ストーマ装具の基本知識|面板・パウチの種類と特徴
- 公開日: 2022/2/23
ここでは、ストーマ装具の基本知識について解説します。
ストーマ装具の基本
現在、販売されているストーマ装具は多種多様で、メーカーごとに工夫された製品が揃っています。しかし病院では、物品管理上品数を制限しているので、使用するストーマ装具はあらかじめ指定されている施設が多く、種類は限られていると思います。
そのため、患者さんは入院中に使用したストーマ装具しか選択肢がないと思ってしまいがちです。しかし、入院生活と日常生活では患者さんの活動状況は異なり、またストーマの状態も変化していきます。
患者さんがセルフケアを行うためには、ストーマ局所状況やストーマ周囲の状態、ライフスタイル、コスト、使用感などを考慮して、適切なストーマ装具を選択する必要があります。
装具の選択は皮膚・排泄ケア認定看護師など担当のナースが行うことが多いかもしれませんが、病棟の看護師も、基本的な種類やその特徴はおさえておきましょう。
ストーマ装具の構成と構造
ストーマ装具は、面板(めんいた)とパウチ(ストーマ袋ともいう)で構成されています。面板はパウチを皮膚に粘着させる部分、パウチは便や尿を採集する袋です。
面板とパウチが一体化したタイプのワンピース(単品系装具)と、面板とパウチが分かれているタイプのツーピース(二品系装具)があります(図1)。それぞれにメリット、デメリットがあります(表1)。
メリット | デメリット | |
ワンピース | ・フランジがないため、やわらかで違和感が少ない。 ・厚みが薄く、あまり目立たない ・安価な製品が多い |
・パウチだけの交換ができない ・袋越しのストーマの位置を確認するため、装具側のストーマ孔が合わせにくい |
ツーピース | ・深い皺がある場合でも固定しやすく、安定しやすい ・面板を貼付したままパウチだけを交換できる ・パウチの向きを変えることができる ・活動時・就寝時など、パウチの種類を変えることができる ・ストーマを確認しながら、面板を装着できる |
・フランジの厚みにより、違和感がある ・固定時に腹部に圧力がかかるため、術直後では痛みが生じることがある ・硬さと高さがあるため、薄着をすると外から目立ちやすい |
ツーピースの場合、面板を皮膚に装着した後に、フランジという接合部分でパウチを固定します。フランジには、固定型と浮動型があり、浮動型は面板からフランジが浮き上がっていて、その間に指を入れてパウチをはめられるため、固定型に比べて、腹部にかかる圧力を軽減できます(表2)。
固定型 |
・硬さがあるため、浅い皺を補正できるが、違和感が大きい ・嵌合時に腹圧が必要 |
浮動型 |
・柔軟性があり、違和感が少ない ・フランジを指で挟むことができるため、あまり腹圧をかけずに嵌合できる ・フランジを指で挟む際に、貼付したストーマ周囲の部分が持ち上げられ、ストーマ周囲皮膚と皮膚保護剤の隙間ができやすい |
最近では、フランジがなく違和感が少ないワンピースが主流です。しかし、ストーマ周囲の皺が深い患者さんの場合、フランジにより面板部分に硬さを持たせたツーピースのほうが腹壁の皺をのばして面板を固定することができるため、安定します。
また、日常生活でかがむなどの動きが多い患者さんの場合、ツーピースのほうが体動による腹壁の皺への排泄物の潜り込みによる皮膚トラブルが少ないと考えられます。
面板
面板の形状
面板の形状は、平面型と凸面型があり、ストーマの高さ、ストーマ周囲の状態によって選択されます。
平面型…粘着面が平らになっていて、皮膚への圧迫が少ない。ストーマに高さがあり、ストーマ周囲の皺が少ないなど腹壁が平坦な場合に適している。硬さも種類があり、硬い腹壁には軟らかい面板が良く密着し、軟らかい腹壁には硬い面板により腹壁の皺への排泄物の潜り込みが防げます。
凸面型…粘着面が凸で、ストーマの高さが低い、ストーマ周囲に深い皺やくぼみがある場合に密着しやすい。凸面の高さと硬さには種類があり、適したものを選択する。
面板の皮膚保護剤
排泄・分泌物の皮膚接触を防止し、皮膚を生理的に保つ作用のある弱酸性の皮膚保護剤を中心に構成されています。主に、皮膚保護剤だけのもの(図2)と、粘着力を高めるために外周にテープがついているもの(図3)があります。
平面型
バリケア®ナチュラTM フランジ/コンバテック
平面型
バリケア®ナチュラTM Mフランジ/コンバテック
皮膚保護剤の成分には、親水性ポリマーと疎水性ポリマーがあります。親水性ポリマーは、水分を吸収すると溶解または膨潤する作用をもち、カラヤガム、ペクチン、カルボイシルメチルセルロース(CMC)などがあります。
疎水性ポリマーは皮膚への粘着性、耐久性を高める作用があり、ポリイソブチレン(PIB)、スチレン・イソプチレン・スチレン(SIS)などがあります。
