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最新のデータからみるHIV感染症の現状

  • 公開日: 2024/12/6

2024年9月10日にヴィーブヘルスケア株式会社の社長会見が開催されました。その模様をレポートします。

患者さんのニーズに応え続ける

ヴィーブヘルスケア株式会社 代表取締役社長 村木 基さん

 ヴィーブヘルスケア株式会社は、100%、HIV領域に特化したグローバル・スペシャリストカンパニーで、「HIVとともに生きる人を誰ひとり置き去りにしない」をミッションとして、HIV患者さんを取り巻く環境をよくしていくこと、HIV、エイズがなくなる日を目指して、活動しています。

 HIVの治療は大きく進歩していますが、現状では、身体の中からウイルスを完全に除去することは難しく、一生涯、治療を続けなければなりません。以前は、多くの薬剤を服用しなければなりませんでしたが、現在は1日1錠になるなど、治療も変わってきています。しかし、毎日薬を飲むことで自分がHIVであると周囲に知られるのではないか、毎日薬を飲むことで自分がHIVだと認識し精神的な苦痛を感じるといった声もあります。こういった声に応えるために、投与間隔が2カ月に1回でよい薬剤の開発などを行ってきました。新しい機序の薬剤や投与間隔が延長するといったことは、患者さんへのベネフィットとなると考えています。

HIV感染症の現状と最新のデータアップデート

ヴィーブヘルスケア株式会社 メディカル・アフェアーズ部門長 渡邉智幸さん

 厚生労働省から発表された2023年の日本におけるHIV感染者は3万人以上であり、そのうちの約90%以上が抗HIV治療を受けています。HIV新規感染者数は、2013年から減り続けており、2023年1年間のHIV新規感染者数とAIDS患者新規報告数は960人となっています1)。2022年1年間のHIV新規感染者数とAIDS患者新規報告数が884人であり、やや増えていますが、これは、COVID-19の影響で2022年は検査を受ける人が少なかったと考えられます。感染が落ち着いた2023年に入って検査を受ける人が増えたことで数字としては増加したと推察できます。こういったデータからも、検査の啓発が重要であると考えています。

 また、HIV感染症治療を行っている患者さんが65歳まで生存する確率は0.86で、非感染者が65歳まで生存する確率が0.88となっているデータ2)や、2008年〜2010年までで抗HIV治療を開始した20歳の患者さんは平均して78歳まで生きられると推定されているデータもあります3)。こういったデータから最新の治療によりHIVで亡くなるということが少なくなってきており、非感染者と同じようにがんや認知症、糖尿病といった併存疾患の治療も必要であることが増え、他科との連携も重要になってきています。

 7月にミュンヘンで開催された国際エイズ会議、AIDS2024では、さまざまな最新データが発表されました。2剤配合薬(ドルテグラビル・ラミブジン)と3剤配合薬(ビクテグラビル・エムトリシタビン・テノホビルアラフェナミド)の有効性を比較したPASO DOBLEでは、48週の時点で2剤配合薬のほうが体重増加が抑えられるといった結果が出ました。体重の増加は、合併症のリスクとなるため、注目を集めたデータとなっています4)

今後期待されるHIV感染症治療とは?

 現状では、HIVが治癒するというのは非常に難しく、一生涯治療が必要となります。こういった状況のなかで、治療の有効性が高いだけでなく、副作用、有害事象が少ない薬剤や併存疾患の治療薬との相互作用が少ない薬剤、薬剤耐性が生じづらい薬剤が求められています。また、患者さんが扱いやすい薬剤、日常生活に負担がかからないような治療を考える必要があると考えています。

 ヴィーブヘルスケアによる治験中の第三世代インテグラーゼ阻害剤の、インテグラーゼ耐性に対する抗ウイルス活性を示す初期データが公開されました。現状では、薬剤の有効性と忍容性が認められたという結果となっています5)。さらに、有効性、安全性、忍容性を明らかにするため試験が進行中です。

引用文献

1)厚生労働省エイズ動向委員会:令和5(2023)年エイズ発生動向年報(1月1日~12月31日)(2024年11月13日閲覧)https://api-net.jfap.or.jp/status/japan/data/2023/nenpo/r05gaiyo.pdf
2)Niels Obel,et al:Impact of non-HIV and HIV risk factors on survival in HIV-infected patients on HAART: a population-based nationwide cohort study.PLoS One 2011;6(7):e22698.
3)Antiretroviral Therapy Cohort Collaboration:Survival of HIV-positive patients starting antiretroviral therapy between 1996 and 2013: a collaborative analysis of cohort studies.Lancet HIV 2017;4(8):e349-56.
4)P. Ryan,et al:Non-inferior efficacy and less weight gain when switching to DTG/3TC than when switching to BIC/FTC/TAF in virologically suppressed people with HIV (PWH): the PASO-DOBLE (GeSIDA 11720) randomized clinical trial.(2024年11月13日閲覧)https://programme.aids2024.org/Abstract/Abstract/?abstractid=12253
5)Luise Rogg,et al:Phase 1 Study of VH4524184 (VH-184), a New Third-Generation Integrase Strand Transfer Inhibitor (INSTI) With a Unique Resistance Profile.25th International AIDS Conference 2024.(2024年11月13日閲覧)


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