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心不全治療の新たなシナリオ

  • 公開日: 2021/1/19

2020年9月17日に、ノバルティス ファーマ株式会社と大塚製薬株式会社の共催による「心不全Webメディアセミナー」が開催されました。今回は「超高齢化社会における心不全医療のあり方」と題し、九州大学大学院医学研究院・循環器内科学教授の筒井裕之先生による講演が行われました。この講演についてレポートします。


日本の心不全患者数は増加し続ける

 2018年に発行された「日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン(以下ガイドライン)」では、「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」と一般向けにわかりやすく定義されています1)。この「だんだん悪くなる」こと、そして「生命予後が不良である」ことが、心不全を把握する上で非常に重要です。


 佐渡市で行われた研究を基に推計されたデータによると、日本における心不全患者数は2020年時点で約120万人。その数は高齢化の進行に伴って増え続け、2030年には約130万人に達するといわれています2)。また、日本循環器学会が実施した循環器疾患の診療実態調査をみると、心不全は急性心筋梗塞より入院患者数が多く、増加の割合も大きくなっています3)。この第一の原因は高齢化です。日本は超高齢社会であり、心不全が高齢の患者さんに多い疾患であることを反映しています。


 厚生労働省の統計結果によると、日本国民の死因のトップはがんで全死亡者数の28%を占めています。心疾患は第2位となっていて、その割合は脳血管疾患の8%を合わせて23%になり、がん全体と同じくらいの患者さんが心血管疾患で亡くなっています。ただし、心疾患で亡くなった患者さんについては、急性心筋梗塞は急性期の冠動脈インターベンションの普及によって死亡者数が減少しているのに対し、心不全死亡者数は心疾患死因の40%とトップを占めています4)


心不全は増悪を繰り返す

 心不全が非常に重要な疾患であるというのは、増悪を繰り返すこと、そして増悪のたびに心機能が低下し、死に至るというところにあります。心不全は増悪するとほとんどの場合入院治療が必要になるため、再入院率は非常に高いという特徴があります。心不全患者さんに対する薬物治療や非薬物治療は随分進歩しており、予後は改善傾向にあるものの、増悪による再入院はここ10年ほどほとんど改善していないというのが治療の現状です。


 ガイドラインでは、「心不全とそのリスクの進展ステージ5)」というステージ分類を掲げています。心不全の治療は、このステージが進行しないように治療して予防していくことが大切です。そしてそれが、このステージ分類の重要なメッセージでもあります。


 治療は、薬物治療と非薬物治療を組み合わせて行うことも心不全の重要な点です。


 2018年以降、非常に多くの大規模臨床試験によるエビデンスが公表されています。現在の治療アルゴリズムを見直し、2021年3月に向けて急性・慢性心不全診療ガイドラインのアップデート版を現在作成しています。


2021年春に「心不全療養指導士」の認定制度がスタート

 心不全の治療では、疾病管理が非常に大切です。心不全の増悪による再入院の誘因を調べた調査では、「塩分・水分制限の不徹底」や「治療薬服用の不徹底」など、患者さん側の要因によるものが上位にあげられています。


 そこで重要なのは、心不全の疾病管理の特徴である多職種チームによるチームアプローチ、専門的な教育を受けた医療従事者による患者教育、相談、支援、包括的心臓リハビリテーションです。日本循環器学会と日本脳卒中学会は、「ストップCVD(脳心血管病)」をキャッチフレーズとした「脳卒中と循環器病克服5カ年計画」を策定しています。この計画にある5戦略のひとつ「人材育成」の取り組みとして、日本循環器学会では病院・地域・在宅における心不全療養指導のエキスパートである「心不全療養指導士」の認定制度を、2021年3月からスタートさせる予定です。対象となるのは看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士などの医療従事者。チーム医療、多職種連携を円滑に行っていくためには、基本的な共通知識を持ち、共通言語で情報を共有し、それをもって患者さんの指導ができることが必要で、この心不全療養指導士が重要な役割を果たすことになるでしょう。


 近年、心不全における緩和ケア「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」(図4)の重要性が注目されています。がんにおいては積極的な治療と緩和ケア、病態改善のための治療と症状緩和のための治療を早い段階から同時に行っていますが、心不全の場合もこのような考え方が大切です。


 今、多くの病院で、がんの緩和ケアとともに、心不全の緩和ケアに取り組む動きが始まっています。学会としてもそのような動きを支援し、心不全治療の質の向上に貢献していこうとしています。


引用・参考文献

1)日本循環器学会 他,編:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版).2017,p.10.
2)Yuji Okura,et al:Impending Epidemic―Future Projection of Heart Failure in Jpan to the Year 2055―.Circ J 2008;72(3):489-91.
3)循環器疾患診療実態調査報告書(2018 年度実施・公表)(2021年1月11日閲覧)http://www.j-circ.or.jp/jittai_chosa/jittai_chosa2017web.pdf
4)厚生労働省:令和元年(2019)人口動態統計(確定数)(2021年1月11日閲覧)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei19/index.html
1)日本循環器学会 他,編:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版).2017,p.12.

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