骨転移のある患者さんの動作工夫|症状別がんの緩和ケア
- 公開日: 2019/11/12
Ⅰ.はじめに
骨転移はがん患者さんによくみられ、痛み、病的骨折、脊髄圧迫を引き起こします。骨転移がみられる患者さんへの対応は、痛みをできるだけ取り除くこと、骨折を避けることが大切です。今回の事例では、放射線治療や薬物療法だけでなく看護の工夫でどう対応するかも解説します。
Ⅱ.患者さんの概要
A氏:77歳、男性、肺がん、多発骨転移、脊椎転移
放射線治療は行われており、投与薬剤はオキシコンチン、セレコックス、アセトアミノフェンです。立位の際に大腿骨の痺れがあります。予防的レスキューは効果を認めず、立位と歩行は困難な状態でした。痺れが生じた時点で鎮痛補助薬のリリカの内服を開始しましたが、劇的な効果は認められませんでした。また、画像上脊椎の転移巣が広く、少しの刺激でも骨折するリスクが高いため、歩けなくなる可能性が非常に高いとされていました。しかし、A氏は非常に自律された方で、洗面やトイレなどの日常生活行動を自分で行いたいという意思を強くもっていました。
患者さんの意思を尊重する一方で脊椎骨折のリスクは回避しなければなりません。そこで、患者さんのADLやQOLをできるだけ低下させないためにはどうすればよいか、最大限できることを多職種で話し合い、ケアの内容を決定していきました。
Ⅲ.アセスメントとケアの計画・実施
Point①リハビリテーションの介入によるコルセット作成と環境調整
医師との相談により、まずはリハビリテーション科へコンサルテーションを行いました。その結果、迅速にコルセットが作成されました。そして、患者さんの負担ができるだけ少なくなるように環境調整を行いました。まず、歩行時の注意点として、必ずコルセットを装着すること、手すりを両手で持ち「蟹さん歩き」をすること、面倒でも足は必ずそっと着地させることを伝えました。
また極端な前屈運動を避けるため、ベッドから立ち上がる際は、必ず膝よりもベッドの位置が高くなるように調節しました。こうすることで、捕まる場所の確保を行いながら楽に立位が取れるようになります。そのこのような介入の甲斐あって、A氏は少しずつ歩行が可能になりました。
トイレに関してはかがみこむ動作が脊椎に負担をかけてしまうため、話し合いの結果、排便の際のふき取りに関しては看護師が介助をすることになりました。当初は羞恥心からか、妻に依存する部分も大いにありました。しかし、徐々に看護師に慣れ、介助を委ねてくれることも増えてきていました。