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【連載】手術室で必要な看護技術を学ぼう!

手術室看護師の新人教育

  • 公開日: 2022/9/16

1.手術室看護師の新人とは?

 2022年は新たに59344人1)の新人看護師が誕生しており、新卒で病院に就職し、手術室に配属される新人看護師も少なくありません。そこで今回は、手術室看護師における新人教育について、お話しします。看護師としての新人教育については、いろいろなところで学習できる機会がありますので、ここでは、手術室看護師という部分に焦点を当ててお話しします。

 手術室看護師の新人と言っても、大きく2つに分類されます。1つ目は、看護師の国家試験に合格して間もなく、看護師としても手術室看護師としても、ピカピカの1年生の正真正銘の新人看護師(以後、新卒看護師とします)です。2つ目は、既に看護師としての経験はあるが、部署異動や中途採用などで手術室に初めて配属される看護師(以後、既卒看護師とします)です。手術室看護師が、病棟や外来などの看護師と大きく異なる点は、やはり器械出し業務です。器械出し業務は、特殊な専門的知識と技術が必要ですので、病棟でどれだけ経験があっても、一朝一夕で身につけるのは困難です。新卒看護師と既卒看護師という2つの新人看護師がいるということを念頭に置いておきましょう。

2.対象を知る

 手術室であっても教育の基本は変わりませんので、まずは教育の対象である新人看護師を知ることから始まります。以下のような項目を押さえておきます。

新卒看護師の場合

出身校、職歴:5年一貫校、専門学校、短大、大学、社会人経験の有無など

 最近では、社会人基礎力の育成が注目されています。5年一貫校出身の新人看護師は20歳で入職するため、学生から社会人になったことをしっかりと認識させなければなりません。また、新卒看護師の中には、社会人を経てから看護師となった者も少なくありません。看護助手など医療に携わっていた者もいれば、医療とは関係のない職業を経験している者もいるため、社会人経験の有無も重要な情報となります。

出身地、居住地:地方出身、家族と同居、一人暮らし、寮生活など

 新人看護師には、遠方から就職する者も少なくありません。そのような場合は寮であったり、一人暮らしということが多いです。入職1年目は不安や心配など精神的負担が必ずありますので、そのようなときに家族が近くにいないということも踏まえて、精神的な支援が必要となります。一方、家族と同居している場合でも、配偶者や子供、介護を必要とする親などがいるのかは、働き方を考える上でも大事な情報です。居住地も通勤時間や方法、災害時の情報として重要です。

既卒看護師の場合

職歴:看護師経験年数、経験部署、これまで勤めていた病院の規模、転職の理由

 これまでに、何科の病棟、外来、または訪問看護などを何年経験してきたのか、どのような規模の病院、クリニックなどで勤めてきたのかを知ることで、その方の持つ知識や技術がわかるため、非常に大切な情報です。

キャリア:管理職の経験、新人指導・実習指導・教育の経験、資格の有無

 看護師の経験年数だけではわからない部分がキャリアです。経営的視点や指導力、専門的な知識・技術、看護研究の知識など、これまでに培ってきたキャリアをしっかりと見極めることが必要です。

 上記の内容に加えて、年齢も非常に重要です。年齢による世代にはそれぞれ社会背景があり、異なる特徴を持っています。有名なものでは、ゆとり世代、さとり世代、Z世代がよく知られています。この3つの世代は生まれ育ってきた社会背景を反映した世代の特徴ですので、一般的によくいわれている内容を以下にまとめます。これらの特徴も踏まえて、どのように接していくべきかを手術室全体で捉えておかなければなりません。

ゆとり世代

 一般的に、ゆとり世代とは2002年から始められたゆとり教育を受けた者を指し、1987年~2004年に生まれた世代と言われています。ゆとり教育は、それまでの詰め込み教育とは異なり、個性を伸ばす教育ですので、個性を大切にし、柔軟な思考を持っている人が多いとされています。ゆとり教育での大きな変化は、やはり学校が土日ともに休みとなったことでしょう。そのため、休むときはしっかり休んで、自分の時間を作って過ごすようになりました。つまり、ワークライフバランスを大切にし、プライベートを重要視したライフスタイルを好む人が多い傾向にあります。その一方で、脱偏差値教育を受ける中で、他人と競争する機会が少なく、競争意識が低い世代と言えます。少子化の中で他人に叱られる経験もなく、叱られ慣れていないため、メンタルが繊細です。

