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【連載】手術室で必要な看護技術を学ぼう!

【図でわかる】知るともっと楽しくなる骨折の手術

  • 公開日: 2026/1/29

1.意外と身近な骨折

 令和5年10月の厚生労働省の患者調査では、骨折して入院した患者さんは96万3千人いるとされています1)。1日当たり約2600人もいると考えると多いと思いませんか?

 骨折とは、骨が折れることではなく、骨が壊れることを意味します。つまり、骨にヒビが入ったり、凹んだり、欠けることも骨折になります。そのため、骨折した患者さんの中には、保存療法として安静やギプス固定などで治癒する患者さんもいます。その一方で、骨折を治療するために手術を受ける患者さんもいます。手術では、インプラントと呼ばれる金属のプレートやスクリューなどを使って、骨を固定します。どのようにして整復・固定を行うのかを知ることは、手術を円滑に行うことに繋がりますので、ぜひ、覚えておきましょう。

2.骨折治療の原則

 骨折治療には、以下の4つの原則があります。

1)整復

 骨折すると、周囲の筋肉や靭帯の力が加わることで、骨の位置が変わってしまう(変位)ことが多いです。そのため、インプラントで固定する前に、骨をきちんと元の位置関係に戻す必要があります。

2)固定

 せっかく整復しても、そのままにしているとまた骨がずれてしまいます。そのため、きちんと整復した骨を固定する必要があります。その固定する材料には、先述したプレートやスクリューといったインプラントがあります。他には、鋼線や創外固定、ギプスなども固定のために使用します。

3)血流温存

 骨も細胞ですので、回復するためには、栄養と酸素は不可欠です。栄養と酸素を送るためには、血流は欠かせませんので、骨折部位の血流を温存しておくことが重要です。手術をする場合は、低侵襲手術として皮膚切開を小さくすることで、軟部組織の損傷を最小限にすることが増えています。また、ドリルで穴を開ける際は、ドリルスリーブやドリルガイドを用いて、周囲の組織を傷つけないように、丁寧で愛護的な操作を行います。その他にも、生理食塩水による洗浄で清浄化を行ったり、低体温とならないように、適切な体温管理を行ったりと、血流温存に努めます。

4)早期の安全な運動

 骨折したときは動かさないほうが良いと思うかもしれませんが、患部の循環障害や炎症、筋萎縮、関節拘縮の予防のためには、動かすことも骨折の治療には大切です。もちろんいきなり激しく動かすと、せっかく整復して固定した骨がずれてしまう危険があるため、安全で適度な運動から始めます。運動は患部だけでなく、筋肉を動かし、血流を促進させるため、身体全体を動かします。身体を動かすことは、深部静脈血栓など術後合併症の予防にもつながりますので、適度な運動は、順調に退院するためにも非常に重要です。痛みがあると思うように動かせず、リハビリが進まないことがよくあります。そのため、術後疼痛管理チームなどが介入し、術後の疼痛を管理して、リハビリが順調に進むように努めることも大切です。

3.整復

 整復には、骨折した骨を解剖学的に段差や隙間なくきっちり元通りにする「解剖学的整復」と骨折した骨をきっちり元通りにするのではなく、機能的に長さや軸、回旋を合わせる「機能的整復」の2つに大別されます。

1)解剖学的整復

 主に関節内の骨折において適応となります。段差や隙間なく元通りにするため、骨片に全く動きがないように絶対的安定性が求められます。図1のように、橈骨や尺骨の遠位端で骨折したときは、骨同士を圧迫して隙間なく組み合わせます。そのためには、直視下で手術を行い、スクリューやプレートなどを用いて、骨片同士を圧迫して固定する必要があります。直接骨折部を観察できるため、さまざまな整復鉗子を使用でき、機能的整復に比べると容易に整復が可能となります。一方で、大きく皮膚切開する必要があるため、機能的整復に比べると軟部組織を損傷させます。

図1 解剖学的整復

解剖学的整復の解説図

2)機能的整復

 主に骨幹部や骨幹端部の骨折において適応となります。機能的整復では、図2のような脛骨の骨折の場合を想定すると、まず横にずれている骨がまっすぐになるように軸を合わせます。次に骨がねじれてずれているため、脛骨が正しい向きになるように回旋を合わせます。最後に腓骨とのバランスがずれているため、長さを合わせます。このとき、他の細かい骨片があると、解剖学的整復のように骨折部はきちんとくっついていないことがあります。ただ、機能的整復は、骨の長さ、そして骨の向き(軸と回旋)を合わせて、機能的に動けばよいという考え方で、骨片間に多少の動きがある相対的安定性を得るようにします。

