消化器ストーマ(コロストミー・イレオストミー)の基本知識|種類と造設を行う疾患
- 公開日: 2019/11/11
ここでは、ストーマケアを行うにあたり、まずは知っておきたい基本知識を解説します。
【関連記事】
● ストーマの排泄管理方法―便破棄・尿破棄の手順
● 【ストーマケア】どう選ぶ? 患者さんに合ったストーマ装具
ストーマとは
ストーマ(stoma)とは、手術により、主に腹壁につくられた排泄口のことです。消化管の一部を便の排泄口として腹壁に造設している消化器ストーマ(人工肛門)と、尿の排泄口として尿管を直接腹壁に出したり、切断した腸管を使って新たな尿路を造設して尿の排泄口を造設している尿路ストーマ(人工膀胱・ウロストミー)があります(表1)。
ストーマでは、通常の排泄機能のように、尿意や便意を感じて排泄するといった禁制の機能が失われます。ストーマの近くに尿や便が来ると自然に排泄されるため、排泄物を受け止めて貯留しておくストーマ装具の着用が必要となります。
MEMO 人工肛門、人工膀胱よりもストーマと呼ぶことが多くなっています。ストーマを保有している人のことを「オストメイト」と呼びます。
表1 ストーマの種類
消化管ストーマとは(コロストミーとイレオストミー)
消化管ストーマは、ストーマとして使用される腸の部位によって、「結腸ストーマ(コロストミー)」と「回腸ストーマ(イレオストミー)」に分けられます。
さらにコロストミーは、結腸の部位のよって、上行結腸ストーマ、横行結腸ストーマ、下行結腸ストーマ、S状結腸ストーマに分類されます。
消化管ストーマは腸管の内側を折り返してつくられるため、表面は粘膜で、色は赤く、粘液で湿っています(図1)。
図1 ストーマモデル
写真提供:株式会社いわさき
どんな場合に造設する?
消化管ストーマは、表2のような疾患や障害によって造設されます。特に、大腸がんは現在がんの死亡数第2位(2017年人口動態統計によるがん死亡データ1))、罹患数第1位で、ストーマの造設例も多くなっています。
しかも、高齢者が多く、またがんの根治ではなく、腸管の通過を維持するなどQOL向上を目的とした造設例もあります。それに伴い、ストーマの管理が難しくなっているため、ケアにはいっそうの配慮が必要となります。
潰瘍性大腸炎やクローン病の炎症性腸疾患では、薬剤では効果のない重症難治症例で外科的手術が行われ、ストーマが造設される場合があります。
表2 ストーマ造設の原因となる疾患
永久的ストーマと一時的ストーマ
消化管ストーマには、一生の間使用する「永久的ストーマ」と治療の過程で一時的につくる「一時的ストーマ」があります。
永久的ストーマは、腫瘍や病変が肛門、もしくはその近くにあり、切除に伴い肛門を温存できない場合や肛門の機能不全がある場合などに造設されます。
一時的ストーマは、腸の吻合後における縫合不全の予防、腸閉塞による腸の循環不全、大腸憩室炎や炎症性腸疾患(下記参照)による内瘻や外瘻の形成、またはそのハイリスク時などの場合に造設されます。
一時的ストーマでは、数カ月後にストーマ閉鎖術を行い、肛門からの排泄に戻ります。現在では、肛門機能をできる限り温存する手術を実施するケースが多くなっており、一時的ストーマが増えています。ただし、手術の後遺症により排泄機能が低下するというリスクもあります(後述)。
●炎症性腸疾患の場合
クローン病……直腸肛門の病変の場合、永久的ストーマになることがあります。
潰瘍性大腸炎……大腸全摘術後、一時的ストーマを造設し、小腸と肛門をつなぐ手術を実施します。最終的には、ストーマを閉鎖します。
単孔式と双孔式
ストーマは開口部の数から、単孔式(エンドストーマ)と双孔式(ループストーマ)に分類されます(図2)。多くの場合、永久的ストーマでは単孔式が、一時的ストーマの場合は双孔式が選択されます。
双孔式は、口側から便が肛門側から粘液が排泄されます。双孔式には、係蹄式(ループ式)ストーマ、分離式ストーマがありますが、現在ではループ式ストーマが多く、できる限り肛門側のストーマを小さくして、ケアがしやすいように配慮されています。
図2 単孔式(エンドストーマ)と双孔式(ループストーマ)
単孔式(エンドストーマ)
双孔式(ループストーマ)
ストーマの部位と便の性状
ストーマがつくられる腸の位置によって、便の性状や量が異なります(図3)。回腸ではまだ水分を吸収されていないため水様便で、消化酵素を多く含み、皮膚への刺激性は強くなります。また、量も多いため、脱水に注意し水分を多く摂取する必要があります。
