【病院レポート】在宅療養支援病院における看護補助者(介護職)確保の課題と現状
- 公開日: 2023/2/12
はじめに
A病院は回復期・慢性期の医療を担う170床の在宅療養支援病院です。設置主体である法人は、藤沢市南部の医療活動に携わり34年、A病院は18年目になります。
「地域に密着した入院のできる在宅医療」「医療のある介護の実践」という理念のもと、地域に貢献する医療を目指し、地域のニーズと国の施策を鑑み、数度の増床を経て現在に至ります。
開設当初は、医療療養病棟60床、介護療養病棟60床の120床から始まり、2019年1月 前述したように170床の病院となりました。中小規模の病院でありますが、「働き方改革」「多職種連携」「意思決定支援」など、積極的に取り組み実践している病院です。
新型コロナウイルス感染症禍(以下、コロナ禍)においては、「発熱外来の開設」「COVIT-19後の下り搬送患者の受け入れ」「新型コロナワクチン接種」など、可能な限りできうることに取り組んできました。
コロナ禍において情勢が厳しい中でも、多職種が連携し入退院調整を行うことで効率的な病床運営ができ、タスクシフト・タスクシェアすることで負担軽減に努めてきました。
看護部の人員確保・定着については、過去に厳しい時期もありましたが、2019年度以降比較的安定していました。しかし、2021年度から、徐々に介護職の退職があり、全国的に介護職の補充は難しく、新たな方策を考える必要が出てきました。現状と取り組みについてここに報告します。
病院、法人の概要
当院は、外来、地域包括ケア病棟46床(以下、地ケア病棟)、回復期リハビリテーション病棟60床(以下、回リハ病棟)、特殊疾患病棟33床、医療療養病棟31床の4病棟、在宅診療部を有し、同法人内に老人保健施設、訪問看護ステーション、有料老人ホームなどを備えた、地域の医療・介護を支える施設となっています。また、慢性期病棟においては看取りまで行い、回復期病棟では急性期病院や地域から患者さんを受け入れ、在宅への復帰を支援する役割を担っています。
病棟を安定的に運営するために、多職種が連携しそれぞれの役割を果たすことを目指して、多職種連携を強化し取り組んできました。
限られた病床を最大限に有効にコントロールするために、ベッドコントロールを担う病棟師長と地域連携部が連携し、前方支援、後方支援、入退院支援看護師と看護部他が協働して、患者さん・家族への細やかなかかわりを実践することができており、比較的安定した病床運営ができています。
看護部の状況
4病棟の配置基準は、地ケア病棟看護配置13:1・看護補助者25:1、回リハ病棟看護配置13:1・看護補助者配置30:1、医療療養病棟看護配置20:1・看護補助者配置20:1、特殊疾患病棟看護師・看護補助者10:1(そのうち看護職5割以上、看護師2割以上)、という基準でそれぞれ運営しています。特に地ケア病棟においては、入退院が激しい部署であるため、看護師配置を10:1として手厚く配置しています。
当院の看護補助者の内訳は、介護福祉士、介護士、身体介護をしない看護補助者、口腔ケアを担う歯科衛生士、クラークが含まれます。
2022年4月現在、看護部職員は、看護師84名・准看護師1名(含育児休暇中)、看護補助者45名(含育児休暇中)、計130名です。2021年度は前年と比較して、コロナ禍の影響もあるのか、応募が少ない状況でした。人員の確保について看護職に関しては、応募が少ない中でも比較的安定的に供給できていますが、介護職に関してはひっ迫しています。自己応募は少なく、人材紹介会社を利用せざるを得ませんが、それも難しい状況にあり思うように人員確保ができない状況が続いています。
看護職の平均年齢は40.5歳、看護補助者(介護福祉士、介護士、看護助手、歯科衛生士、クラーク含む)、は45.7歳で、平均在職年数は、看護職4.7年、看護補助者の平均在職年数5.3年であり、長いとは言えません。2020年度の離職率は、看護師15.19%、看護補助者10.20%、2021年度は看護師13.25%で、看護補助18.75%で、看護師の離職者は減っていますが、看護補助者の離職者は増加し、離職防止および定着については継続して課題であると考えています。