図2 機能的整復

機能的整復の解説図

 手術以外では、ギプス固定や牽引が該当します。手術では、イメージと呼ばれる手術用のX線撮影装置でX線画像を見ながら、プレートや髄内釘などを用いて固定します。

 イメージで見ながら整復するため(図3)、骨折部分をすべて皮膚切開する必要がなく、解剖学的整復に比べると皮膚切開が小さく済みます。そのため、軟部組織の損傷も少なく、血流温存にもなります。ただし、X線を使用しますので、患者さん及び医療従事者が被曝するリスクを伴いますので、放射線防護をしっかりと行う必要があります。

図3 X線透視下の外科手術で用いる外科用モバイルCアームイメージングシステム

外科用モバイルCアームイメージングシステム
自走式モバイル 3D Cアーム装置 「CIARTIC Move」
画像提供:シーメンスヘルスケア株式会社

3)整復鉗子

 整復鉗子にもたくさんの種類があります。骨の固定は整復なくしてはできませんので、整復鉗子はとても大事な手術器械です。以下にいくつか代表例を挙げますので、特徴をしっかり覚えておきましょう。

①ポイント付整復鉗子

 ポイント付整復鉗子は鋭の覆布鉗子のように先端が鋭く尖っているのが特徴です(図4)。ポイント(点)で固定するため、軟部組織の損傷は比較的少なく済みますが、把持力はやや弱まります。ただし、高齢者や骨粗鬆症のある患者さんの場合は、ポイント付整復鉗子で強く固定し過ぎると、力が1点に集中するため、骨に穴を開けてしまい、別の箇所で骨折をさせてしまう危険があります。

図4 ポイント付整復鉗子

ポイント付整復鉗子

②歯付き整復鉗子

 歯付き整復鉗子は言葉の通り、ギザギザの歯が付いた面で骨を整復する鉗子です(図5)。前腕の手術では、コッヘル鉗子を整復鉗子として使用する医師も多いと思いますが、コッヘル鉗子もこの歯付き整復鉗子に該当します。ギザギザの面で骨を整復するため、ポイント付整復鉗子よりも把持力が強いです。ただし、軟部組織の損傷はやや大きくなります。

図5 歯付き整復鉗子

歯付き整復鉗子

4.スクリューによる固定

 整復鉗子などを用いて、しっかりと整復した後は固定します。固定の方法としては、ギプス固定や創外固定、スクリューやプレート、髄内釘などたくさんあります。その中でもよく使用されるスクリューについて今回は詳しく説明します。

 スクリューとはネジを意味し、一般的にもDIYなどで使用されるため、既にご存知の方もいらっしゃるかと思います。ただし、医療用のスクリューは一般的なネジと異なる部分も多いため、構造や挿入の手順などしっかり押さえておきましょう。

1)各部の名称

 らせん状になっている部分をスレッド(ねじ部)、反対側の膨らんだ部分をヘッド(頭部)、スレッドとヘッドの間の部分をシャフト(軸部)と呼びます(図6)。ヘッドにドライバーの先端をはめ込み、スレッドから骨に右回しで挿入します。

図6 スクリューの部位の名称

スクリューの部位名称

 さらに細かい名称としては、シャフトの幅の長さを軸径、スレッドの中で最も幅の広い部分の長さを山径、幅の狭い部分の長さを谷径と呼びます(図7)。一般的にスクリューの径の表示は山径の幅を表しています。また、スクリューを横から見たときに1つの山と山の間の長さをピッチと呼びます。スクリュー長はヘッドからスレッドまでの長さを表しています。

図7 スクリューの名称2

スクリューの名称

2)ヘッドの種類

 ヘッドの形状は主に六角型と星型に分けられます(図8)。一般的なネジのヘッドでは十字型を思い浮かべる方も多いと思います。昔は医療用でも十字型のヘッドがありましたが、「なめる」と言い、力がかかるとヘッドが潰れてしまい、抜くことも入れることもできなくなってしまうことが多いため、現在では六角型か星型が主流です。ちなみに、六角型よりも星型の方がなめにくいです。どちらの型であっても、大事なのは、形状にあったドライバーを使用することです。

