ストーマ装具の装着・交換|ストーマ(コロストミー・イレオストミー・ウロストミー)の術後のケア
- 公開日: 2022/10/15
ここでは、ストーマ装具の装着・交換の基本知識について解説します。
ストーマ装具の装着・交換のケアの前に
術後数日は、看護師がストーマ装具の装着、交換を行います。ストーマ装具の交換時には、ストーマや周囲の皮膚の状態をよく観察し、洗浄、保護などのスキンケアを行い、合併症の予防、早期発見に努めます。
この時期に、患者さんははじめて自分のストーマを認識し、ストーマによる排泄を経験します。ここで、便や尿の漏れ、皮膚障害などのトラブルが起きると、患者さんはストーマに対して難しさや複雑さなどマイナスのイメージを抱くことになり、その後のセルフケアにも影響しかねません。
看護師はこれからの患者さんの生活にとって大切な時期であることを意識し、さりげなくてシンプルなケアと注意深い観察を心がけるとともに、患者さんの感情にも配慮しましょう。
装具の交換・装着、洗浄の手順とコツ
準備
環境を整える
排泄ケアの基本ですが、ベッド周りのカーテンを閉めるなど、プライバシーに十分に配慮します。また、周囲に臭いが漏れないように部屋の換気にも注意します。処置室など個室で行うとよいでしょう。
また、手技は標準予防対策(スタンダード・プリコーション)で行います。
必要物品の準備
<清拭用>
<その他>
患者さんへの説明
ケアの前には、患者さんに装具交換を行うことを説明します。
準備物品を整えることも患者さんとともに行いましょう。
ケアの自立の最初は、準備物品を完璧にそろえることから始まります。
患者さんの準備
術直後でベッド上でケアを行う場合には、シーツの上に処置シーツやビニール袋などをしいておきます。30分以上立位が可能になったら、立位または浅く腰かけてストーマが自分で見える姿勢でストーマケアを実施します。
腹部を露出します。上着は、洗濯はさみで止めておきます。
腹部以外の部分はなるべくバスタオルなどで覆うようにして、余計な皮膚の露出を避けます。
ストーマ装具を剥がす
術直後は全身に浮腫が生じていて、皮下組織にも水分が溜まっているため、剥離刺激による皮膚障害が生じやすい時期です。特に、高齢者はもともと皮膚のバリア機能が低下傾向にあるため、さらに皮膚障害のリスクが高まります。愛護的にケアを行うことが大切です。
剥がし方のコツ
剥がし方は、医療用テープと同じです。
リムーバー(剥離剤)を使用したほうが、皮膚刺激を軽減できます。一気に剥がそうとせず、皮膚と面板の間にリムーバーを塗布しながら、指でおさえつつゆっくりと剥がしていきます(図1)。
創の周辺は、痛みを生じさせないように注意しましょう。
面板の観察
剥がした装具の面板を観察します。面板の皮膚保護剤の溶解や膨潤の程度、また、排泄物が漏れて付着していないかなどを確認します。
剥がした装具の処理
臭気がもれないように、剥がした装具は面板を半分に折り畳み、すみやかにビニール袋に入れて封をします。
面板が密着していない、ストーマ孔の多きさが合っていないなど、漏れる原因をアセスメントします(後述 「ストーマ孔のカット」・「面板の貼付」を参照)。
患者さんの心理面にも配慮することが大切です。一度、漏れてしまうと、「一生漏れるのはないか」と不安になるものです。その不安をしっかりと受け止め、術後は浮腫などでストーマの大きさが安定しないなど、漏れの原因を伝え、一時的なことであることを十分に説明しましょう。
洗浄
ストーマの交換時には、必ず洗浄を行い、皮膚を清潔に保つようにします。排泄物や汗などによる皮膚障害を防ぐために、洗浄はとても重要です。
患者さんにも、交換時には必ず洗浄を行うこと、またその方法を説明しましょう。
ケアのコツ
まずはストーマ、ストーマ周囲の汚れや排泄物を、水で濡らした不織布ガーゼで、やさしく拭き取ります。特に術直後は、浮腫によりストーマが膨らんでいて、傷つきやすくなっているので、注意しましょう。
洗浄剤を泡立てて、指やガーゼを使い、ストーマ、ストーマ周囲をやさしく洗っていきます。特に、ストーマと皮膚の接合部の境目は汚れが溜まりやすい部分です。ガーゼを境目にそっと当てて清拭します(図2)。
洗浄後は、洗浄剤が残らないように、水で濡らした不織布ガーゼなどで、やさしく丁寧に拭き取っていきます。
ストーマの観察
洗浄時は、ストーマ、ストーマ粘膜皮膚接合部、ストーマ周囲の皮膚を観察します(表1)。また、痛みや痒みがないかどうかも患者さんに確認します。
術直後からストーマの循環障害が起こることがあるので、術後初めての交換では、可能であれば医師にストーマ粘膜の色や浮腫の状態を診察してもらうほうがよいでしょう。
ストーマ粘膜 | 色(壊死の徴候)、大きさ、形、浮腫の程度、出血の有無 |
ストーマ粘膜皮膚接合部 | 離開、びらん、発赤 |
ストーマ周囲の皮膚 | 発赤、びらん、表皮剥離、浸軟の有無など |
早期合併症の観察
特に術後は、ストーマ粘膜皮膚接合部離開などの早期合併症に注意します。
ストーマ周囲皮膚の観察
