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【連載】エキスパートが教える! 知っておきたい看護技術

ガーゼ・器械カウントの重要性ー手術室看護師だけでなく、病棟勤務の看護師も知っておこうー

  • 公開日: 2021/7/5

みなさんは「医療安全元年」をご存知でしょうか?


医療安全元年とは、現在当たり前のように行われている医療安全対策に日本中が大きな関心を持つきっかけとなる医療事故が起きた1999年を指します。この1999年に「患者取り違え」「消毒薬の誤投与」など世間の注目を浴びる大きな医療事故が起こり、1999年以降医療安全に対する意識が強まりました。


それ以降、手術室の医療安全についても、WHOの「安全な手術を実施するための基本指針10項目」、日本手術医学会の「手術医療の実践ガイドライン」、日本手術看護学会の「手術看護業務基準」など多くのガイドラインや指針、基準の中で取り上げられています。


その中から今回はガーゼ・器械カウントについてお話しします。


未だに起こっている! 手術における体内遺残事故

 「ガーゼオーマ」という言葉を聞いたことはあるでしょうか? ガーゼオーマとは、手術中に使用していたガーゼが体内に残ったまま放置され、腫瘤状に変化した状態のことです。その他に、手術器械が腹腔内に入っているX線写真を見たことはあるでしょうか? 皆さんは「もしガーゼや手術器械が体内に残っていても、見ればわかるでしょ!」と思うかもしれませんが、ガーゼや手術器械の遺残は実際に起こっています。


術後のイメージカット


 手術という神経を張りつめた状態、長時間の手術による疲労、緊急手術などの十分に判断する時間がない場合など、さまざまな条件が重なる手術では十分に起こり得る医療事故なのです。もちろん体内に遺残したガーゼや器械は異物ですので、ガーゼオーマと呼ばれる腫瘤となったり、感染や疼痛のリスクとなったりします。さらに、体内から取り出すために再度手術が必要となり、患者さんへの負担、病院の経済的負担が伴います。


 そのため、先述したさまざまなガイドラインや指針の中でも、体内遺残防止が挙げられています。これで皆さんもガーゼ・器械カウントが重要であることが認識できたと思います。


異物の体内遺残を防ぐ! カウントの手順

 では、実際にどのようにカウントすればいいのでしょうか? ここでは一般的な方法を紹介しますが、その前にまずはどのような手術で遺残が起こりやすいか押さえておきましょう。


①長時間もしくは出血量が多い手術
②緊急手術や急変が起こった手術
③2カ所以上の手術創がある手術
④医師・看護師が頻回に交代する手術


 上記が体内遺残の起こりやすい手術です。もちろんこれらの手術だけでなく、すべての手術で起こり得ることも頭に入れておかないといけません。


1)ガーゼカウント

それでは、はじめにガーゼカウントの手順です。


①X線不透過の糸を使用したガーゼを必要枚数器械台に展開する。
 ガーゼは多すぎると紛失しやすくなり、少なすぎると頻回に途中で追加することでカウントが合わなくなる可能性が増えるため、術式に応じて必要枚数分を準備します。
 X線不透過ガーゼは、X線不透過の糸を使用しているため、カウントが合わないときにX線撮影で確認することができます。本来はすべての手術でX線不透過ガーゼを使用することが望ましいですが、高価なため、小手術ではX線透過ガーゼを使うというように病院で術式を決めて使用しているケースもあります。


②執刀開始前の器械展開時にガーゼの枚数を1枚ずつ2人で数える。
 執刀開始前に何枚あったのか数えておかないと手術後のカウントはできません。そのため、きちんとガーゼが必要枚数展開しているか数えます。数え間違いがないように数える際は重なっている束のガーゼを1枚ずつ離して数えます。数え間違いを防ぐため自分1人で数えるのではなく、2人でダブルカウントをします。


③手術中はガーゼの行方を把握し、体内に留置した場合はチームで共有する
 出血時の圧迫止血や視野の確保のためにガーゼを体内に留置することは少なくありません。ガーゼの行方がわからなければ適切にカウントできないため、器械出し看護師はガーゼの行方を把握し、体内にガーゼが留置された場合は、大きな声で報告し、チームで共有することが大切です。


④手術中使用したガーゼは決められたゴミ箱に捨てる
 使用したガーゼを目につくゴミ箱どこにでも捨ててしまうと、使用済みのガーゼの回収が難しく、カウントが合わなくなる可能性があります。そのため、病院でガーゼを捨てるゴミ箱を決めることで、回収も容易となり、紛失の危険も減ります。