製品によって、ポリマーの成分やその配合は異なり、剥離刺激等の皮膚への影響や排泄物に触れた際の皮膚保護作用、並びに耐久性などの特徴もさまざまです。
面板のストーマ孔
面板の中央部には、ストーマ孔という穴が開いています。ストーマの大きさや形状に合わせて、スマート孔のサイズを決めます。
ストーマ孔は、既製孔(プレカット)・自由開孔(フリーカット・カスタムカット)・自在孔 の3種類があります(図4)。
既製孔(プレカット)凸面型…すでに孔があいているもの |
自由開孔(フリーカット・カスタムカット)凸面型…はさみなどでカットして孔をあける・ワンピースの装具の場合、フリーカットではパウチを切らないようにストーマ粘膜の部分の面板の皮膚保護剤をカットする |
可塑性自在孔(平面型)…指などで孔のサイズを広げて成型する。既成孔が空けてあるが、それよりも直径を指で広げられる。成型可能サイズは製品によって異なるが、40mm程度広げることができる製品もある。 |
消化器ストーマ用のパウチには、排泄物の排出口が閉鎖型のものと開放型のものがあります(図5)。開放型には、クリップで閉鎖するタイプや巻き上げてマジックテープなどで止めるタイプがあり、イレオストミーの場合、水様便が排出しやすいように排出口が細くチューブ状になっていてキャップで止める方式も選択できるようになっています。
閉鎖型 |
ワンピース装具 平面型 |
ツーピース装具 ナチュラTMプラス クローズパウチ/コンバテック |
開放型 |
ワンピース装具 平面型 ワンピースオストミーシステム セルケア®1・TD/アルケア |
ワンピース装具 平面型 マジックテープ開閉式 ノバライフ1 フィット/ダンサック |
ワンピース道具 凸面型 アクティブライフ®ドレインパウチCD/コンバテック |
ツーピース装具 ユーケアー®2・D/アルケア |
ツーピース装具 ナチュラTMプラス インビジクローズ®ドレインパウチ/コンバテック |
イレオストミー用 ワンピース装具 平面型 キャップ式 やわらか凸 イレオ(右)/やわらか平面 イレオ(左)/コンバテック |
尿路ストーマ用の場合、排出口である管をコックで開閉するタイプとキャップで開閉するタイプがあります(図6)。また、尿は量が多いため、排泄口に接続管を接続して、レッグバッグ(図7)や採尿バッグをつなげることで、外出時や就寝時に畜尿量を増やすことができます。
エスティームTM やわらか凸ウロ(尿路用)/コンバテック
外出時や移動用に用いる外部接続型の採尿袋
パウチの色
パウチの色には、透明、半透明、下着から透けて見えない色(肌色・グレー)のものがあります。透明のものは、ストーマや排泄物の観察がしやすく、肌色やグレーのものは衣服から目立ちにくいといったメリットがあります。排泄物の性状や量の観察が重要な術直後には透明、全身状態が落ち着いて退院するころには洋服の上から目立ちにくい肌色やグレーが選択されるのが一般的です。
パウチの機能
消化管ストーマ用には、ガス抜きのための脱臭フィルターが付いていることがあります。小さな脱臭フィルターは多量のガスのにおいを完全に消臭できるものでは無いので、臭いや排泄物が漏れ出すリスクもあります。
外出時はフィルターを閉じて過ごしたりすることも選択肢として、排泄物やガスの特徴と生活にあわせてガス抜きフィルターを使います。また、フィルターがないパウチを選択することもあります。
尿路ストーマの場合、たまった尿が逆流して感染を起こさないように逆流防止弁が付いています。
主なストーマ装具のメーカー
ワンピース、ツーピースともに、面板の形状や皮膚保護剤の成分、パウチの種類などさまざまな組み合わせのものが各メーカーから販売されており、患者さんに合った装具を選択できるようになっています。
会社 | 国 | URL |
アルケア | 日本 | https://www.alcare.co.jp/ |
イーキン | イギリス | https://www.eakin.co.jp/ |
コロプラスト | デンマーク | https://www.coloplast.co.jp/ |
コンバテック | イギリス | https://www.convatec.com/ja-jp/ |
ダンサック | デンマーク | https://www.dansac.jp/ja-jp |
ホリスター | アメリカ | https://www.hollister.co.jp/ja-jp/ostomycare |
引用・参考文献
1)日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会,編:ストーマ・排泄リハビリテーション学用語集 第4版.金原出版,2020.
2)穴澤貞夫 他,編:ストーマ装具選択ガイドブック―適切な装具の使い方.金原出版,2012.