ストーマ周囲皮膚の観察については、ストーマ周囲皮膚障害の重症度評価スケールであるABCD-Stoma®に記載されている観察項目を活用するとよいでしょう。
ただし、ストーマ装具期間がわずかな術直後では、重度の皮膚障害が生じることは多くありません。
ストーマ径の測定
ストーマの縦・横・高さ(ストーマ径)をミリ単位で測定します(図3)。ノギスを使う方法もありますが、感染予防の観点から、紙の使い捨て定規がよいでしょう。 ストーマは蠕動により、大きくなったり、小さくなったりします。厳密に測定する必要はありません。
左:縦と横 右:高さ…皮膚から排泄口の高さまで
また、術直後は浮腫が生じ、ストーマが膨らんでいます。術直後は4センチのストーマが退院のころには、3センチになることもあります。そのため、術後2~3か月間は交換の際には測定を行います。
ストーマ孔のカット
前述したように術後では、ストーマに浮腫が生じているため、面板のストーマ孔の大きさを変えられる自由開孔(フリーカット・カスタムカット)の装具が多く用いられています。面板にペンなどであらかじめ印をつけてから、ハサミでカットするようにします。この際、面板のストーマ孔は、ストーマ径よりも1~2ミリくらい大きくなるようにします(図4)。
ストーマ径よりも1~2ミリくらい余裕をもたせた位置でカットする
ストーマは排泄時やリラックス時に膨らみ、緊張時には縮むなど、大きさが変化し、特に術後3日目くらいまでは、ストーマの浮腫により、その変化が大きくあらわれるためです。測定したストーマ径と同じ大きさでストーマ径をあけると、ストーマが傷ついてしまいます。
ワンピースの装具の場合、袋も一緒に切らないように注意します。袋に空間をつくると、カットしやすくなります(図5)。
ワンピースの場合、袋に空間をつくる
面板の貼付
貼付前
面板を貼付する前に、周囲の皮膚が濡れていないかを確認し、ストーマに当ててみてストーマ孔の大きさが適切かを確認します。加えてワンピース型の場合、一度装着するとストーマ袋の向きが変えられないため、排泄口の向きにも注意します。
看護師がストーマ袋の排出のケアを行う場合や、臥位での時間が長い場合、やや外側の向きにし、患者さんがトイレで排出する場合はセルフケアしやすい向きになるようにします。
貼付
面板裏側の剥離紙を剥がした後、周囲の皮膚の皺をのばし、面板を貼付します。ストーマ粘膜皮膚接合部のほうから、指の腹で押さえながらなじませていきます(図6)。こうすることで粘着力が高まるので、痛みを感じない程度にしっかりと押さえましょう。
しっかりと貼付されていれば、漏れが起こることはありません。特に際の部分は、十分に指でなじませましょう。可能であれば、患者さんに臥床したまま、30分程度、皮膚保護材と皮膚の密着を高めるように、手で貼付部分をおさえてもらうようにします。
<密着しない場合>
腹部にしわやくぼみなどがあり面板が密着しない場合には、板状またはペースト状の皮膚保護剤などでしわやくぼみを平らに補正してから装具を貼付します。柔らかな腹壁の場合には、硬さのある凸面の面板の装具に変更することで、しわやくぼみを面板で支えて粘着面を安定させることがきる場合があります。皮膚・排泄ケア認定看護師(WOC)がいる場合は、相談するとよいでしょう。
ケアの終了
ストーマ袋の排出口を閉じ、衣服を整えます。排泄物で濡れた不織布ガーゼなどもビニール袋に入れて、排泄物や臭いが漏れないように捨てます。
尿路ストーマ(ウロストミー)の場合
ケアの注意点
非禁制型ストーマ(回腸導管・尿管皮膚瘻)の場合、消化管ストーマと異なり、絶えずストーマから尿が排泄されている状態になります。
食事をした後は、尿が排泄しやすくなっているので、装具の交換は食前に行うとよいでしょう。最も適しているのは、起床した後、何も水分をとっていないときです。
皮膚に尿が付いた状態のまま装具を装着すると、面板の粘着力が弱まってしまいます。装具交換の際には、ストーマの下(足側)のズボンや下着のゴムの内側に、ディスポの処置用シーツやビニール袋を5㎝程度折り込むようにします。その上に不織布ガーゼなどを重ねて折り込んで、流れ落ちる尿が下着の下に染み込まないようにカバーします。
装具を剥がした後は、新しい装具の装着直前まで尿が流出しないように、ガーゼで尿を吸収しながらケアを行います。ガーゼを巻いてロール状にすると、吸収できる量が増えます。(図7)。
また、装具を貼る前には、患者さんに咳をしてもらい、いったん尿を出し、ガーゼに吸収させてから、装具を貼るようにします。
尿の観察
回腸導管の場合、尿が腸を通るため、粘液が混じり、ふわふわとした浮遊物で白く濁ります。また、細菌が混じり繁殖することで、臭いも強くなるため、目による観察だけではなく、臭いも確認しましょう。
混濁が多い、もしくは紫の色調の場合、尿路感染症が考えられるため、医師に報告します。また、水分を多く摂ってもらうようにします。
参考文献
1)宮嶋正子監:はじめてでもやさしいストーマ・排泄ケア: 基礎知識とケアの実践.学研メディカル秀潤社,2018.
2)前田耕太郎編:ストーマケアに役立つ知識の整理と活用.WOC Nursing,Vol.4 No.12,2016.