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【連載】麻酔科看護師が解説! 術後疼痛管理

聖路加国際病院での術後回診チーム(Acute Pain Service)

  • 公開日: 2019/10/28

当院の術後回診チーム(APS;Acute Pain Service)

術後回診チーム(APS;Acute Pain Service)とは

 当院では2016年よりAPSの活動を開始しました。APSのメンバーである麻酔科医師1名、周麻酔期看護師1名が主に術後1日目の患者さんを対象に回診を行います1)。周麻酔期看護師(以後、PAN;Peri-Anesthesia Nurse)とは大学院の修士課程を修了した麻酔を専門とする看護師で、麻酔科の関与する手術室外を含めた幅広い麻酔科医療業務を看護師として補助することで患者さんの安全安心と医療の質を高める役割を担います2)

 現在当院には6名のPANが在籍し、日替わりでAPSの担当をしています。先ほど述べたように、普段は2名で回診を行いますが、相次ぐ緊急手術などで麻酔科医師がそれらの対応に追われる状況では、PAN1名で回診を行うこともあります。その場合は、何か問題が生じた際にPHSで麻酔科医師へ状況を報告し、都度指示をあおぎます。もちろん、必要があれば麻酔科医師が直接診察を行いますが、PANがプロトコールに沿って硬膜外カテーテールの位置調整、ドレープの交換、抜去を実施することもあります。

術後1日目の患者さん回診

 当日の回診にあたり、患者さんのサマリー作成から行います。術後1日目の患者さんのさまざまな情報が必要ですが、当院ではその患者リストは、電子カルテから自動的に抽出されるシステムになっており、毎日エクセルファイル形式のリストが電子メールで届く仕組みになっています。このリストには、患者さんの氏名、ID、入院病室、術式、担当麻酔科氏名などが掲載され、要点を追記するスペースも確保されており大変便利です。PANはこの患者リストに沿って、麻酔方法、手術中に生じた問題の有無、術後の経過などの情報をカルテから集めサマリーを作ります。

 事前に情報を得ることで、問題が生じている患者により焦点を当てた回診ができます。さらに、事前の情報収集をPANが行うことで、その時間を麻酔科医師は他の業務に回せるため、効率的な手術室運営に貢献します。

硬膜外麻酔による疼痛管理中の患者さんには2日目以降も回診を実施

 また、術後2日目以降でも硬膜外麻酔による疼痛管理中の患者さんではカテーテル抜去翌日まで回診対象としています。もちろん麻酔に伴う合併症が起きた際にも継続的なフォローを行っています。術翌日回診リスト同様、電子メールで送られてくる硬膜外麻酔中の患者リストに沿って情報を事前に得ます。

 硬膜外麻酔の管理には、カテーテル位置の調整、ドレッシング材の貼り替えなどの処置が必要になることも少なくありません。そのため、電子カルテ搭載のパソコン(手術時の麻酔記録の確認や処置記録がその場で可能)や硬膜外麻酔の処置の為に必要な物品(ドレッシング材、消毒綿棒、滅菌手袋、局所麻酔薬等)を集めた移動用カートを使用し回診を行なっています(写真1)。これらの物品の準備もPANが行います。

APS回診時に使用するカート

観察項目を評価し、問題を把握

 回診の際には、カルテから得た情報と実際の状態に解離がないか確認し、表1に示す観察項目について直接話を伺います。術後の痛みの評価だけでなく、麻酔により起こりうる合併症の有無を知ることで、私たちが行った周術期管理の妥当性を評価します。離床が進まない不十分な疼痛管理、神経ブロック後の感覚異常の遷延など何らかの問題が生じている場合は、必要に応じて病棟の担当看護師や担当医師と相談し、麻酔科から対策を提案したり実際に介入することもあります。

