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【連載】病棟・外来で役立つ! 事例で学ぶ急変・救急対応

頻脈を認める患者さんのアセスメントと対応

  • 公開日: 2021/6/15

事例紹介

患者背景

Kさん、70歳代、女性


・既往歴:なし

・内服歴:なし


現病歴

主訴は動悸。来院の3時間前に自宅で突然の動悸を自覚した。2時間ほど様子を見ていたが、改善しなかったため独歩で病院を受診した。以前にも動悸を自覚することはあったが、自然におさまっていたため気にしていなかった。普段から健康管理には気を使っており、毎年の健康診断は欠かさず受けている。高血圧を指摘されたことがあるが、現段階では内服の必要はないと言われ経過をみている。


身体所見

意識レベルJCS 0、呼吸17回/分、脈拍180回/分、血圧130/90mmHg(普段の収縮期血圧は150台)、SpO2 100%(室内気)、体温36.0℃


顔色は良好であり、問診への受け答えも適切にできていた。

呼吸困難感なし、胸痛なし、皮膚は軽度の冷感と湿潤あり。


検査

・12誘導心電図:Narrow QRS tachycardia(頻脈)

・胸部X線検査:肺うっ血なし、心拡大なし

・経胸壁心臓超音波検査:頻拍により描写困難


状態を把握する

事例から読み取るべき患者さんの状態

・突然発症の動悸がある

・気道に異常はなく、呼吸状態は安定している

・ショック徴候(皮膚の冷感と湿潤)を認めている

・普段の血圧より低下しており、循環が不安定である

・意識レベルは清明である


状態把握のための知識とポイント

ポイント1:主要症状の確認、ABCDを評価する

 頻脈の患者さんの状態を把握するためには、「頻脈である」という認識が必要になります。まずは問診を行い、患者さんの主要症状を確認します。


 頻脈を認める患者さんの主訴として、動悸感、胸の痛み・不快感、失神などがあります。問診によりこれらの症状を確認したら、バイタルサインの測定と心電図モニターによるⅡ誘導の波形を確認します。脈拍数(心拍数)を確認するときは機器のみに頼らず、患者さんに触れて冷汗や冷感の有無を確認します。


 Kさんは動悸感を主訴に受診したため、直ちにバイタルサインの測定とモニタリングを開始し、状態の把握を行いました。その結果、頻脈を認め、普段の血圧より低値であること、軽度ではありますが皮膚の冷感と湿潤が観察されました。


ポイント2:「不安定な頻脈」か「安定した頻脈」かを確認する

 頻脈が確認されたときに、「不安定な頻脈」か「安定した頻脈」なのかを確認することは非常に大切です。頻脈と同時に、反応が悪い、顔色不良、呼吸数が上昇している、皮膚の冷汗・冷感がある、血圧の低下やショック徴候を認める場合は、有効な心拍出量が維持できなくなっている状態であり、不安定な頻脈と判断します。


 Kさんは意識と呼吸は安定しているものの、皮膚の冷感と湿潤を認めています。皮膚の冷感や湿潤は、末梢血管が収縮することにより起こります。末梢血管を収縮させないと主要臓器への血液量を確保できない状態であり、Kさんは、不安定な頻脈と判断します。


 また、不安定な頻脈では、脈拍が150回/分以上であることが多く、十分な心拍出量が得られていない状態です。Kさんも脈拍180回/分を認めており、緊急度の高い状態です。なお、脈拍数が100回/分を超えていても、他に症状を認めない場合は、安定した頻脈と判断できます。


緊急度を判断する

 Kさんはショック徴候があり、不安定な頻脈を認めています。不安定な頻脈は致死的になることがあるため、緊急性が高いと判断します。


状態に合わせて対処する

 Kさんは不安定な頻脈と判断したため、モニタリングを継続しながら、直ちに血管確保を行いました。同時に、心室細動(VF)や無脈性の心室頻拍(無脈性VT)への移行も想定されるため、除細動器をベッドサイドに設置し、AEDパッドを装着します。VFや無脈性VTを認めた場合は心停止と判断されるため、速やかにBLSを開始します。


 安定した頻脈の場合は、モニタリングの継続と12誘導心電図を実施します。不安定な頻脈へ移行する可能性もあるため、薬剤投与の可能性を考え、血管確保と輸液の準備を行います。


医師に報告する

 不安定な頻脈と判断した場合は、直ちに報告します。わかりやすい報告のポイントは、結論から述べ、報告する相手にどうしてもらいたいかを伝えることです。


 Kさんの場合は不安定な頻脈と判断したため、医師へ報告しました。具体的には、「救急室看護師〇〇です。動悸感を主訴に来院したKさんについて至急報告します。脈拍が180回/分であり、ショック徴候を認めたため不安定な頻脈と判断しました。すぐに診察をお願いします。モニタリングと血管確保を行い、除細動器を準備しています」と報告しました。


 後日、報告内容について医師から、「ショック徴候から不安定な頻脈と判断しているという報告で、すぐに診察に行かなきゃと思えました」とフィードバックがありました。医師に緊急性を伝えるためにも、不安定な頻脈か、安定した頻脈かを判断することは重要です。


 報告時は、ISBARCなどのツールを用いて伝えるとわかりやすいでしょう(表)。


表 ISBARCを用いた報告例

報告例
Identify
(報告者と患者の同定)
・救急外来の看護師〇〇です。独歩で来院された70歳代女性Kさんについて報告します。
Situation
(患者さんの状態)
・動悸感を訴え来院し、頻脈とショック徴候を認めています。
Background
(入院の理由・臨床経過)
・来院の3時間前からの突然発症の動悸で来院しています。
・脈拍は180回/分、血圧130/90mmHgですが、普段の収縮期血圧は150台です。意識レベルは清明で、呼吸数は17回/分、SpO2 100%です。
・皮膚は軽度の冷感と湿潤を認めています。
Assessment
(状況評価の結論)
・不安定な頻脈と判断します。
Recommendation
(提言または具体的な要望・要請)
・すぐに診察をお願いします。
Confirm
(指示受け内容の口頭確認)
・(医師から指示があれば、指示の内容を復唱)

対応の流れを振り返る

 頻脈を認める患者さんへの対応の流れについて、フローチャートで振り返ります。


頻脈フロー

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