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【連載】ケース別スキンケアの基本を学ぼう

高齢者のスキンケア|皮膚の特徴、トラブル発生のリスクとスキンケア【PR】

  • 公開日: 2022/1/25
  • # 注目ピックアップ
  • # 老年看護

高齢者の皮膚は加齢に伴う変化などにより、スキントラブル発生のリスクが高くなります。この記事ではどのようなスキントラブルのリスクがあるのか、スキンケアをどう行うとよいのかを解説します。

高齢者の皮膚の特徴

 高齢者の皮膚は、加齢に伴い菲薄化や扁平化、張力の低下、乾燥(ドライスキン)が生じます。見た目には、ハリがなく、ペラペラでカサカサした皮膚になります。こうした皮膚の脆弱化は、次のようなさまざまな皮膚の機能低下により起こります。

図1 皮膚の構造
皮膚の断面図

皮膚の菲薄化

 表皮の最も深いところにある基底層において、基底細胞がつくられ、分化を繰り返し徐々に表面に押し上げられ、やがて角層となり最後に垢として剥がれ落ちるサイクル(ターンオーバー)の期間は、加齢に伴い延長します。基底細胞の増殖性が低下するため、表皮は薄くなっていきます。真皮も膠原線維(コラーゲン)の減少や弾性線維の変性によって薄くなり、さらに外力からのクッションの役割を果たす皮下脂肪層も、薄く脆弱になっていきます。

皮膚の張力の低下

 真皮において膠原線維が減少し弾性線維が変性することにより、皮膚の張力や収縮力、弾力性が失われ、脆弱化します。

皮膚の扁平化

 表皮突起(表皮が真皮に入り込んでいる部分)が消失し、真皮との接合部が扁平化していき、表皮と真皮の間のずれが生じやすくなります。

皮膚の乾燥

 皮脂の分泌量や角層水分量の減少により皮膚が乾燥し、浅い亀裂が生じると、外部からの刺激を防ぐ皮膚バリア機能が損なわれ、病原体やアレルゲンの侵入が容易になります。

免疫反応の低下

 表皮において皮膚の免疫に関連するランゲルハンス細胞が減少し、免疫反応が低下します。

スキントラブル発生のリスク

 高齢者の皮膚は、外的刺激に対して脆弱で外傷や皮膚損傷が起こりやすく、乾燥による皮膚バリア機能の低下から、細菌感染や皮膚損傷といったスキントラブルが生じやすくなります。なかでも、日光曝露の期間が長い人は、紫外線の影響でスキントラブルがより生じやすい傾向があります。

 さらに、低栄養状態、糖尿病や抗がん薬治療など、疾患や治療の状況によっても、スキントラブル発生のリスクが高まることがあります。表1のような疾患や治療を受けている患者さんの場合は、特に注意が必要です。

表1 スキントラブルが高い疾患や治療例
疾患 糖尿病(末梢神経障害)、肝障害(黄疸)、クローン病(瘻孔)など
※内臓病変とともに経過する皮膚変化をデルマドロームという
治療 抗がん薬治療、放射線療法、ステロイド薬の長期投与、人工透析治療

スキンケアの基本

 スキントラブルを予防するために重要なのが、スキンケアです。高齢者の皮膚の特徴を踏まえて、スキンケアの基本である洗浄・保湿・保護のケアを行いましょう。

洗浄

 洗浄剤は、ヒトのpHに近く、皮脂を落としすぎない弱酸性のものを選択します。

 洗浄剤はよく泡立て、泡を皮膚の上に置き、泡のクッションでやさしく洗います。ゴシゴシとこすらないように注意しましょう。泡タイプの洗浄剤を使うと簡便です。

 洗浄剤が残ると、スキンントラブルの原因になるため、十分に洗い流します。微温湯(38~40℃)でゆっくりと流し、皮脂を落とし過ぎないように注意します。シャワーを使う場合は、水圧を弱めにします。入浴時も同様に温度に注意し、長湯を避けるようにします。

