圧迫止血とは|直接圧迫止血法と間接圧迫止血法の手順と注意点〜根拠がわかる看護技術
- 公開日: 2019/4/3
※本記事では基本的な方法を解説しています。状況などによって対応は異なることがあります。
圧迫止血法とは?
外傷から活動性の出血がある場合、失血を防ぐために行われる処置です。出血により急速に大量の血液を失うとショック状態に陥り、生命に危険が生じるため、直ちに止血を行う必要があります。
圧迫止血法には、直接圧迫止血法、間接圧迫止血法があります。
直接圧迫止血法
ガーゼなどで出血部位を直接圧迫する方法です。用手による実施が基本となりますが、止血帯や機器(間接圧迫止血法で解説)を使用する場合もあります。
完全に止血されていることが確認できるまで継続します。止血までの時間の目安は、静脈性の出血の場合は5分~15分程度です。
基本的には、最初に直接圧迫止血法を行い、それでも出血のコントロールができない場合は、間接圧迫止血法を実施します。
ただし、動脈カテーテル抜去後の出血など動脈性の出血の場合は、止血部位よりも中枢側の血管の血流が停滞し血腫が生じやすくなるため、間接圧迫止血法を併用して中枢側も圧迫します。
直接圧迫止血法の手順
●準備
ディスポーザブル手袋、エプロンまたはガウン、ゴーグル、マスク(スタンダードプリコーションに準じた個人防護具)
ガーゼ(創よりも大きめで厚みのあるもの)
被覆材、ガーゼ、テープなど(創処置で使用)
*創が汚染されている場合
生理食塩液、スワブ、綿球などの洗浄用の用品
1.スタンダードプリコーションに準じ、手指衛生を行い、血液による感染や汚染を防ぐため手袋などを装着します。
2.患者さんは出血によって不安になっているため、止血をすることを伝えるなど安心できるように配慮します。
3.創が汚れている場合は洗浄をし、出血点を確認します。
また、静脈性か動脈性かを確認します。静脈性はじゎっと出てくるような出血、動脈性は吹き出して出てくるような出血です。
動脈性の場合は、間接圧迫止血法を併用して中枢側も圧迫します(後述)。1人ではできない場合は、複数で行うようにします。
4.ガーゼを当てて、出血点を示指、中指、薬指の3本の指を使って、できる限り強い力で圧迫します。
圧迫による皮膚組織の損傷のリスクはほとんどありません。それよりも止血が優先されます。
ここに注意! 母指は感覚が鈍く、小指は力が入りにくいため、示指、中指、薬指の3本の指を使うようにします。片手で効果がない場合には、両手でしっかりと圧迫するようにします。
*血が止まらない場合
出血している部位を再度確認し、新しいガーゼと交換して圧迫します。場合によっては止血法を変える必要があるため、医師に報告します。
5.新たな出血がみられなくなったら、ガーゼを外し、出血していないことを確認し、創の保護をします。
再出血を起こさないように、出血部位を圧迫用枕子(やわらかい棒状の枕)で保護しテープで固定し、その上から包帯を巻くこともあります。
6.患者さんに止血が終わったこと、しばらくは出血部位を安静に保つこと、再出血したときはすぐに知らせてもらうようにすることを伝えます。
7.止血後は定期的に、患部の状態、患者さんの様子やバイタルなどを確認しましょう。
間接圧迫止血法
間接圧迫止血法は、出血部位に近い中枢側の動脈を圧迫することにより、末梢の血流を遮断して止血する方法です。基本的には、四肢の出血に対し、動脈性の出血や直接圧迫法の止血困難例で行われます。
用手で圧迫する方法と、止血帯や加圧器とタニケットカフ(止血用カフ)を使用する方法があります。
間接圧迫止血法の圧迫部位
間接圧迫止血法の圧迫部位は、出血部位より中枢側(心臓に近いほう)の動脈です。
間接圧迫止血法の注意点
動脈の血流を一時的に遮断するため、圧迫を解除し血液が再環流したときに、出血部位から再び出血する可能性があります。
圧の解除時には、出血部位を直接圧迫法で圧迫し、よく観察するようにします。
用手による圧迫
出血部位に近い中枢側の動脈を片手の指、または両手の指で内側に向かって圧迫します。
間接圧迫止血の止血部位
間接圧迫止血の止血方法例
・上腕動脈
・腋窩動脈
・橈骨動脈と尺骨動脈
・大腿動脈
止血帯や器機による圧迫
圧迫部の皮膚や神経の損傷のリスクがあるため、実施の際には注意が必要です。また止血中は、患者さんの状態をモニタリングし、圧迫部位の痛みなどにも注意します。
出血部位の直接圧迫で使用する場合は、患部を保護し創に直接当たらないようにします。
●止血帯
出血部位に近い中枢側の動脈を止血帯で強く巻きます。なるべく幅の広い止血帯を使用するようにします。
止血の開始時間を記録しておき、30分~45分に一度は圧迫を解除します。その際は、血液が再環流するため、出血部位を直接圧迫法にて押さえて、出血を防ぎます。
●加圧器とタニケットカフ
タニケットカフに加圧器で空気を送り込んで圧迫します。通常、加圧の目安は、上肢で血圧+100程度、下肢では血圧の2倍となります。ただし、どんなに高く加圧しても300mmHgまでとします。それ以上の加圧は軟部の損傷が懸念されるため、加圧しないように注意しましょう。
なお、圧の設定は出血の部位や状態などによって異なるため、医師の指示に従います。
圧迫部位の損傷を防ぐために、専用のカバーを圧迫部位に装着するか、ガーゼを挟んでカフを巻くなど、直接皮膚に当たらないようにします。
止血の開始時間を記録しておき、30分~45分に一度は圧迫を解除します。その際は、血液が再環流するため、出血部位を直接圧迫法にて押さえて、出血を防ぎます。
※使用例
Column 病棟で出血している患者さんを発見したら
病棟内の外出血の例として、カテーテル抜去後や創の処置後、転倒などによる外傷などがあります。
患者さんの状態を確認し、直ちに直接圧迫止血を行います。
出血が多く意識レベルが低下している場合や直接圧迫止血法を行っても止血ができない場合は、応援を呼び、ドクターコールをします。
次の処置まで直接圧迫止血を継続します。医師の指示によっては、機器による間接圧迫止血法を実施する可能性があるので、必要な機器を準備しておくとよいでしょう。また、動脈性の出血の場合、血管の縫合や結紮など外科的処置が必要になる場合もあります。
出血の状況や患者さんの状態によっても対応は変わってきますので、事前に、緊急時の止血の流れについて、病棟で確認しておくことも重要です。
参考文献
1)木野毅彦:止血法.Emergency Care 2015;25(3):28-9.
2)日本救急看護学会,監修:外傷初期看護ガイドライン 第4版,へるす出版,2018.
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