図8 ヘッドの種類

スクリューのヘッドの種類

3)形状によるスクリューの分類

 スクリューは形状によって、「コーテックスorキャンセラス」「ソリッドorキャニュレイテッド」「ロッキングorノンロッキング」の3つの分類方法があります。

①コーテックスorキャンセラス

 スクリューはスレッドの形状に沿って骨にしっかりとはめ込むことで固定力が得られます。骨は、外側の白く硬い皮質骨と内側の赤く軟らかい海綿骨に分けられます。英語で皮質骨をコーテックス(コーティカルとも呼ぶ)、海綿骨をキャンセラスと呼びます。そのため、先端をコーテックス(皮質骨)にはめ込んで固定するか、キャンセラス(海綿骨)にはめ込んで固定するかで、コーテックススクリュー、またはキャンセラススクリューの2種類に分類されます(図9)。

図9 コーテックススクリューとキャンセラススクリューの違い

コーテックススクリューとキャンセラススクリューの違い

 骨にスクリューを入れれば皮質骨も海綿骨もどちらも通過するため、どちらにもはめ込んでいるのではないかと疑問に思うかもしれません。ここで、1本の同じネジを木に入れていくのと豆腐に入れていくのを頭で考えてみてください。木であれば、ネジを引っ張っても簡単には抜けませんが、豆腐ではすぐに抜けてしまうのは想像がつくかと思います。豆腐や海綿骨のように軟らかい物に普通のスクリューを入れても引っ張れば抜けてしまいます。そのため、浜辺のパラソルのように山径を大きくすることで、軟らかい砂浜に刺しても抜けにくくなるように、キャンセラススクリューはコーテックススクリューに比べて山径が大きくなっています。先端を硬い皮質骨にはめ込む方が固定力が高いのは容易に想像できると思いますが、関節内であったり、その先に神経が走行している場合は、骨を突き抜けずに内側で留めておく必要があるため、そのようなときにキャンセラススクリューを使用します。このような場合以外は、基本的に固定力の強いコーテックススクリューを使用します。

②キャニュレイテッドorソリッド

 キャニュレイテッドとは「中空」と言い、スクリューの中心が空洞になっていることを意味します(図10)。ソリッドはその逆で中空でないため、普通のスクリューのことです。スクリューの強度から考えて、中心に空洞があれば強度が弱まるため、基本的にはソリッドのスクリューを使用します。そのため、敢えてソリッドという表記はありません。キャニュレイテッドスクリューはガイドピンを入れた位置にスクリューを入れることができる利点があります。ガイドピンを入れ、中空のドリルで穴を開け、中空のドライバーでキャニュレイテッドスクリューを入れることができます。

図10 キャニュレイテッドスクリュー

キャニュレイテッドスクリュー

③ロッキングorノンロッキング

 この分類はプレートにも関連していますが、プレートと一体化してロックできるスクリューをロッキングスクリューと呼び、それ以外の一体化できないスクリューをノンロッキングスクリューと呼びます。ロッキングスクリューが基本的には特殊なスクリューであるため、敢えてノンロッキングと表記されることは少ないです。見分け方は非常に簡単で、ロッキングスクリューはプレートと一体化するために、ヘッドにもねじ切りが付いています。また、ロッキングスクリューはプレートとしっかり一体化するようにトルクドライバーを用いて、必ず締結を行う必要があります。

図11 ロッキングスクリュー

ロッキングスクリュー

④その他の特殊なスクリュー

 上記の分類とは別に特殊なスクリュ―として、ラグスクリューやセルフタッピングスクリューなどがあります。

 一般的にシャフトがなくスレッドのみのスクリューが多いですが、ラグスクリューは、スレッドよりシャフトの方が長いのが特徴です。このような形状であるからこそ、骨片同士を引き寄せて圧迫して固定できます。

図12 ラグスクリュー

ラグスクリュー

 本来、スクリューを入れる手順には、タッピングしてねじ切りを作る工程があります。近年はセルフタッピングスクリューが主流となり、スレッドの先端にフルートと呼ばれる溝がついていることでスクリューを挿入しながら、タップも同時に行います。そのため、手順のタッピングの工程を省略でき、手術時間の短縮につながります。

図13 セルフタッピングスクリュー

セルフタッピングスクリュー、フルート

4)スクリュー挿入の手順

 スクリュー挿入の手順は、ドリリング、計測、タッピング、スクリュー挿入の4つの工程に大きく分けられます。

①ドリリング

まずはじめに、スクリューを入れるための穴を開けます。穴を開けることをドリリングと言い、ドリルを使います。ドリルは、骨を切削する先端部、切削した骨のくずを外に排出する溝部、ハンドピースに接続するシャンク部に分けられます(図14)。

