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【連載】いまさら聞けない 脳神経外科ドレナージのしくみと管理の基本

脳室ドレナージ|「部位別」ドレーン管理はここを見る!①

  • 公開日: 2019/5/12

 圧設定やクランプ手技など、脳神経外科領域の開放式ドレナージには、特徴的な知識が求められます。ここでは、脳室ドレナージ、脳槽ドレナージ、スパイナルドレナージの管理の実際を解説します。


脳室ドレナージ

どのような治療で使うの?
●急性水頭症に対し、頭蓋内圧を下げて意識状態を回復させる。
●脳室内出血を伴う場合には、血腫を溶解して排出させる。
●脳腫瘍による閉塞性(非交通性)水頭症の場合には、ドレナージに続いて、腫瘍の摘出術を行う場合がある。

■ドレナージシステムの原理

 ドレナージシステムは、通常、高さを変えることによって設定圧を調節できるチャンバーのついた回路を使用します(図1)。フィルターを介して大気に触れるので開放式ではありますが、感染予防のため、大気に露出することのない閉鎖式にほぼ準ずるものとなっています。

脳室ドレナージシステム

 サイフォンの原理を利用して過剰な髄液を排除し、適切な頭蓋内圧にコントロールできます。通常、外耳孔をゼロ(0)点として、レーザーポインターを外耳孔に当てながら高さを調節します1)。レーザーポインターと目視では、圧設定に慣れた看護師による目視であればほとんど誤差はないという報告もありますが2)、レーザーポインターがあれば便利です。

 ゼロ点を設定した後は、ベッドの高さやベッドアップの角度は変更できません。不用意に変更することのないように、ベッドのリモコンに「設定変更不可!」と書いたテープを貼り付けるなどして警告する必要があります。

■ドレナージ圧の設定と管理

 ドレナージ圧を調整する際は、チャンバー内のチューブ断端(もしくは、すぐ上にある円盤リング)を設定したい圧の高さにセットし、チューブ断端から排液が滴下する様子を観察します。ちなみに、この円盤リングは、チューブがチャンバーの内壁に接触しないようにするためのものです3)。通常、各勤務交代時に、必ず2人で声出し、指差し、指なぞりで設定圧値を確認します4)

 排液は、チャンバーと排液バッグを連結するチューブをクランプしてチャンバー内に溜めていきます。チャンバー内は30mL程度の容量しかないので、チャンバーから溢れ出ないように、チャンバー内に溜まった排液は、適時その量を記録したらすぐ、クランプを外して排液バッグ内に流し落とさなければなりません。

■排液の観察

 性状と量、チューブ内の拍動の有無に注意します。性状は、脳室内出血がなければ、無色透明が原則です。量は、髄液の産生量が約20mL/hrなので、通常は20mL/hrを超えないようにします。10mL/hrくらいが目安です。チャンバー内の滴下が確認できれば問題はありませんが、すぐに確認できない場合には、チューブ内での液面の拍動の有無をチェックします(図2)。

拍動のチェック

■トラブルの発見と予防

●脳室内出血とチューブの閉塞
 急性期には、脳室ドレナージの手術手技に伴う脳実質の損傷により、まれに脳室内出血が起こることがあります。血性の排液が持続したり、突然、新鮮な血液が排出されたりした場合には、できるかぎり速やかに担当医をコールします。

 また、流出量が著しく少ない場合には、チューブ先端に脳組織が巻き込まれるなどによるチューブ閉塞のおそれがあります。脳室内出血などによりチューブ挿入時からチューブ内に血液が混入しているケースでは、凝血塊のためチューブが閉塞しやすくなります。適切な排液量がキープできているか、観察を続けます。

●感染
 ドレナージが2週間以上経過すると、髄膜炎の危険が高まります1)3)。ドレーン刺入部からの逆行性感染を予防するため、ドレーン刺入部が汚染されないように、定期的な消毒とガーゼ保護を確実に行います。筆者の施設では、脳外科重症患者さんに対する中心静脈カテーテルの感染予防法5)6)を応用して、ドレーン刺入部にポビドンヨード軟膏を塗布することで感染予防に努めています(図3)。

ドレーン刺入部の感染予防
 38℃以上の発熱や頭痛、意識障害が続く場合には、血液検査で白血球数や炎症反応をチェックし、髄液一般検査で診断を確定します。

■ドレーン管理上の注意点

●クランプの開閉
 まず、クランプ忘れによるオーバードレナージやフィルター汚染に注意が必要です()。患者さんのケアや検査等のための移動時には、ドレーンチューブを必ずクランプしなければなりません。特に痰の吸引などを慌てて行い、クランプを忘れてしまうと、患者さんの咳込みにより頭蓋内圧が一過性に急上昇して髄液が一気に流出し、あっという間にチャンバー内が排液で溢れ、フィルターが汚染されてしまいます。日常のちょっとしたケアの時にもクランプを忘れないようにしましょう。

