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【連載】脳神経内科で必要な看護技術を学ぼう!

麻痺(運動麻痺)の看護|種類や評価方法、メカニズムなど

  • 公開日: 2021/12/1
麻痺には、手や足に力が入らない(入りにくくなる)運動麻痺と、感覚が鈍くなる感覚麻痺の大きく2つがあります。ここでは、運動麻痺を中心に解説します。

麻痺とは

 神経系あるいは筋肉の障害、疾患により筋肉の随意的な運動機能が低下または消失した状態を麻痺といいます。筋力そのものの低下が認められなくても、脳性麻痺といった身体の一部の筋緊張が高まり、正常な運動が行えない状態を意味することもあります。

 通常、身体を動かす場合、大脳皮質の運動野が指令を出します。指令は内包、中脳、橋を通り延髄で錐体交叉し、反対側の脊髄または脳神経核を介して四肢や体幹の運動器へ刺激を運びます。

 大脳皮質から脊髄前角細胞や脳幹の脳神経核まで軸索を伸ばし、シナプスを形成する中枢神経を上位運動ニューロンといい、上位運動ニューロンから運動指令を受け、その信号を手や足などに伝える末梢神経を下位運動ニューロンと呼びます(図1)。

図1 上位運動ニューロンと下位運動ニューロン
運動ニューロン

 大脳皮質からの指令が筋へと伝わる過程が障害されると、随意運動が正常にできなくなります。この状態を運動麻痺といいます。

 運動麻痺は障害部位に応じて、上位運動ニューロン障害と下位運動ニューロン障害に分けられます。上位運動ニューロン障害は「中枢性麻痺」とも呼ばれ、大脳皮質から脊髄前角細胞に至る中枢経路に障害が起こり発生します。代表的な疾患は脳梗塞、脳内出血、多発性硬化症で、筋緊張の亢進や痙性麻痺のほか、まれに弛緩性麻痺が出現します。

 下位運動ニューロン障害は、脊髄前角細胞から末梢部の筋にいたるまでの経路が障害されることにより起こり、「末梢性麻痺」ともいいます。筋緊張の低下、筋委縮、弛緩性麻痺をきたし、代表的な疾患に脊髄性筋萎縮症などがあります。

麻痺の分類

 運動麻痺は麻痺が生じている部位により、表1のように分類されます。あるいは、筋緊張の状態から「痙性麻痺」と「弛緩性麻痺」に分けることもできます。痙性麻痺は中枢神経系の筋を支配する神経細胞より上位の障害によるもので、筋緊張の亢進を伴います。弛緩性麻痺は筋あるいは筋を直接支配する末梢運動神経の障害によるもので、筋緊張の低下を認めます。

表1 麻痺の分類

麻痺の原因

 運動麻痺の原因として、主に次の脳疾患が挙げられます。

脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、急性硬膜下血腫、急性硬膜外血種、慢性硬膜下血種、もやもや病、脳挫傷、外傷性くも膜下出血、脳腫瘍、多発性神経炎、頸髄損傷、筋疾患など

麻痺の観察、評価の仕方

1)徒手筋力検査(Manual Muscle Testing:MMT)

 MMTは、末梢性麻痺の程度を評価する際に用いられます(表2)。まずは自分で動かすことができる範囲を確認し、その後、抵抗を加えて筋力を評価します。

表2 徒手筋力検査

2)ブルンストロームステージ

 ブルンストロームステージでは、急性期における弛緩性麻痺からの変化をステージ別(6段階)に分類し、上肢、下肢、手指の3部位でアセスメントします(表3)。片麻痺患者さんの麻痺の回復がどの段階にあるのか確認できるほか、ADLやリハビリテーション内容などの把握・共有に役立ちます。

 脳卒中では特定の筋のみの筋力低下ではなく、個々の筋の分離ができず共同運動をとります。したがって、脳卒中においては徒手筋力検査とあわせて、共同運動を把握できるブルンストロームステージを用いて評価することが大切です。

*1つの関節だけを独立して動かすことができず、それ以外の関節も同時に動く現象のこと

表3 ブルンストロームステージ
石田暉:脳卒中後遺症の評価スケール.脳と循環 1999;4:151-159.より引用

3)その他

 脳卒中による軽度の麻痺の検出には、上肢・下肢のバレー徴候、ミンガッチーニ徴候、フーバー徴候について理解しておくとよいでしょう。

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