各部署の勤務体制は、地ケア病棟看護師3名夜勤、介護職早・日勤・遅出で夜勤なし、 回リハ病棟は、看護師2名夜勤、2019年度介護職夜勤3名体制にしましたが、介護職の退職に伴い2021年12月から夜勤2名体制へ変更、早出・日勤・遅出、療養および特殊疾患病棟、看護師1名、介護職1名の夜勤体制、早出・日勤、遅出なしとなっています。
各部署の状況に応じ、部署間の異動や勤務形態を変更し、必要な夜勤人員を確保し、残る勤務帯の業務については、看護師やリハビリ職員へ業務のタスクシフト・シェアし対応してきました。
異動に関しては、各部署の勤務体制と各人の条件を鑑み、夜勤可能な介護職、夜勤ができない介護職を、それぞれの病棟へ配置しています。また、子育て世代の介護職は、日勤のみで早出・遅出ができない場合もあります。それぞれの条件を考えると、異動できる人員は限られてきます。
2021年度の看護補助者の入職6名、法人内異動2名、退職は11名でした。介護職の退職の主な理由は、親の介護や自身の健康上の問題を除くと、病院以外の施設で働きたい、職場の人間関係などをきっかけに、今後の自分の進む道を考えたときに、病院で得た知識をもとに、キャリアアップをしたいということが多かったです。介護職はどこでも募集しているため、自分が望むフィールドで働くことは可能でしょう。
また、当院を志望する介護職の中には、経験者は施設において、医師や看護師が常にいるわけではないので、医療的なことを病院で経験することで、もう少し自分に何かできることがあるのではないかと考え病院で経験したいと転職をしてくる人もいます。
職場の人間関係の醸成については、看護部の目標にも掲げ、部署ごと研修も実施しています。また、指導が必要な職員には面談もしていますが、本人が自分のこととしてとらえられないため、改善することは難しく、この対応が効果を上げているとは言い難い状況です。
今後の対応と課題
介護職の確保が困難な状況の中で、2022年度、法人として外国人介護職の採用方針が打ち出されたため、採用面接を実施し、採用する運びとなりました。今年度下半期の採用になりますが、受け入れまでに行うこととして、1介護職のクローバーラダーの見直し 2受け入れ体制、環境を改めて整える 3研修および施設見学をすることで、すでに採用している施設を参考にし、自院にあった体制を構築するなどが考えられます。
1について、これまで当院に入職してくる介護職は、ほとんどが経験者であったため、3段階にしていたラダーを、外国人を念頭に新人職員を想定し6段階のラダーとしました。今後、実際に活用し見直していきたいと考えています。
職場環境については、継続して職場風土をよりよくしていけるよう、まずは師長、主任、副主任が、敏感に自部署の問題を吸い上げ対応していく。皆でよりよい職場環境にしていくという視点でかかわっていきたいと考えます。継続して気になることは面談し早めの対応を心がけるしかありません。なかなか目に見える対応策になりにくいですが、これらを遂行していくしかないと考えています。
おわりに
中小の病院においては、患者さんをいかに獲得し安定的な経営をしていくか、また、安定的な人員の確保・定着をしていくかは大きな課題です。
看護部は組織の中で多人数を抱える組織であり、少なからず人事面の出入りも少なくありません。採用時には慎重に面接を行い、長く働いてもらえるよう努めています。また、受け入れ側にも心温かく受け入れてもらうよう言い続けています。管理者のみが対応をしても、職場全体がそのような雰囲気にならなければ、多様な人たちとともに働くことは困難です。
また、人員にばらつきが出た場合は、どの職種もすぐ補充とはいかない場合が多く、既存の形にとらわれず、役割分担して臨機応変に対応する柔軟性も必要です。
組織の理念、職員がその方向性を見失うことなく、やりがいをもって働けること、働きやすい職場の雰囲気の醸成、環境を整えていくことが必須であると考えていますが、難しいのが現状です。
参考文献
古川幸代,他:中小病院における人材育成に関する取り組みと課題.看護展望 2022;(6): 80-3.