さとり世代

 ゆとり世代と似た言葉にさとり世代があります。ゆとり世代との厳密な区別はなく、ゆとり世代の後期がさとり世代とされています。さとり世代は、バブルの崩壊やリーマンショックなどの世界的な不況の中で生まれ育ち、阪神淡路大震災、新潟中越地震、東日本大震災などの大規模な災害を経験しています。そのため、厳しい現実を見て育った経験から、高望みをしない現実的な思考を持つ傾向があります。このような、まるでさとりを開いたかのような様子から「さとり世代」と名付けられました。 さとり世代の大きな特徴としては、不況の中で働く親世代を見ていたため、成功して裕福になることよりも、ストレスなく、気持ちに余裕を持った生活を望む傾向にあります。そのため、大きな夢を持って、一生懸命働くのではなく、生きていくために必要最低限のことを要領よくこなすことに長けています。そして、欲も少なく、現在に不自由がなければ、恋人もいらないという人も少なくありません。

Z世代

 Z世代は、もともとアメリカで名付けられたX世代(ジェネレーションX)という言葉から続き、Y世代、そしてZ世代へと生まれた年代によって分けられています。X世代は1960年~1974年(1970年代後半まで含む場合もある)、Y世代は1975年~1990年代前半、Z世代は1990年代後半~2010年頃に生まれた世代を指す言葉です。

 Z世代の一番の特徴は生まれたときからIT技術が進展していたことです。そのため、物心がついたころには、携帯電話だけでなく、スマホ、インターネット、SNSなどを当たり前のように利用している世代です。情報収集はテレビや新聞ではなく、インターネットやSNSを通じて行い、自分が知りたい情報を得る技術が高く、ネットリテラシーも高いです。さらにインターネットやSNSを通じて、世界とつながる機会も多く、多様性を持った世代とも言えます。

3.教育の土台となる環境づくり

 新人教育において、土台となる手術室の環境を整えることが重要です。新人を育てるのは、個人ではなく、手術室という組織です。先程紹介した世代と同じように、育ってきた環境によって考え方や価値観は大きく変わります。そのため、手術室の慣習を見直し、スタッフへの教育を行い、統一した指導ができるように環境づくりを行います。ここでは、以下の3点に分けて、説明します。

1)社会人基礎力を醸成する環境

 新人看護師の中でも、特に新卒看護師は学生から社会人になったばかりです。出身校の同じ新卒看護師がいると、学生気分がそのまま続いているように感じてしまいがちです。そのため、社会人基礎力を育てるのではなく、挨拶や返事、感謝、報告、連絡、相談、専門職としての意識、熱心さなどの社会人基礎力をスタッフ全員が徹底して行い、それを手術室という樽の中で充満させることで、これらは当たり前にしないといけないことなんだと頭と身体に染み込ませます。挨拶をしていないスタッフがいれば、新人が挨拶をしようと思っても、だんだんと恥ずかしくてできなくなり、最終的にはしないことに慣れてしまいます。そのような負の連鎖を断つためにも、手術室の新人看護師がなってほしい姿をスタッフ全員が共有し、模範として行動しなかればなりません。

2)メンタルサポート

 ゆとり世代にあたる新人看護師は、やはり叱られ慣れていないため、少し叱るだけで泣いてしまうという経験は皆さんお持ちではないでしょうか? 社会人としてのギャップや看護師として患者さんと接する中でのギャップなど精神的に負担と捉えて、落ち込む新人看護師は少なくありません。日本看護協会の調査でも、2020年度の新卒看護師の離職率は8.2%となっており、看護師に向いていない、この職場が合っていないと落ち込んだ後に立ち直ることができなければ、場合によってはうつ病となり、退職してしまうでしょう。もちろん看護師だけでなく、どのような職業にも、向き不向きがあるため、向いていないと思えば、転職することも1つの方法です。しかし、看護師や職場(病院)が合っているかどうかを新卒看護師が1年以内に判断するには、あまりにも期間が短いです。仕事にはストレスは付き物ですので、落ち込むときは必ずありますが、そのようなときに、同期や先輩、上司などのサポートや病院としての制度や研修があれば、落ち込みも底打ちとなり立ち直り、成長に転じてくれると思います。そのため、新人看護師へのメンタルサポートとして研修であったり、2年目の先輩など歳の近い看護師や、既卒看護師であれば、同様に中途採用で入職した看護師が話を聞いて、サポーターとなることで働き続けられる手術室を作っていくことが大切です。