上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸と直腸に近くなるほど便は固形化していき、皮膚の刺激性も低下します。
このように便の性状の違いから、イレオストミーとコロストミーではストーマ装具も異なります。
図3 ストーマの位置と便の性状
消化管ストーマ造設に関連する大腸がんの主な術式
ストーマの管理も含め、適切な術後のケアを行うためには、どんな手術が実施されたのかを知っておきましょう。
※ここでは、主に大腸がんにおける術式について解説します。
●直腸切断術(マイルズ術)
がんが肛門の近くにあり、肛門を含めて直腸を切除し、永久的ストーマをS状結腸に造設します。肛門の部位は縫い閉じるので、会陰が大きな創になります。
●ハルトマン手術
腫瘍を切除し、口側の腸管に永久的ストーマを造設し、肛門はそのまま残す手術です。高齢者やがんの姑息的手術など、できる限り侵襲を少なくしたい場合などに実施されます。
●前方切除術
がんが肛門側からある程度離れている場合、腫瘍を切除し、腸管をつなぎます。術後は肛門からの排便が可能ですが、縫合不全を引き起こす危険性があるので、吻合部を保護する目的で、一時的に右側結腸、あるいは回腸に双孔式のストーマ(ループストーマ)を造設します。このストーマは、術後1ヶ月から6ヶ月の間に閉鎖されます。
腹膜反転部より上部で腸を吻合する術式を高位前方切除術、下で吻合する術式を低位前方切除術といいます。
●括約筋間直腸切除術(intersphincteric resection:ISR)
がんが肛門の近くにある場合でも、肛門と外肛門括約筋は温存し、腫瘍と内肛門括約筋を切除する手術です。がんの位置や深達度によって選択されますが、がんを取り残すリスクもあります。
前方切除術と同じく、吻合部の保護を目的に一時的ストーマが造設される場合があります。
手術の禁制への影響
直腸を切除した場合、肛門機能を温存しても、排便回数の増加や下痢を生じやすくなるなど、排便の禁制が保持できなくなる場合があります。
また、直腸の周囲には排尿機能や性機能を司る神経が多く走行しており、これらが損傷すると排尿障害や性機能障害を生じてしまいます。こうした障害が起こらないように、自律神経温存術が行われています。
しかし、病状によってはこうした神経を切除せざるを得ない場合もあります。また、ISRでは、肛門括約筋の一部を切除するため、便失禁が生じることがあります。
必ずしも、術前の排便の禁制を術後も維持できるとは限らないことを知っておきましょう。頻便や便失禁の合併症が伴う場合には、排便管理のための失禁用パットの使用ならびに食事の配慮や骨盤底筋訓練が必要となることがあります。
ハルトマン手術では、ストーマからの排泄となりますが、残っている肛門から少量の粘液が排出されます。そのため、パッドを当てるなどのケアが必要になります。
表3 手術により起こりうる障害
患者さんの術後の生活や人生を考えた視点を
最近では、縫合技術の進歩により、肛門機能温存を期待できるケースが増えています。しかし、高齢者で介護が必要な場合、ストーマのほうが管理がしやすいこともあります。
例えば、前述したように肛門を温存しても、排泄機能が低下することがあり、さらに加齢により肛門括約筋が弱まると、漏れなども生じやすくなり、排泄の管理が難しくなります。
看護師は、術後の患者さんと家族の生活について、術前の生活に合わせて具体的にイメージできるように情報を提供し、患者さんが治療を納得して選択できるように支援していきましょう。
【引用・参考文献】
1)国立がん研究センター:がん情報サービス(2019年10月7日閲覧)https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/dl/index.html#mortality
2)宮嶋正子監:はじめてでもやさしいストーマ・排泄ケア: 基礎知識とケアの実践.学研メディカル秀潤社,2018.
3)杉原健一ほか監:もっと知ってほしい大腸がんのこと 2019年版,キャンサーネットジャパン,2019.
【関連記事】
● ストーマとは? ストーマケアについて
● ストーマ(コロストミー・イレオストミー・ウロストミー)の術前のケア