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【連載】輸血看護を極めよう!

血管確保が困難な患者さん! どうしたらいい?|トラブルシューティング

  • 公開日: 2025/3/21

 輸血を実施する場合の点滴の針は、血管外漏出のリスクを軽減するために翼状針よりも静脈留置針を使用します。一般的な点滴と同じように漏出した場合には疼痛や腫脹、滴下不良が起こります。ゲージ(太さ)の規定はありませんが、成人では、18~20G(ゲージ)を使用することが推奨されていますが、臨床現場では22Gを使用することが多いようです。自然滴下で、1パック6時間以内に投与完了すれば、22Gでも構いません。長時間の輸血は細菌感染のリスクが高まるため、輸血1パック200mL、400mLどちらも6時間以内に投与を完了するようにします。

 輸血の際の血管確保が困難なケースの要因として血管が細く太い針が刺入しづらいというものが挙げられます。通常の血管確保と同様に、保温や穿刺部の下垂等、静脈を怒張させる工夫をします。

輸血専用の末梢静脈ルートがまだ確保されていない場合

 血管が細くて血管確保が困難で22Gより細い針を使用せざるを得ない場合は、24Gでも可能ですが、輸血が終了するまで時間がかかります。手術や出血性ショックへの対応等で急速大量輸血が必要な場合、太く長い静脈留置針の留置を必要とします。そのようなケースでは、中心静脈ルートを確保して輸血に用いなければならない場合もあります。細い針を使用するときは、溶血を防ぐために加圧せずにゆっくりとした速度で行います。

太い針の方がよいのは、なぜ??

 細い管を血液が通ると、血球が壊れると言われていますが、赤血球の直径は7~8μmなので細い針でも理論的には輸血が可能です。しかし、細い静脈留置針は折れ曲がったり、血管壁に当たったりして内圧が高くなってしまうため、赤血球が機械的に壊されてしまいます。赤血球が破壊されると、まず有効な血球成分が減ってしまいます。赤血球が必要なため赤血球液(RBC)を輸血するので血球成分が壊れていては輸血する意味がありません。

 次にカリウムなどの血球に含まれる成分が漏出し、カリウム値が上昇してしまいます。カリウム値は細胞内に多く含まれているので、少しの赤血球の破壊でもすぐ濃度が上昇します。カリウムが上昇すると、心拍数が低下し、心停止に至るため大変危険です。また、溶血(赤血球破壊)によってヘモグロビンが赤血球外に出てしまうと、遊離ヘモグロビンが腎臓に負担をかけてしまいます。そのため、太い針でなるべく血球成分が壊れないようにする必要があります。

輸血専用ルートが確保困難で輸液ルートがある場合

 新しく血管確保を行ったときは生理食塩液を通す必要はありませんが、輸血専用ルートが確保困難で輸液ルートがあるときには、輸液ルート内の残存薬剤を生理食塩液でフラッシュしてから使用します。輸液ルートに薬剤が残存しているときは血液凝固や赤血球凝集が生じてルートが閉塞する原因になります。ルート内のプライミング(フラッシュ)をきちんと行うことで防ぐことができます。

中心静脈ルートやポートから輸血する場合

 中心静脈カテーテルはルートの閉塞や感染のリスクを高める可能性があるので、原則使用しません。末梢静脈ルートが確保できずにやむを得ず使用する場合は、主治医の指示の元に慎重に使用する必要があります。

小児や新生児の場合

 小児の場合、23Gよりも太いものが望ましいです。新生児では、静脈留置針24Gや中心静脈カテーテルでもよいとされていますが加圧しすぎると溶血することがあります。また、中心静脈カテーテルは、流路が長いため抵抗が大きいことを考慮する必要があります。輸血に使用できる輸液ポンプは、シリンジポンプまたはミッドプレス方式の輸液ポンプに限られます。通常の輸液ポンプでは、輸液回路のチューブをローラーでしごく際に血球が破壊されてしまうため使用してはいけません。

参考文献

●梶原道子:小児科領域の輸血療法.看護師のための臨床輸血 学会認定・臨床輸血看護師テキスト 第2版.学会認定・臨床輸血看護師制度カリキュラム委員会,編.中外医学社,2018,p.68.
●松川恵梨子,他:輸血Q&A.看護師のための臨床輸血 学会認定・臨床輸血看護師テキスト 第2版.学会認定・臨床輸血看護師制度カリキュラム委員会,編.中外医学社,2018,p.128.


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