ドレナージ管理の4カ条

 また、このようなケアの後や検査から帰室した後には、クランプを開放しなければなりません。複数の看護師で情報を共有し、クランプ開閉の確認を徹底しましょう。病院ごとに方法は若干異なりますが、ドレーン回路の閉鎖手順は、①患者さん側の三方活栓、②チャンバーのフィルター、③チャンバーと排液バッグの間のクランプ、④排液バッグのフィルターの順となり、開放手順は、その逆で④→③→②→①となります2)図1)。

●フィルターの汚染防止
 次に、チャンバー内に残った排液によるフィルター汚染に注意が必要です。検査等の移動時にチャンバー内に排液が残っていると、チャンバーを架台から外して横向きに置いたときに、残っていた排液がフィルターにかかってフィルターが濡れてしまいます。そうするとフィルターを介した大気との交通が妨げられるので、オーバードレナージやドレナージ障害の原因となります。

 チャンバーを架台から外す前には、クランプを必ず外してチャンバー内の排液を完全にバッグに流すことを忘れないようにしましょう。流した後は、再びクランプします。

●三方活栓への薬物の誤注入
 ドレーンチューブに付属の三方活栓に、静脈投与するはずの薬物を誤って注入してしまう事故があります。このような事故を防ぐためにも、三方活栓に清潔なガーゼを巻いておくとよいでしょう7)

●チューブ抜去事故対策
 そのほか、気をつけたいのは、事故によるドレーンチューブの抜去です。患者さんの移動や体位変換等でチューブに負荷がかかり、抜けてしまうことがあります。チューブの強固な固定と、チューブにループをつくってテープ固定するなどの工夫が有効です1)

 また、意識障害や精神的に不安定な状態の患者さんには、ドレーンチューブの自己抜去の危険があります。抑制は最低限にしなければなりませんが、自己抜去を防止するために必要に応じて患者さんの両手にミトンを装着することがあります。ただ、ミトンの装着方法が表裏逆など不適切な場合や、患者ケアのためにミトンを外した状態にして目を離した隙にチューブを自己抜去されてしまうことがしばしばあります。

 ドレーンチューブは、患者さんにとってまさに「命綱」です8)。ミトンの適切な装着を複数の看護師で確認することと、ミトンを外した状態で患者さんを1人にしないことが極めて重要です。

 万一、チューブが抜けてしまった場合には、チューブ先端の破損の有無を必ず確認し、ドレーン刺入部を消毒してガーゼで圧迫固定します。通常、刺入部は縫合処置が必要となるので、直ちに担当医をコールしましょう。

■抜去に向けた観察と注意点

 ドレナージの目的を達成したら、チューブを抜去します。通常、1~2週間以内が目安となり、留置がそれ以上の長期間になると感染のリスクが高まります。排液の性状が白濁してきたら要注意です。患者さんの発熱や意識障害、炎症反応等と合わせて観察します。

 また、チューブ内は小組織片やフィブリン物質等による閉塞が起こりやすくなるので、排液量の減少にも注意します。

<まとめ-脳室ドレナージ>

ドレナージシステム 廃液 抜去の時期 特に注意する点
開放式ドレナージ 色→無色透明(脳室内出血のない場合)
量の目安→10mL/hr
1~2週間以内 ●脳組織の巻き込みなどによるチューブの閉塞
脳室内に留置 色→無色透明(脳室内出血のない場合)
量の目安→10mL/hr
1~2週間以内 ●脳組織の巻き込みなどによるチューブの閉塞

イラスト/こさかいずみ


引用文献

1)武富英子,他:ドレーン・シャント管理.ブレインナーシング 2012;28(5):27-33.
2)久松正樹:ドレーンの設置・管理・観察方法.ブレインナーシング 2014;30(3):44-7.
3)森岡隆人:シャント・ドレナージ術.ブレインナーシング 2013;29(5):53-5.
4)金本美香:手順がばっちり! 開頭術後の管理.ブレインナーシング 2011;27(5):20-6.
5)Fukunaga A, et al:Povidone-iodine ointment and gauze dressings associated with reduced catheter-related
infection in seriously ill neurosurgical patients. Infect Control Hosp Epidemiol 2004;25(8):696-8.
6)Fukunaga A, et al:Our method of povidone-iodine ointment and gauze dressings reduced catheter-related
infection in serious cases. Dermatology 2006;212(suppl 1):47-52.
7)山家いづみ,他:開放式ドレーン 脳槽ドレナージの管理と看護のポイント.ブレインナーシング 2013;29(7):
30-4.
8)齋藤健:術後急性期看護の基本.ブレインナーシング 2008;24(4):24-31.
9)谷本奈緒美,他:スパイナルドレナージの管理と看護のポイント.ブレインナーシング 2013;29(7):35-6.


この記事はナース専科2017年4月号より転載しています。

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