類、方法、副作用

【関連記事】 *硬膜外麻酔(エピ)の穿刺部位と手順【マンガでわかる看護技術】 *術後痛のアセスメントとは|術後急性期の痛みの特徴とケア *第3回 局所浸潤麻酔|使用する薬剤の種類、実施方...

295949