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【連載】Nursing 最前線 ―看護の現場をリポート―

院内から地域へと 対策の輪を広げたい! 多職種と連携し 看護師が進める感染管理<久留米大学病院>【PR】

  • 公開日: 2018/10/12
  • # 注目ピックアップ
  • # 看護師インタビュー

2018年度診療報酬改定で抗菌薬適正使用支援加算が新設されるなど薬剤耐性が問題視される現在、感染対策はあらためて重要性を増しています。そのようななか、久留米大学病院感染制御部では、約5年前から、地域に向けた感染対策支援を積極的に展開しています。その取り組みの様子をご紹介しましょう。


微生物学を学んでいる風景
地域の感染対策を担う看護師を育成する研修会。認定臨床微生物検査技師から微生物学を学んだ

院内感染から医療施設関連感染へ対策を地域へ広げる重要性

 かつて、医療は病院内で治療が完了する院内完結型でした。しかし現在は、大学病院、中規模病院、クリニック、介護保険施設、自宅と、さまざまな場所が治療・療養の場となっています。これは感染対策においても同様なのです。
「当院でいくら感染対策を行っても、医療の場が変われば、患者さんが感染する(感染を広げる)可能性はぬぐえません。感染対策の対象は、医療施設関連感染へと広がりました。地域全体による対策強化を図る必要があると考えました」
 こう話すのは、久留米大学病院感染制御部副部長の三浦美穂感染症看護専門看護師。同院が特定機能病院として中核的役割を果たしてきた、福岡県筑後地区に目を向けた展開を考えるようになったといいます。
 その1つの契機となったのは、2012年度診療報酬改定での感染防止対策加算1と、感染防止対策地域連携加算の新設。加算1で得られた報酬を地域連携の費用に充てることが可能になり、その連携がさらに報酬増につながり、結果的に感染対策の強化が図られることになるためです。
「ちょうど院外からのコンサルテーションの依頼が増えてきた頃で、さらに、当院の高度救命救急センターでのMRSA検出数の6割が院外からの持ち込みだということがわかり、力を入れるべきときだと思いました」(三浦専門看護師)

【同院東棟13階病棟での感染対策】
整理整頓されている風景
処置や投薬の準備を行う準備室は、常に整理整頓をしておく

廃棄物ボックスの写真
廃棄物ボックスは、入れるべき物の写真を添付してわかりやすく

手指衛生法の写真
病室の入口脇に、リンクナース作成の手指衛生法を掲示

地域での病院同士の相互評価や研修会の実施で対策を促進

 取り組みの中心の1つは、感染防止対策地域連携加算の対象となる感染防止対策の相互評価です。同院と地域内の3病院の感染制御チーム(infectioncontrol team:ICT)が年に数回相互ラウンドを行い、それぞれの対策を評価し合います。
「これにより院内の感染対策は一気に進みました。自院内でつい見落としてしまっていたことを指摘されるとドキッとします。ICTメンバーだけでなく、院内全体へのよい刺激になりますね。おかげで、血流感染症の診断精度を高める血液培養2セット採取率が向上し、ベッドパンウォッシャー(差し込み便器・尿器の洗浄・消毒システム)の配置も進みました」(三浦専門看護師)
 これらに加え、抗菌薬の適正使用率やガウンテクニック資材の使用量などからも、取り組みによる効果を判定しているといいます。
 さらに、地域に向けた研修会の実施も、取り組みの大きな柱となっています。主に地域で感染管理教育の中心となる人材を育成するためのもので、看護師を対象に行っています。微生物学や薬学など感染管理に役立つ幅広い知識に触れる機会も提供しています。その一方で、歯科衛生士などを対象にした歯科領域の感染対策や、介護福祉士などに向けた感染対策の基本についての研修会も実施。地域の多様な現場での感染対策を後押ししています。
 これらの研修で培ったノウハウは、2008年に結成された筑後感染管理トレーニング&カンファレンス(通称:CICTAC)に引き継がれ、筑後地区・大牟田地区の各所で研修会が実施されています。CICTACは、地区内の感染管理認定看護師を中心にした24名のメンバーで構成されており、ゼネラルナースや介護福祉士などへの標準的感染対策の浸透に力を注いでいます。

カンファレンス風景
年に数回、筑後地区内の病院(感染防止対策加算1を算定)が集まりカンファレンスを実施

研修会の写真
地域の看護師に向けた研修会では、感染制御専門薬剤師による薬学知識をテーマにしたものも

感染対策の土台になるのはゼネラルナースの日常的予防

 三浦専門看護師は、ゼネラルナースこそ感染対策を推進するためのカギだと話します。
「感染対策の99パーセントは予防。そしてその予防を行うのがゼネラルナースです。手洗いや手袋の着用、点滴チューブ接合部の消毒、ハンドクリームの塗布など、自分たちが日常ケアの中で行っていることこそが重要なのだと再認識し、継続してもらいたいですね。それが、院内の、地域の感染対策の土台になるのですから。これからも現場と話し合い、私の知識を活用してもらいながら、バックアップしていきたいと思っています」(三浦専門看護師)

三浦美穂感染症看護専門看護師
三浦美穂感染症看護専門看護師

DATA

久留米大学病院
福岡県久留米市旭町67
開設●1928年
病床数●1025床
職員数●2265名(うち看護師1102名)
看護配置●一般病棟7:1
特定機能病院/日本医療機能評価機構認定病院/地域がん診療連携拠点病院
久留米大学病院の写真


ニプロ株式会社発行:看護情報誌「ティアラ」2018年10月(no.118)より転載

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