⑤摘出した標本にガーゼがついていないか確認する
 手術中摘出された標本はガーゼで受け取ることがありますが、そのまま気づかずに標本についたままだとカウントが合わなくなります。また、迅速病理などで手術室外に出してしまうとさらにカウントが合わなくなる可能性があります。そのため、外回り看護師は摘出標本にガーゼがついていないかをきちんと確認する必要があります。


⑥器械出し看護師の交代の際はカウントを行う
 人が代わることで、ガーゼの行方がわからず紛失する可能性があるため、交代する際は器械出し看護師と外回り看護師の2人でカウントを行います。また、体内に留置されているガーゼの種類や枚数を申し送ります。


⑦閉創前にカウントを行う
 ガイドラインなどでは、体腔閉鎖(胸膜・腹膜閉鎖)前、筋層閉鎖前、皮膚縫合前と頻回なカウントを推奨していますが、閉創の短い時間の間に何回もカウントするのは、疎かなカウントとなることも考えられ、現実的ではありません。そのため、病院でどの時点でカウントを行うかを決め、その時点でしっかりとカウントを行うことが重要です。カウントが合った際はチームで共有できるように大きな声で報告します。


⑧カウントが合ったことを記録に残す
 外回り看護師は、執刀開始前、閉創前などカウントを行った際は時間と枚数およびカウントを行った者2名を記録するようにします。こうすることで、カウントする者が責任を持ってカウントできるようになります。


⑨執刀終了後、手術室内でX線撮影を行い、ガーゼが体内に残っていないことを確認する。
 人間はミスをする生き物です。ダブルカウントを行っていても、カウントを間違えている可能性は0ではありません。体内遺残を防止するそのため、手術室から出る前にX線撮影を行い、本当に残っていないかを確認します。


⑩ガーゼを廃棄する
 ガーゼカウントの一致とX線撮影での確認が得られれば、ガーゼを手術室外に持ち出し廃棄します。手術室外に持ち出すことで紛失・カウントの不一致につながりますので、きちんと確認が終わってから廃棄します。また、手術室内に残っていると次の手術でのカウントが合わなくなる危険もあります。


 以上がガーゼカウントの手順となります。


2)器械カウント

 続いて器械カウントの手順ですが、タイミングなどの基本的な手順はガーゼカウントと同様です。異なるのはカウント時の確認ポイントです。


①器械セットのリストを作成し、記録の準備をする
 器械セットは施設によって多種多様に作成されています。その器械セットには何が入っているのかがわかるようにリストを作成し、セットを組むとき、器械展開時、閉創前、洗浄前ときんと確認し、記録を残す必要があります。


②分解できる器械やネジ・ビスを確認する
 器械には分解できる器械も多いため、洗浄時・滅菌時は分解されていることもあります。そのため、部品やネジなどがなくなっていないかカウント時には確認する必要があります。器械リストに記載しておくとわかりやすいでしょう。


③破損や不備がないか点検する
 器械は消耗品でもあるため、持針器のチップの摩耗やネジのゆるみ・脱落、ひび割れや欠損などがないかを点検する必要があります。破損や不備があった場合は術中の体内への脱落を防ぐため、使用しないようにします。


確実なカウントの実施で安全な医療の提供を

 今回お話ししたガーゼや器械以外にも針やツッペル、血管用テープなど体内遺残しやすい物はまだあります。多くの病院ではガイドラインや指針をもとに体内遺残防止対策を講じていると思います。そのため、病院で決められた体内遺残防止手順に沿って、確実にカウントを実施することが大切です。また今回は触れていませんが、どれだけカウントしても合わないときもあるかもしれません、いや、きっとあると思います。そのようなときはどうするのかも病院でしっかりと対応策を決めておく必要があります。


参考文献

1)日本手術医学会:手術医療の実践ガイドライン(改訂第三版).日本手術医学会誌 2019;40巻suppl号
2)日本手術看護学会 手術看護基準・手順委員会編:手術看護業務基準.2017.
3)日本手術看護学会:日本手術看護学会推奨【手術看護手順】
4)日本麻酔科学会:WHO安全な手術のためのガイドライン2009<2015年5月26日改訂>.公益社団法人日本麻酔学会(2021年6月14日閲覧) https://anesth.or.jp/files/pdf/20150526guideline.pdf

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