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【連載】Nursing 最前線 ―看護の現場をリポート―

退院前・退院後訪問指導 の取り組みで 患者さんの「その人らしい 生活」を支えたい!<鳥取大学医学部附属病院>

  • 公開日: 2018/8/13
  • # 注目ピックアップ
  • # 看護師インタビュー

医療の在宅移行が進む中、病院から地域へと継続性のある退院支援は、喫緊の課題です。
その流れを受け、鳥取大学医学部附属病院看護部では、現在「退院前・退院後訪問指導」に力を入れて取り組んでいます。
入院患者さんの退院後の生活を見据えて、退院前から訪問活動を行うことで、病棟での退院支援にはどのような変化が生まれたのでしょう。
取り組みを積極的に進めている皆さんにお話をうかがいました。


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退院後訪問指導の様子。服薬など適切な療養が行えているか、患者さんや家族が困っていることがないかなどをじっくりと聞く

患者さんに安心をもたらす退院支援・指導に向けて

 山陰地方の中核病院として地域医療を支えてきた鳥取大学医学部附属病院は、高度先進医療を提供する急性期病院です。平均在院日数は約13日と短く、看護師が患者さんと十分にかかわり、退院支援・指導を行うことが難しくなっている現状がありました。
「私たちが行ってきた退院支援・指導は、患者さんにきちんと安心をもたらしていたのかということが気になっていました。ちょうど2016年度診療報酬改定で退院支援加算が新設されることもあり、より退院支援に力を入れるため『退院前・退院後訪問指導』をスタートさせました」(中村真由美看護部長)
 そのために、退院支援担当副師長会を立ち上げて2016年度から活動を開始。翌2017年度には、「患者・家族・医療職・地域の強みを引き出し、その人らしさを支える看護の実践」をスローガンに看護部全体の取り組みとして強化を図りました。看護師全員が1回は訪問することを目標に、現在までに延べ300人の看護師が訪問指導へと出掛けています。

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訪問指導のための公用車を導入。訪問用のステッカーを貼って


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患者さんの自宅を訪問する際には、オリジナルのユニフォーム(ポロシャツ)を着用。背面のイラストは看護師がデザイン

患者さんの生活を見据えた退院前・退院後訪問指導の実践

 なかでも特に活発な活動をみせている病棟7階Aでは、所属する看護師35名全員に訪問指導の経験があります。同病棟は呼吸器・膠原病内科の病棟で、がんや慢性呼吸器疾患により入退院を繰り返す患者さんが少なくありません。その理由の1つとして、患者さんの自宅での過ごし方にカギがあるのではないかと考えた久保田幸子師長が、退院前・退院後訪問指導を積極的に進めました。看護師たちは訪問指導の経験から、患者さんの本当の生活を知り、「退院後に何が必要か」「入院中にどのような支援を行えばよいか」という視点をもって、退院計画・支援を実践できるようになってきたといいます。
 退院前訪問は、退院後の生活環境の確認を中心に行われます。現状のADLと自宅環境を照らし合わせて、どのようなリハビリが必要か、環境を補うため の福祉用具・サービスの導入をどうするかなど、入院中にすべきことを洗い出します。一方退院後訪問では、患者さんの実際の生活状況をみて、安全面や療養面に問題がないかを確認し、患者さんや家族の困りごとに対応します。
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退院前・退院後訪問指導の相談をする病棟7階Aの皆さん。左から、長谷川敬子病棟専任退院支援看護師、瀬尾勇仁看護師、奥田志帆看護師、久保田幸子師長

訪問指導の経験での振り返りが今後の支援に結びつく

 実際に訪問に行ってみて、看護師たちは退院時指導が十分でなかったことに気づかされたといいます。退院後患者さんが何に困っているか具体的に知ることで、退院指導のパンフレットだけでなく、患者さんに応じた個別的で具体的な指導が必要であると痛感しました。
 このような気づきも含め、活動は徐々に実を結び始め、退院に消極的だった患者さんが在宅療養に移行できたケースもあります。がんで3カ月の床上生活を余儀なくされていた男性に対し、抗がん薬治療が奏功したため、退院前・退院後訪問指導を提供。退院をあきらめていた本人が、看護師と一緒に退院後の生活をシミュレーションすることで「帰れるかもしれない」という気持ちをもつようになりました。 最終的には退院し、現在は独歩で外来通院しています。家に戻ることが患者さんの希望となり、リハビリ等に対する意欲も生まれるなど、訪問指導の効果を実感できる事例となりました。
 一方で、今後の課題もみえてきました。それは、入退院を繰り返す患者さんに対するリハビリと患者さんによるセルフマネジメントへの指導です。再入院をさせないために、一歩先をみた支援を行うことが重要だと考えています。
「“その人らしさ”を引き出すためには、看護師自らの目で見て感じることが重要です。患者さんがもっているいろいろな顔を少しでも多く理解できるようになると、自分たちが何をすべきかわかるのではないかと思います。そのためにも、スタッフにはどんどん訪問指導に行ってほしいですね」(久保田師長)
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同院看護部ではさまざまな「ものづくりプロジェクト」を実施。ユニフォームもオリジナルで作成。左が冬用(藤井春美副看護部長)、右が夏用(中村真由美看護部長)

DATA

鳥取大学医学部附属病院
鳥取県米子市西町36-1
開設●1949年
病床数●697床
職員数●1793名(2018年4月現在)うち看護師834名(パート6名含む)
看護配置●一般病棟7:1
日本医療機能評価機構認定病院/がん診療連携拠点病院/災害拠点病院
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ニプロ株式会社発行:看護情報誌「ティアラ」2018年8月(no.117)より転載

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