1. トップ
  2. 看護記事
  3. 医療・看護技術から探す
  4. フットケア
  5. 第23回 このトラブル、どう対応しますか?

【連載】やってみよう! フットケア

第23回 このトラブル、どう対応しますか?

  • 公開日: 2021/7/9

各地でまだまだ新型コロナ感染が続いており、私の住む大阪府も非常事態宣言が出されていました。総合病院の受診もなかなかできず、フットケアも十分なケアができない状態が続いています。それでも困っている人がいらっしゃれば何とかしたいと施設や訪問看護等で安全範囲内でこれ以上悪化しないようにとできる限りのケアを行っています。


今回も、前回に引き続き、当院の実際のケアを紹介したいと思います。


症例1

ケア前

ケア前の写真
肥厚して変形した爪

左拇趾の爪が肥厚して変形、指からはみ出して伸びているため靴を履くと痛みがある。
一日のほとんどを椅子に座って過ごすため、浮腫みがある。


ケア内容

ケアの目的:指からはみ出している爪を切り、靴を履いても痛みがないようにする

①ゾンデで爪と皮膚の分離、確認を行う。爪の周囲の不要な角質を除去。
②指の長さにおさまるように爪を切る。
③やすりで長さ、表面の引っ掛かる部分のみ調整する。
両足爪切り後、軽くマッサージをして20分で終了する。


ケア後

ケア後の写真
肥厚した爪を除去した様子

帰りは痛みもなく、靴も履けて、歩行もスムーズにできていた。


症例2

ケア前

ケア前の写真
左足拇趾の巻き爪

左足拇趾の巻き爪による疼痛あり。発赤、化膿は認めない。


ケア内容

ケアの目的:疼痛の緩和、悪化を防止する
シャボンラッピング後、舌ブラシで爪周囲を洗浄。
②ゾンデで巻いている部分を確認後、食い込んでいる爪のみ切る。
③やすりで断面をならす。
④他の指も同様に爪切りをする。食い込んでへこんだ皮膚を回復するため指先のみマッサージをする。


ケア後

ケア後の写真
巻き爪のケア後


症例3

ケア前

ケア前の写真
剥がれかけている爪

第4趾の爪がはがれかけている。痛みはない。
本人は引っ張っても取れないので絆創膏固定していた。


ケア内容

ケアの目的:はがれかけている爪の状態を確認し、適切なケアを行う
①この症例は取れかけた爪の下に硬い爪があったため、出血しないことを確認し、本人に承諾を得て、爪を切る。


ケア後

ケア後の写真
ケア後の写真

終了後、出血、疼痛のないことを確認する。


症例4

ケア前

ケア前の写真
肥厚している爪

拇趾の爪は肥厚して指より長く伸びている。
2趾の爪は肥厚している。3趾の爪は肥厚して両サイド巻いて、皮膚を巻き込んでいる。
4趾の爪は古い内出血と思われる変色、肥厚あり、皮膚と爪の境目がわからない。


ケア内容

ケアの目的:肥厚して長く伸びている爪を除去する
①ゾンデで爪と皮膚を分離し、確認する。うまく分離できないときは爪の裏側を少し削ってみるとよい。
②指先から分離できたところまで爪を切り、やすりで調整する。
③無理をせずに爪だと判断できたところを切って、角質を取ってを繰り返し、長さを調整する。


ケア後

ケア後の写真
肥厚した爪の除去後

足がむくみやすいので、大きい靴を履かざるを得ないので摩擦で肥厚や内出血があると思われる。靴下の厚みで調節できるよう説明する。


まとめ

 私がクリニックで行うケアはどうでしょうか? もっと切ったり、削ったりしたほうがよいというご意見もあるかと思いますが、患者さんの「今、困っていること」の解消と今後の生活を考えて、ケアをしています。


 痛みや出血がないことはもちろんですが、違和感がないこと、最低限のケアで現状が維持できることが重要だと考えています。


看護としてのフットケアは「安全に」「安定した」「安楽なもの」でありたいです。



この記事を読んでいる人におすすめ

カテゴリの新着記事

包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)の病態と治療

形成外科では難治性創傷を扱いますが、その中で包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)の症例が増加しています。一般的にフットケアというと、爪切り、胼胝けずり、足浴・保湿をイメージする医療従事者が多いようですが、それだけでは透析患者さんの足を救うことはできません。 重要なことは、足を

2023/2/28

アクセスランキング

1位

心電図でみる心室期外収縮(PVC・VPC)の波形・特徴と

心室期外収縮(PVC・VPC)の心電図の特徴と主な症状・治療などについて解説します。 この記事では、解説の際PVCで統一いたします。 【関連記事】 * 心電図で使う略語・用語...

250751
2位

術前・術後の看護(検査・リハビリテーション・合併症予防な

患者さんが問題なく手術を受け、スムーズに回復していくためには、周手術期をトラブルなく過ごせるよう介入しなければなりません。 術前の検査  術前は、手術のための検査と、手術を受ける準備を...

249741
3位

看護問題リスト・看護計画の書き方|看護記録書き方のポイン

ここでは一般的な看護記録を解説しています。また、看護診断名にNANDA-I看護診断を使用しています。実際の記録は院内の記録規定に従いましょう。 【関連記事】 *看護計画の「観察項目...

249544
4位

【血液ガス】血液ガス分析とは?基準値や読み方について

血液ガス分析とは?血液ガスの主な基準値 血液ガス分析とは、血中に溶けている気体(酸素や二酸化炭素など)の量を調べる検査です。主に、PaO2、SaO2、PaCO2、HCO3-、pH, ...

249974
5位

陰部洗浄の目的・手順・観察項目〜根拠がわかる看護技術

*2020年4月16日改訂 関連記事 * おむつ交換のたびに陰部洗浄は必要? * 膀胱留置カテーテル 陰部洗浄・挿入・固定のコツ * 在宅療養におけるオムツ使用と陰部洗浄について知...

249675
6位

転倒転落リスクに対する看護計画|高齢で転倒の恐れがある患

高齢の転倒転落リスクに関する看護計画 加齢に伴い筋力や平衡感覚などの身体機能が低下することに加えて、疾患やそれに対する治療、使用する薬剤の副作用、入院環境などさまざまな要因で転倒や転落しやすくな...

313501
7位

第2回 小児のバイタルサイン測定|意義・目的、測定方法、

バイタルサイン測定の意義  小児は成人と比べて生理機能が未熟で、外界からの刺激を受けやすく、バイタルサインは変動しやすい状態にあります。また、年齢が低いほど自分の症状や苦痛をうまく表現できません。そ...

309636
8位

バイタルサインとは|目的と測定の仕方、基準値について

*2019年3月13日改訂 *2020年4月15日改訂 *2022年4月28日改訂 バイタルサインとは  バイタルサインとは「生命徴候」のことで、「脈拍」「呼吸」「体温」「血圧」「...

249791
9位

心不全の看護|原因、種類、診断、治療

*2020年4月30日改訂 心不全とは  生活習慣病やさまざまな基礎疾患、加齢などが原因となり、心機能、特に多いのは左心室のポンプ機能が低下することで起こります。心臓のポンプ機能の代償...

249812
10位

サチュレーション(SpO2)とは? 基準値・意味は?低下

*2019年3月11日改訂 *2017年7月18日改訂 *2021年8月9日改訂 発熱、喘息、肺炎……etc.多くの患者さんが装着しているパルスオキシメータ。 その測定値である...

249818