スポーツをする人は水虫・爪水虫に注意⁉ ~水虫になりやすい人には特徴があった~
- 公開日: 2022/7/3
5月26日に佐藤製薬主催メディアセミナーが開催されました。今回のテーマは「スポーツする人は水虫・爪水虫に注意⁉~水虫になりやすい人には特徴があった~」です。白癬はアスリートのパフォーマンス低下や要介護状態のリスク因子とされています。どのような場面で感染するリスクがあるのか、感染しないためにどのような対策を取ればよいのか、爪白癬の治療法などについて解説した、常深祐一郎先生(埼玉医科大学 皮膚科 教授)と、木村有太子先生(順天堂大学医学部 皮膚科学講座 講師)の講演をレポートします。
スポーツをする人は要注意、驚きの感染経路とは?
講演:常深祐一郎先生(埼玉医科大学 皮膚科 教授)白癬とは
白癬は、カビの一種である白癬菌が皮膚で増殖する感染症です。英語では「アスリート・フット」とも呼ばれており、運動をして、汗をかく習慣のあるスポーツ選手が罹患しやすい皮膚疾患です。
主な症状として、指の間がジュクジュクしたり皮が剥けたりする、足の裏に水膨れができる、かかとがカサカサするなどが挙げられ、足の皮膚だけでなく爪や毛などにも感染し、感染が起こった部位によって疾患名が異なります。
白癬菌は、白癬の患者さんから剥がれ落ちた皮膚(鱗屑)の中に存在し、環境中にばらまかれます。皮膚といういわゆるエサつきで散らばるため、白癬菌は月単位、場合によっては1年以上も生存している可能性がありますが、その鱗屑が足の裏に付着したとしてもすぐに感染するわけではありません。感染が成立するまでには12~24時間必要で、温泉やシャワールームなど共用部分を使用したとしても、使用後に足の裏をきちんと洗い流せば感染しません。
白癬になりやすい人、感染経路
白癬になりやすい人の実態調査において、ゴルフや水泳などスポーツをする人や靴を8時間以上履く人は、白癬にかかりやすいことがわかっています1)。これは、例えばゴルフでは雨天時でもプレーが行われ、靴の中は長時間湿度の高い状態となるほか、水泳では足がふやけていることが多く、いずれも白癬菌が増えやすい状況にあるためです。
また、スポーツ後に入浴やシャワーを利用した際、共用の足ふきマットから白癬菌を拾ってしまう可能性も大いにあります。
白癬は指の間だけでなく、足底などさまざまなところに発生します。そして、意外とかゆみを伴いません。無症状がゆえに放置され、気づかないうちに白癬菌をばらまいているケースが多いと推測されます。日本では5人に1人が白癬といわれており2)、公共施設の床には白癬菌が必ず落ちていると考えてよいでしょう。
爪の水虫はパフォーマンス低下の原因に?
講演:木村有太子先生(順天堂大学医学部 皮膚科学講座 講師)爪白癬とは
爪白癬は、足に付着した白癬菌が増殖し、爪に定着したもので、日本人の10人に1人が罹患しているとされています2)。主な症状として、爪が白色から黄色に混濁する、爪が厚くなる、爪の内側がボロボロともろく崩れるなどが挙げられます。
爪の重要性
人が物を投げたり、走ったり、踏ん張ったりするとき、指の腹に力が入りますが、爪の下にある末節骨がその力を支えています。ただし、指の先端には骨がないため、代わりに爪がその圧を受け止めることで動作がうまくできるようになっています。この爪にかかる圧力のことを爪圧といいます。
爪圧はスポーツに欠かせない重要なファクターです。例えば、野球でボールを投げる際は爪と指腹を使ってボールに回転をかけたり、コントロールを定めたりします。サッカー、ラグビー、柔道など、足の踏ん張りや踏み込む力が重要なスポーツの場合は、足の爪の長さや形、厚みがパフォーマンスに影響してきます。白癬による爪の変形などで爪の機能がしっかり生かせない状態にあると、爪圧がうまく使えず、踏ん張りや瞬発力にも影響が出る可能性も否めません。
また、歩行時には足の親指の爪の機能が非常に重要です。足の親指の爪は白癬に侵されやすく、異常が生じると歩くのに不自由を伴うこともあるため、アスリートだけでなく、高齢者にとっても足の爪を健康に保つことは大切です。
人生100年時代を健康に生きるための爪水虫治療
講演:常深祐一郎先生(埼玉医科大学 皮膚科 教授)爪白癬がもたらす弊害
足に爪白癬がある患者さんでは、そうでない患者さんに比べて転倒リスクが高いことがわかっています3)。爪白癬があると、爪圧が低下して歩行能力に支障をきたします。歩くことを控えるようになり、それが下肢筋力や運動能力の低下を招き、結果として転倒リスクが高まります。
転倒・骨折は要介護に至る主な原因のひとつです。骨折の部位によっては手術もしにくいため、転倒・骨折のリスクは少しでも減らし、改善できるものは改善していくことが必要です。
爪白癬の治療
爪白癬の治療のゴールは完全治癒です。不完全な改善では、白癬菌が残存して再発するおそれがあるため、症状が軽快したからといって治療を中断せず、完全治癒を目指すべきです。
爪白癬の治療で使用する抗真菌薬には、外用薬と内服薬の2種類がありますが、完全治癒を達成できる可能性が高いのは経口抗真菌薬です。外用薬での治療効果を認めるのは、ごく軽症の爪水虫にのみとされています。
爪白癬は早期診断と早期治療が大切であり、リスクが低い段階から診断治療を受けることが望まれます。爪白癬は単なるカビの疾患ではなく、スポーツのパフォーマンス低下や転倒リスク因子といった日常生活に影響を及ぼす可能性のある疾患です。人生100年時代、健康寿命を保ちながら生きていくためにも、爪白癬の存在を心にとめておくことが大切です。