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【連載】輸血看護を極めよう!

輸血中に急変した!どうする?|トラブルシューティング

  • 公開日: 2025/3/18

急変時に困らないよう対応について知っておこう

 輸血は「移植」であり、輸血中や輸血後に生死にかかわるような副作用症状が出現することがあります。しかし、私たちが日常的に経験する副作用症状の多くは、蕁麻疹や掻痒感、発熱反応など軽症なアレルギー性反応が多く、ショック状態など循環動態に影響を与えるほどの重症なアレルギー性反応を経験することは少ないです。急変時は知識がなければ対応が遅れてしまいますが、知識があれば症状の観察、異変を早期に発見し症状の重症化を防止できることがあります。

 輸血中の急変には、主にアレルギー反応等の副作用によるものと人為的ミスによる副作用があります。

副作用症状

 輸血中の副作用症状として、消化器症状(嘔気、嘔吐など)、皮膚症状(発赤、掻痒感、蕁麻疹など)、呼吸器症状(呼吸困難感など)、循環器症状(動悸、冷汗、血圧低下、意識障害など)があります(表1)。

表1 輸血副作用の症状項目

 1)発熱(≧38℃、輸血前値から≧1℃上昇) 10)頭痛・頭重感
2)悪寒・戦慄 11)血圧低下(収縮期血圧≧30mmHgの低下)
3)発熱・ほてり 12)血圧上昇(収縮期血圧≧30mmHgの上昇)
4)掻痒感・かゆみ 13)動悸・頻脈(成人:100回/分以上、小児は年令による頻脈の定義に従う)
5)発赤・顔面紅潮(膨隆を伴わない) 14)血管痛
6)発疹・蕁麻疹(膨隆を伴う) 15)意識障害(意識低下、意識消失)
7)呼吸困難(チアノーゼ、喘鳴、呼吸状態の悪化等) 16)赤褐色尿(血色素尿)
8)嘔気・嘔吐 17)その他
9)胸痛・腹痛・腰背部痛
赤字項目は重症副作用の可能性が高く、詳細を確認する
日本輸血・細胞治療学会 輸血療法委員会:副作用の症状.輸血副作用対応ガイド Version1.0.2011,p.2.より引用

 輸血直後(5~15分後)、比較的早めに現れる副作用として、ABO血液型不適合(間違い輸血)、重症アレルギー(アナフィラキシー)、細菌汚染血輸血(敗血症性ショック)があります。また、輸血中~終了後(投与6時間以内)に出現し急変することもある副作用として、輸血関連急性肺障害(TRALI)等があります。 輸血関連循環過負荷(TACO)は、投与6時間以上経過してからも発生することがあり、注意が必要です。

急変時の対応

 輸血中の急変時は、速やかに輸血を中止することと、人を集めて集学的な治療を行うことが大切です。今回は、ABO血液型不適合輸血事故時の対応と、重症アレルギー発生時の対応について記載します。

ABO血液型不適合輸血時の対応

 表2に示すような赤血球輸血のメジャー・ミスマッチの場合が問題になります。

表2 赤血球輸血のメジャー・ミスマッチ

患者ABO型  輸血した血液バッグのABO型
 O型  ←  A型またはB型またはAB型
 A型  ←  B型またはAB型
 B型  ←  A型またはAB型

不適合輸血の症状が現れた場合には、下記のような処置が必要です。

ただちに輸血投与を中止します。

血管内留置針をそのまま残し、接続部で新しい輸液セットに交換し、乳酸リンゲル液を急速に輸液し、血圧維持と利尿に努めます(通常2~3L)。

人を集め、ドクターコール、心電図、SpO2のモニタリング開始、救急カートの準備。血圧、脈拍、呼吸数、体温、SpO2、意識状態を頻回にチェックし記録します。血圧低下が見られた時はドパミン(3~5μg/kg/min)を投与します。

導尿し、時間尿を測定します。乏尿(時間尿が50mL以下)の場合、医師の指示のもと利尿剤(フロセミドなど)を静注します。輸液療法、利尿剤投与に反応せず、無尿あるいは乏尿となった場合はただちに集中治療や腎疾患の専門医による血液透析などの治療が必要です。

FDP、フィブリノゲン、プロトロンビン時間、血小板数などを検査して、DICの合併に注意します。

患者さんから採血し、溶血の程度を調べ、ABO血液型オモテ・ウラ検査を再検します。輸血した血液バッグのABO血液型を確認します。

重症アレルギー(アナフィラキシー)時の対応

ただちに輸血投与を中止します。

血管内留置針をそのまま残し、接続部で新しい輸液セットに交換します。

人を集め、ドクターコール、心電図、SpO2のモニタリング開始、救急カートの準備。血圧、脈拍、呼吸数、体温、SpO2、意識状態を頻回にチェックし記録します。

原則として、患者さんの体位は仰臥位かトレンデレンブルグ体位にします。

「科学的根拠に基づいた輸血有害事象ガイドライン」では、アナフィラキシー出現時の第一選択薬剤として、迅速なアドレナリン(エピネフリン)の筋肉注射が強く推奨されています1)。成人の場合は、アドレナリン注0.1%(1mg/mL)0.01mg/kgを0.3mL~0.5mLを大腿前外側部に筋肉注射します。1回の最大投与量は成人0.5mg、小児0.3mgです。アドレナリンの効果は短時間で消失するので、必要に応じて5~15分ごとに再投与します。第二選択薬となる抗ヒスタミン薬は皮膚症状を緩和します。β2アドレナリン受容体刺激薬は喘息、咳嗽、息切れ等に有効です。

同時進行で酸素投与や症状に応じた呼吸管理を行います。また、余裕があればショック状態が進行する前に、他にもう1本輸液ルートを確保しておくことも有効です。

終わりに

 輸血を必要としている患者さんはたくさんいます。しかし、その輸血の副作用での急変などで取り返しのつかない事態を避けられるよう、少しでも皆さんのお役に立てれば幸いです。

引用・参考文献

1)日本輸血・細胞治療学会:科学的根拠に基づいた輸血有害事象対応ガイドライン.(2023年6月15日閲覧)http://yuketsu.jstmct.or.jp/wp-content/uploads/2019/02/065010001.pdf
2)厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル アナフィラキシー.(2023年6月15日閲覧)https://www.pmda.go.jp/files/000231682.pdf
3)日本アレルギー学会 Anaphylaxis対策特別委員会:アナフィラキシーガイドライン2014.(2023年6月15日閲覧)https://anaphylaxis-guideline.jp/wp-content/uploads/2023/03/anaphylaxis_guideline2022.pdf
4)日本輸血・細胞治療学会,日本赤十字社:輸血療法マニュアル改訂7版.
5)立花直樹 編:輸血の事故対策.エキスパートナース 2011;27(7):62-79.


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