3)病棟の同期との差

 環境づくりとは少し違うかもしれませんが、手術室の新人看護師が直面する壁として、病棟に配属された新人看護師、いわゆる同期との看護技術や患者さんとかかわる機会の大きな差が挙げられます。集合研修などで病棟の同期と会ったときなどに、この差に気づき、自分は全然できていない、成長していないと錯覚して焦ってしまうことがあります。そのため、ローテーション研修などを用いて、短期間ですが病棟での技術を経験してもらう機会を作ることも大切です。そして、もっと大切なことは「手術看護」という、病棟看護師にはできない特殊な看護を、自分は習得しているのだと自覚させることです。解剖や術式、たくさんの手術器械を理解し、手術進行を先読みして器械を渡す器械出し看護は手術室にしかない重要な看護技術です。また、手術進行を含め、あらゆる年代、さまざまな基礎疾患を持つ患者さんを侵襲の高い手術や麻酔を受ける中、安全に終えられるように活躍する外回り看護も大事な手術看護です。新人には、このような手術看護をしっかりと認識させるとともに、スタッフは指導時にできていることはしっかりと言葉にして評価を伝えてあげることが必要です。

4.異動することを考えた教育計画

 筆者は、これまで、コロナ病床の応援などで一時的に病棟へ行ったことはありますが、所属としては手術室の経験しかありません。しかし、看護師として成長するためには、手術という一場面だけでなく、入院前、術前、術中、術後、退院後と全体を学ぶこと、そして非周術期の患者さんの看護も学ぶことが重要です。今後、高齢化で看護が必要な人数は増えるであろう中、少子化で労働人口が減ることが予想されるため、ジェネラリストやポリバレントナースは病院として求められると考えます。つまり、手術室へ配属となった新人看護師は、いずれ異動するものと考えておく必要があります。そこで、当院では、ほぼすべての術式に対応でき、リーダー業務もできる一人前の手術室看護師を3年で育成できるように教育計画を作成しています。手術室配属時のオリエンテーションの内容と時期、各術式につく時期、リーダー業務や待機業務、救急外来当直業務に入る時期と業務に入るために達成しておくべき条件を決めています。

 以下は一例ですが、当院では、入職して1カ月で知識を叩き込み、5月から手術について実践力を磨いていきます。始めは手術件数が多く、手術時間が短い手術から経験させます。局所麻酔の手術は麻酔科管理ではなく、看護師の観察力が必要となりますので、入職してから半年程度経過し、患者さんを看ることができるようになってから、手術を担当するようにしています。

図 当院における手術室新人看護師年間スケジュール
手術室新人看護師教育スケジュール_器械出し看護師
手術室新人看護師教育スケジュール_外回り看護師

 手術の独り立ちの基準としては、1回目は見学、2回目は指導のもと実践、3回目で1人で実践としています。各術式についた回数や、縫合器やエアトームなどの特殊器械を使用した回数を把握するために手術経験表を作成し、電子カルテに入れ込むことで、新人がどこまで経験しているかを誰でもすぐに把握できるようにしています。さらに、手術に必要な知識や技術についても、説明を受けて、実践できているかチェックできるように技術チェックリストを使用しています。これらの用紙を用いて、手術に初めてついたときや指導のもと実践したときには、必ず振り返りを行い、できたことを評価し、次の課題を導き出すようにしています。このようにすることで、「説明を聞いたことがない」という基礎的な技術や知識が抜けないようにしています。

5.クリニカルラダー

 新人教育において、段階的な教育は非常に大切です。まずは、基礎的な知識を知り、その知識を理解して実践を行い、その実践を習得して応用力を身につけていく過程が望ましいです。そのために、多くの施設の看護部でクリニカルラダーが取り入られています。しかし、一般的なクリニカルラダーは、病棟看護師を対象としているラダーが多く、手術室など特殊部門では評価しにくいと感じる方もおられるかもしれません。だからと言って、一から手術室用のクリニカルラダーを作成するのは、壁が高すぎます。そこで、日本手術看護学会では、手術室の看護師を対象としたクリニカルラダーを作成しています。これらのような既存のラダーを用いて、施設ごとの特性を加えたラダーとすることで、統一した新人教育と評価ができます。当院でもクリニカルラダーを用いていますが、ポイントとしては、多忙な業務の中でも、それほど負担がかからずに評価できるように、評価方法はできる限り簡素化しておくことをお勧めします。

6.さいごに

 手術室での新人教育について紹介してきましたが、新人教育には正解がなく、非常に難しいです。しかし、これまで紹介してきたことを、何も知らずに新人に教育を行うのと、知った上で教育を行うのでは、新人の習得度、精神的負担に変化があると私は思います。ぜひ、これらの情報を活用して頂ければと思います。

引用・参考文献

1)厚生労働省:「第108回保健師国家試験、第105回助産師国家試験及び第111回看護師国家試験の学校別合格者状況について」2022年9月8日閲覧)https://www.ishin.jp/support/kokka/pdf/kango22.pdf
●公益社団法人日本看護協会:「2021年 病院看護・外来看護実態調査」(2022年9月7日閲覧)https://www.nurse.or.jp/home/publication/pdf/research/97.pdf
●日本手術看護学会:臨床実践能力の習熟度段階(クリニカルラダー)」 2020年改訂版.2020.


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