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【連載】Nursing 最前線 ―看護の現場をリポート―

院内認定看護師制度で自ら学ぶ姿勢と根拠あるケアを得て さらに先へ進む看護師たち<順天堂大学医学部附属練馬病院>

  • 公開日: 2019/7/7
  • # 注目ピックアップ
  • # 看護師インタビュー

 病院数や一般病床数が十分とはいえない練馬区にあって、その中核病院として地域を支える順天堂大学医学部附属練馬病院。2005年の開院以来、高度医療の提供から在宅医療に対する支援まで、地域との連携を密にしながら歩を進めてきました。そして同時に行われてきたのが自律した看護師の育成。そこには「院内認定看護師制度」で積み重ねられてきた成果がみえました。


有益な人材として評価される院内認定の修了者たち

 2011年度からスタートした「院内認定看護師制度(以下、院内認定)」は、特定領域の知識・技術を1年間かけて履修し、すべてを修了した受講者に対し、その領域において認定を与える研修コースです。現在「クリティカルケア」「ストーマケア」「がん看護ケア」「糖尿病看護」「感染看護」「在宅支援」「褥瘡ケア」「認知症ケア」の8コースと、上級者向けの2つのアドバンスコース(クリティカルケア、ストーマケア)があります。入職2年目からの看護師であれば受講可能で、1年ごとの更新制になっています。

ストーマケア
感染対策
院内認定修了者は、ストーマケアや感染対策などそれぞれの分野で、病棟での指導や実践を支えている

シール
院内認定には修了者を示す分野ごとのシールがある(左端は順天堂大学附属6病院共通の学内コース「静脈注射認定」のもの)

 「認定制度が始まってから9年目を迎えますが、受講生は年々増え、2018年度には120名を数えました。これは院内認定修了者が確実に能力を高めた結果だと思います。今では病院にとって有益な人材であることが評価されています」と話すのは、開講当初から院内認定にかかわっている貴田寛子皮膚・排泄ケア認定看護師。医師やほかの専門職から「修了者によって看護が変わった」という声も聞かれ、講師として積極的な協力も得られているといいます。

 「専門性を高めた看護師が現場を引っ張ってくれると、新たな知識や制度の導入がスムーズです。感染対策などは、効果が目に見えにくく徹底が進まない側面もあるのですが、感染看護コースの修了生がいると現場の受け入れが早い。身近な存在からの情報提供で根拠がきちんと理解できるためでしょう」

 感染看護コースの講師を務める飯塚智彦感染管理認定看護師はこう話し、院内認定は院内各現場にさまざまなリソースを育てることと考えています。

飯塚智彦感染管理認定看護師と田寛子皮膚・排泄ケア認定看護師の写真
院内認定の講師を務める飯塚智彦感染管理認定看護師(左)と貴田寛子皮膚・排泄ケア認定看護師(右)

翌日の看護実践から役立つ知識・技術が得られるカリキュラム

 院内認定のカリキュラムは、主に講義・演習・実習で構成され、同院での業務に即した疾患への対応と機器・物品・薬剤の使用が前提。そのため、学んだ知識や技術はすぐに臨床実践に役立てられます。

 齋藤香菜看護師は入職4年目に感染看護コースを修了。所属する4B病棟(小児科・小児外科)は感染症の発症が多く、知識の必要性を感じて受講しました。

 「病棟では手指衛生の徹底やPPE(個人用防護具装着手技の指導などを行っています。消毒液の消費量も増え、指導的立場として知識の定着の重要性を実感しています」と話します。

 複数の院内認定コースを受講している修了者も多く、6B病棟(消化器外科・眼科)に所属する塚本真紀看護師もその一人。ストーマを造設する大腸がん患者さんにかかわるため、入職2年目に「ストーマケア」、4年目に「感染看護」、5年目に「ストーマケアアドバンスコース」を受講しました。「アドバンスコースも受講したことで、ストーマケアはマーキングから造設後の管理まで一連の流れで理解を深められました。看護師としての役割と責任を再確認し、身が引き締まる思いがしました」といいます。

齋藤香菜看護師と塚本真紀看護師の写真
院内認定を修了した齋藤香菜看護師(左)と塚本真紀看護師(右)

研修の様子
研修の様子
院内認定「感染看護コース」での研修。関心をもって集まった参加者だけにその様子は熱気にあふれている

認定式
ほぼすべての参加者が認定式を迎える

“自ら学ぶ文化”が醸成され多くの場面での新たな一歩に

 岡田綾看護部長は、院内認定によって「自ら学ぶ文化」が醸成されてきたと話します。

 「看護師たちは、自分で手を挙げて学び、委員会活動や指導にも自ら選択して参加し、さらに新たな分野の学びにもチャレンジしています。学ぶ姿勢が身についたことで、キャリア形成を具体的に考えられるようにもなりました。看護部だけでなく院内のさまざまな活動において、修了者は信頼できる人材として選択肢に挙げられています」(岡田看護部長)

 院内認定を経て、日本看護協会の認定・専門看護師の取得を目指す修了者も少なくありません。

 「知識を得ることで実践力が高まり、自信・意欲につながる。それが内的動機づけとなり、次の一歩に踏み出せるのだと思います」(貴田認定看護師)

 院内認定は、知識や技術だけでなく、看護への向き合い方を学び考える機会にもなっています。

岡田綾看護部長
岡田綾看護部長

DATA

順天堂大学医学部附属練馬病院
東京都練馬区高野台3-1-10
開設●2005年
病床数●400床
職員数●440名 
看護配置●一般病棟7:1
日本医療機能評価機構認定病院/東京都がん診療連携拠点病院/東京都地域医療支援病院/東京都災害拠点病院
順天堂大学医学部附属練馬病院の写真


ニプロ株式会社発行:看護情報誌「ティアラ」2019年3月(no.123)より転載

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