表1 術後観察項目
術後観察項目チェックリスト

 手術中の管理で問題が生じている場合は、手術を担当した麻酔科医師や看護師へフィードバックし、その後のケア向上を目指します。

 麻酔科からの提案だけでなく、病棟から相談を受けることもあるためAPS担当者は専用のPHSを携帯し、いつでもAPSチームへ相談できる体制を整えています。

 このように、手術中の状態や麻酔方法を理解しているAPSチームと術後の状態を把握している病棟担当者が連携することで、よりよい術後疼痛管理の提供が可能になります。さらには、PANが麻酔科と病棟との架け橋になるよう両方に働きかけることで、より円滑な患者さんへの対応ができていると考えられます。手術室業務で多忙な麻酔科医師に代わり、PANが手術室の外へ出て病棟の患者さんと麻酔科医師を繋げることで、術後を含めたよりよい周術期管理が行えるようになりました。

APS介入が功を奏した事例

 それでは、PANである私の視点からAPSのある1日についてお話したいと思います。

 はじめに、この日は手術室が忙しく、私1人で回診することになりました。術後1日目患者リストと硬膜外麻酔管理中患者リストを印刷し、カルテの情報をリストに書き込んでいきます。ほとんどの患者さんに問題はなく、硬膜外麻酔の調整が必要と考えられる患者Aさんを拾いあげました。

 患者Aさんは幽門輪温存膵頭十二指腸切除術の術後1日目で、術直後の痛みはNRSで2/10でしたが、夜間に創部の痛みが8/10になりアセトアミノフェンの点滴をされていました。その後も痛みは続いているようで、離床を妨げる可能性が考えられました。麻酔科医師へ患者Aさんについて事前に報告し、患者Aさんの回診からはじめました。

 患者Aさんに挨拶を済ませ、術後観察項目に沿って話を聞き、安静時の痛みは5/10、体動時の痛みは8/10でした。硬膜外カテーテルの刺入部位に腫脹、発赤、出血、圧痛はなく、カテーテルの位置は10cmで挿入時の位置と変わらず、しっかりとドレープで固定されていました。コールドテスト(氷やアルコール綿などで冷たさを感じない範囲を評価)で左側はTh10-L1が陽性(冷覚鈍麻)、右側は陰性(冷覚あり)でした。電動PCA(Patient Controlled Analgesia;自己調節鎮痛法)の履歴を確認すると、ボーラス用のボタンは一度も押されていませんでした。

 前途を麻酔科医師へ報告し、1%メピバカイン5mlを硬膜外カテーテルより投与し、15分後に効果を評価するよう指示を受けました。15分後、患者Aさんの安静時の痛みは0/ 10と軽快し、コールドテストで左側はTh8-L1、右側はTh9-11が陽性と右側の麻酔の効果が出現しました。患者Aさんの表情にも笑顔が見らえるようになりました。

 麻酔効果について麻酔科医師へ報告後、患者Aさんには痛みがあるときはPCAボタンを使用するように伝え、前途について病棟の担当看護師へ報告し、これらについてカルテへ記載しました。その後の硬膜外麻酔の効果と離床の状況を確認するため午後にも患者Aさんのもとへ向かったところ、痛みの増悪はなく、問題なく離床が進んでいました。この症例はAPSが介入することで良好な疼痛管理が得られた1例でした。

APSチームの今後の展望

 前述の通り、APSチームは麻酔科医師と周麻酔期看護師の2名で行っていますが、今後チームメンバーに薬剤師の参加を期待しています。薬剤師がメンバーに加わることで、薬剤使用量や極量の把握、薬剤の配合禁忌の確認など、より安全な投薬ができます。また、病棟回診の中で最低限必要な情報共有は病棟の看護師と図れていますが、現場の意見を定期的に汲み上げあげ相談し合える場はありません。手術室や麻酔科と病棟など部署の垣根を越え、気軽に意見交換ができる機会も設けていきたいです。そして今後も患者さんに寄り添ったケアとともに、より安全な医療の提供に努めていきたいと考えています。

引用・参考文献

1)岸本陽子,亀田めぐみ,吉田奏,長坂安子,片山正夫,宮坂勝之:聖路加国際病院 での周麻酔期看護師の活動報告.第4回PAN Network研究会 2018.
2)宮坂勝之,片山正夫:聖路加看護大学が目指す周麻酔期看護師.聖路加看護学会誌 2012;16( 1 ):35-7.

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