【書籍紹介】看護師のための松陰流人材育成術 吉田松陰が松下塾で教えたこと
- 公開日: 2018/7/28
強みを理解し、相手に合わせた指導を行う
吉田松陰は150年前の歴史上の人物です。近年、その松陰の「教育」や「生き様」に焦点を当てた書籍が多く出版されています。それは、吉田松陰という人物の生き方やその教育方法が今の時代に必要とされているからではないでしょうか。実際に、松陰の教育方法は今の時代でも使えるようなものばかりです。松陰に学んだ人々には決して身分が高いとはいえない人も多くいましたが、松陰は身分に関係なく誰にでも平等に教育を施しました。そして、松陰はその教育方法で、伊藤博文や高杉晋作など歴史上の大業を成した著明な人物を多数輩出しています。
松陰は、教育とは「上から下へ」一方的に教えるのではなく、相手と同じ立場で学ぶことであると考えていました。普段から命令口調ではなく、個人指導と同様に集団で学ぶことも大切にしていたといいます。吉田松陰が教えていた松下村塾では、畑仕事や米つきなどの仕事も教育活動の一環としており、集団で活動することで塾生たちはお互いの長所・短所を理解しながら連帯感を強めることができました。こうして塾生は、縦のつながりからだけではなく、横のつながりからも多くの学びを得ていたのです。
なかでも特に興味深いのは、新たに教え子を迎えるときには相手を少し見ただけで強みを理解し、相手に合わせた指導をしていたということです。
看護師に限らず、どの分野においても新人教育は重要です。たとえ教えることが同じであっても、相手の器量やキャラクターなどによってアプローチの方法は大きく変わります。相手に合わせた教育が上手くいった場合には、より大きく能力を伸ばしたり深い理解を得ることができますが、その逆になってしまうと能力を伸ばすどころかより悪い状態になってしまうことも少なくありません。そのため、人を育てるには相手に合わせた適切な方法を選択することが大切なのです。
新人を教えるにはどうすれば? と悩んでいる看護師にオススメ
この本の著者である長谷川勤さんは、松陰について大学で教鞭を執り、NHKラジオ講座「歴史再発見」では「松陰と幕末・明治の志士たち」を担当するなど、松陰に精通している人物です。そんな著者が、松陰の教育をベースに看護教育や人材育成をわかりやすくまとめたのがこの一冊です。本屋で並んでいる松陰の本というと、なんだか難しそうなものをイメージするかもしれませんが、この本は一見するとまるでエッセイのようなポップさがあります。そして、一つひとつの話が短く構成されており、見た目から感じる「読みやすそう」という期待を裏切ることなく、最後まで読み切れるようになっています。
人を教育するということは難しく、自分が行っている「教育」も知らず知らずのうちに偏ったものになってしまっているかもしれません。例えば、プリセプターや教育担当として新人を教育することになった、そもそも教育ってどうすればいいんだろう、ちゃんと教えたいけど思っているとおりにいかない、などと教育で悩んでいる人は、ぜひこの本を手に取ってみてください。なぜ松陰流の教育が今改めて注目を浴びているのかということだけでなく、自分と松陰の教育はなにが違うのか、新たな発見があるかもしれません。
看護師のための松陰流人材育成術 吉田松陰が松下塾で教えたこと
著:長谷川 勤
定価:1,500円(税別)
サイズ:四六判
ページ数:144ページ
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