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【連載】最新情報がわかる! 学会・セミナーレポート

前立腺肥大症治療の現状と課題

  • 公開日: 2022/5/27

2022年4月1日に、前立腺肥大症に伴う排尿障害に対する植込み型前立腺組織牽引システム「UroLift®システム」が発売されました。これに伴い、テレフレックスメディカルジャパン株式会社が『前立腺肥大症治療デバイス「UroLift®システム」発売プレスセミナー』と題したセミナーを開催しました。前立腺肥大症とはどういった疾患か、現在行われている治療方法や課題、「UroLift®システム」について解説した、日本大学医学部附属板橋病院 病院長 高橋悟先生、かとう腎・泌尿器科クリニック 院長 加藤忍先生、テレフレックスメディカルジャパン株式会社 林貴宣さんの講演をレポートします。


前立腺肥大症とは

講演:高橋悟先生(日本大学医学部附属板橋病院 病院長)

前立腺肥大症とは

 前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia:BPH)とは、何らかの原因で前立腺が肥大して、さまざまな排尿障害を引き起こす疾患です。

 前立腺は膀胱の下に位置する器官で、はっきりとした原因はわかっていませんが、男性ホルモンの低下、高齢化による性ホルモンのバランスの変化、逆行性尿道感染による慢性的炎症などが引き金となり、徐々に肥大していくと考えられています。

 前立腺の中はトンネルのように尿道が通っているため、前立腺が肥大すると尿道が圧迫され、排尿障害が起こります。膀胱の出口が閉塞することで膀胱壁の筋肉が肥厚するとともに、膀胱機能が低下し、過活動膀胱となる場合もあります。さらに進行すると、膀胱の収縮力が落ちて残尿が増え尿閉になり、尿道カテーテル留置や間欠導尿が必要となるなど、生活の質の低下につながるおそれもあります。

前立腺肥大症の症状、評価

 BPHが疑われる場合は、国際前立腺症状スコア(International Prostate Symptom Score:IPSS)やQOLスコアで重症度を評価します。

 BPHの主な症状として、残尿感、頻尿、尿線途絶、尿意切迫感、尿勢低下、腹圧排尿、夜間頻尿がありますが、IPSSでは、この7つの症状の程度について患者さんに回答してもらいます。また、QOLスコアでは、BPHによる症状に対して、患者さんがどれくらい不満をもっているか回答してもらいます。IPSSやQOLスコアの結果は、重症度の評価だけでなく、治療方針の決定や治療効果の確認にも活用されます。

 状態をさらに詳しく調べるには、尿検査、尿流測定、残尿測定、超音波検査などが行われますが、症状が生活に与える影響が小さく、患者さんが困らない範囲であれば、必ずしも治療の必要はありません。もし、生活に支障がある場合は受診を勧めます。

患者背景、治療内訳

 米国では、およそ4000万人のBPH患者さんがいるとされています。治療の内訳としては薬物療法が大半を占め、手術になる患者さんは米国でも数パーセントと非常に少ない割合です。現在行われているBPHの手術療法はそれなりの侵襲があるため、薬物療法と手術療法との間に大きなギャップがあるといえます。

 日本におけるBPHの患者数は正確にはわかっていませんが、厚生労働省のデータでは約50万人となっており1)、米国と比べると圧倒的に少ない状況です。これは、米国に比べて日本では、症状があっても我慢したり、年のせいだと諦めたりと、泌尿器科を受診しない患者さんが多いことが影響していると推察されます。

BPH患者さんにおける現在の治療方法

講演:加藤忍先生(かとう腎・泌尿器科クリニック 院長)

現在の前立腺肥大症の治療方法

 BPHの治療方法には、経過観察、薬物療法、手術療法の3つがあります。割合としては、経過観察が約2割、薬物療法が約6割、残りの約2割が手術療法となっています。

薬物療法

 治療の半数以上を占める薬物療法では、主に次の治療薬が使用されています。

・α1遮断薬

 前立腺や尿道の平滑筋に存在するα1受容体を遮断することで、前立腺や尿道を弛緩させ排尿障害を改善させる薬剤です。血管拡張作用があるため、副作用として低血圧や頭痛、射精障害が出現するケースもあります。

・5α還元酵素阻害薬

 前立腺を肥大させる男性ホルモン(ジヒドロテストステロン)の生成を抑制し、肥大した前立腺を縮小させ、排尿障害を改善する薬剤です。副作用として射精量の減少、勃起不全、性欲の減退、女性化乳房などがあります。

・PDE5阻害薬

 尿路血管などの血管拡張作用、前立腺などの平滑筋弛緩作用により、血流や酸素供給を増加させ、前立腺肥大における排尿障害を改善する薬剤です。副作用として、頭痛やほてりがあります。

手術療法

 BPHに対して行われる手術療法には、主に次の3つがあります。

・前立腺組織の切除/蒸散

 方法としては、核出術、切除術、蒸散術があります。これらは優れた閉塞解除効果をもちますが、手術中の出血や射精障害など、重篤な合併症を起こす可能性があります。また、回復まで長い期間を要します。

・前立腺組織の熱凝固/変性

 マイクロ波などによる熱凝固療法は、現在ではあまり行われていません。海外では、エタノールやボツリヌス毒素を注入する治療が行われていますが、日本では保険適応になっていません。これらの治療は中程度の閉塞解除効果がありますが、効果の一貫性・持続性は乏しく、回復するまで長い期間が必要です。

・前立腺尿道の拡張

 尿道にステントを入れる手術方法です。直ちに閉塞解除効果が得られますが、ステントによる刺激症状やステントの抜去が必要な合併症が起こる可能性があります。

前立腺肥大症のアンメットニーズ

 BPHの治療を行っていく中で、服薬が中止になるケース(副作用で薬が中止になる、薬を自己中断するなど)や、手術療法が困難なケース(手術が必要だが全身状態が悪い、出血リスクが高い、高齢で全身麻酔がかけられないなど)があります。そのため、有効な治療ができず、尿道カテーテルが留置されたままになっている患者さんがいるのが現状です。BPHのアンメットニーズとして、このような患者さんへの治療が望まれています。

前立腺肥大症治療デバイス「UroLift®システム」について

講演:林貴宣さん(テレフレックスメディカルジャパン株式会社 インターベンショナルウロロジー事業部 事業部長)

 2022年4月1日、テレフレックスメディカルジャパン株式会社は国内で初めて、前立腺肥大症に伴う排尿障害に対する植込み型前立腺組織牽引システム「UroLift®システム」を発売いたしました。

 「UroLift®システム」よる治療は、「経尿道的前立腺吊上術」とも呼ばれ、肥大した前立腺組織を持ち上げて固定し、インプラントを永久的に留置して尿道を拡張する方法です。前立腺組織を加熱、切断、破壊、切除することがなく低侵襲で行えるため、日帰りでの手術も可能になります。

 「UroLift®システム」を広く利用できるようにすることで、引き続き、前立腺肥大症に苦しむ患者さんを支援していきたいと考えています。

引用文献

厚生労働省政策統括官(統計・情報制作、政策評価担当):患者調査(傷病分類編) 平成29年.p.55.(2022年5月24日閲覧)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/10syoubyo/dl/h29syobyo.pdf

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