図14 ドリル

ドリル

 整復固定する骨の大きさによって、さまざまな径と長さのドリルがあります。一般的にドリルの径は、スクリューの谷径と同じサイズになります。ドリルは電動のハンドピースに接続して穴を開けます。そのままドリルで穴を開けると、高速回転により周囲の軟部組織を巻き込み、損傷する可能性があるため、ドリルスリーブを用いてドリリングします。ドリルは高速で回転しますので、使用すると摩擦熱でドリルが高温になります。ドリルが高温になると、ドリリングした周囲の骨組織が高熱により壊死してしまい、骨折の治癒の妨げになってしまいます。そのため、器械出し看護師はドリリング後のドリルを生食で濡らしたガーゼで拭いてドリルを冷やして、溝についている組織を除去しておきます。また、何度も使用し摩耗したドリルでは、穴を開けるのに時間を要するため、その分高温になりやすいです。そのため、切れが悪くなったドリルは使わずに新品を開封するようにします。

②計測

 次に、開けた穴の長さをデプスゲージで測ります(図15)。ここで挿入するスクリューの長さが決まります。スクリューは短すぎると固定力が弱くなりますし、痛みや違和感の原因となってしまいます。そのため、この計測は非常に重要です。

図15 デプスゲージ

デプスゲージ

③タッピング

 スクリューを挿入する前にスクリューがはめ込むための溝(ねじ切り)を作ります。その行為をタップを切る(タッピング)といい、使用する器械をタップと呼びます(図16)。タップはスクリューと同じ溝を作りますので、タップの形状はスクリューとほぼ同じです。そのため、コーテックススクリューでは山径の小さいタップ、キャンセラススクリューでは山径の大きいタップを使用します。最近では、セルフタッピングスクリューを使用することが多く、基本的にタッピングが不要なことが多いです。ただし、若い患者さんなど骨が硬い場合は、セルフタッピングスクリューであっても、タッピングすることがありますので、基本的な手順の工程であることは覚えておきましょう。

図16 タップ

タップ

④スクリュー挿入

 スクリューの挿入にはドライバーを使います(図17)。先述の通り、ヘッドの形状は六角型や星型などメーカーや種類によって異なるため、なめないように形状の同じドライバーを必ず使用します。基本的にスクリューは、右回しで挿入、左回しで抜去するようになっています。

図17 ドライバー

ドライバー

5)ラグスクリューテクニック

 基本的にスクリューはシャフトがなく、すべてスレッドになっており、これをフルスレッドと言います。フルスレッドのスクリューはポジションスクリューとも呼ばれ、挿入しても、骨片同士の位置、隙間が一定で変わりません。しかし、骨片同士を引き寄せて圧迫したいときには、ラグスクリューテクニックを用いることで圧迫が可能となります。先述したラグスクリューは先端のみスレッドになっていることで奥の骨片だけにねじ切りをはめ込むことで骨片を引き寄せることができます。これをフルスレッドのスクリューで同じように引き寄せる方法がラグスクリューテクニックです(図18)。

図20 ラグスクリューテクニック

ラグスクリューテクニック

 その方法は、まずスクリュー挿入の手順で紹介した計測までは同様に行います。その後、挿入するスクリューの山径以上のドリルを用いて、手前の骨片のみドリリングします。そうすることでフルスレッドのスクリューの先端のみが奥の骨片にはめ込むことができ、引き寄せることができます。このとき注意が必要なのは、ヘッドが手前の骨片に引っ掛かって止まりますが、ヘッドと骨の接触する面積が減るため、ヘッドが安定しなくなります。そこで使用するのがワッシャーです(図19)。ワッシャーとは、真ん中に穴の開いた薄くて丸い板です。スクリューを締めたときにヘッドと骨の接触面積を増やして、安定させる目的で使います。また、高齢者や骨粗鬆症などで骨が脆い場合には、スクリューを締めていくとヘッドが骨に埋まっていくときがあります。そのようなときにもワッシャーを使用することでヘッドが埋まらず安定させることができます。ワッシャーの中には中心に近い部分がくぼんでいるものがあります。そのようなときは、ワッシャーが骨との接触面積を増やすのが目的ですので、平らな方を骨側に向けて使用します(図20)。

図19 ワッシャー

ワッシャー

図20 スクリューとワッシャー

ワッシャーとスクリュー

5.さいごに

 手術を中心に、骨折治療の原則を紹介しましたが、これらのような知識をもって器械出しに付くことで、術者の考えがわかり、手術進行の予測や必要器械の準備がさらに迅速にできるようになればと思います。固定にはその他にもプレートや髄内釘などもありますので、勉強してみて自分磨きをしていくことをお勧めします。

引用・参考文献

1)厚生労働省:令和5年(2023)患者調査の概況.https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/23/dl/kanjya.pdf(2026年1月13日閲覧).

図案/宗和 守、図/マナ・コムレード


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