 身体を拭く際は、擦らず、タオルを皮膚に軽く押し当てて水分を取るようにします。

 入浴ができない場合は、洗浄の代わりに清拭を行い清潔にします。強くこすらず、保湿とセットで行うようにします。また、清拭用のクロスは熱くならないように注意します。ただし、温度が低いと冷たく感じるため、程よい温かさのうちに使用しましょう。石けん清拭の場合は、石けんの成分が残らないようによく拭き取るようにします。

保湿

 洗浄後(もしくは入浴後)は、水分が蒸発していない皮膚がしっとりとしている間に、保湿を行います。保湿剤には、水分の蒸発を防ぐエモリエント成分と皮膚に潤いを与えるモイスチャライザー成分が配合されています。高齢者の皮膚は乾燥傾向で脆弱になっているため、モイスチャライザー成分が多く伸びがよいローションや、軟らかいクリームを選択するとよいでしょう(表2)。

表2 モイスチャライザーとエモリエント
分類 代表的な保湿成分
モイスチャライザー
乳酸、アミノ酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウム尿素、ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、ヘパリノイド、水溶性コラーゲン
エモリエント
炭素(ワセリン、流動パラフィン)、ワックスエステル、油脂(トリグリセリド)、スクワラン、脂肪酸、コレステロール
中村晃一郎:保湿剤の種類と特徴.WOC Nursing 2018;6(8):19.より転載、一部改変

 保湿剤を手のひらにのせ、体温で温め手のひら全体になじませます。保湿剤の量は、片腕に塗布する場合、手のひらに10円玉〜500円玉くらいの大きさを目安に皮膚の状態に合わせて調整するとよいでしょう。

 洗浄のときと同様に擦らないよう注意し、手のひら全体を使い保湿剤を浸み込ませるように、毛の流れに沿って塗布していきます。

 肘、膝、踵など骨が出ている部分は乾燥しやすいので、忘れずに塗布しましょう。

 乾燥が強い場合は、保湿剤の量を多くするのではなく、保湿の回数を増やすようにします。入浴後のほか、朝の外出前などなるべく皮膚が清潔な状態のときに保湿を行うようにします。

 またケアの一環として、入浴時に低刺激性で保湿成分が配合された入浴剤を使用するのもひとつの方法です。好みの香りの入浴剤を使うことで、リラックス効果も期待できます。

保護

 保湿剤によっても皮膚の保護は可能ですが、乾燥が強い場合は、ローションなどモイスチャライザー成分の多い保湿剤で水分を十分に与えてから、油分の多いクリームで保護をすると、より効果的です。

 おむつを着用している場合は、排泄物による刺激やおむつ内の蒸れによる皮膚の浸軟によって、スキントラブルが起こりやすくなります。撥水性のあるクリームやオイルを用いて臀部を保護しましょう。

 また、外出する機会のある方については、日焼け止めを塗ることも保護となります。

高齢者のスキンケアで特に気をつけることは?

 高齢者の多くは、スキンケアの習慣がなく、指導をしてもこれまでの行動様式をなかなか変えられない場合もあります。患者さんが長い間行ってきた習慣を否定せずに、患者さんの自尊感情を尊重したアプローチを心がけましょう。

 ナイロンタオルでゴシゴシ洗わないと満足できない患者さんには、柔らかなナイロンタオルの使用や、洗浄後にはしっかりと保湿することを提案します。

 スキンケアは継続できなければ意味がありません。初めからすべて正しい方法に変えようとするのではなく、ひとつずつ提案していき、患者さんに心地よさや効果を実感してもらいながら、適切なスキンケアへと導いていくことが大切です。

在宅での観察のポイントと指導のポイント

 全身の皮膚の観察と自覚症状の確認を行います。特に皮膚の乾燥は、痒み(掻痒感)により患者さんが皮膚を掻くこと(掻破)で皮膚が損傷し、さらに痒みが増すという悪循環に陥り、新たな皮膚トラブルを引き起こします。

皮膚の乾燥状態の確認

 腕や足の乾燥の状態を確認します。冬場などに皮膚の乾燥が強くなると、白い粉(角層の落屑)が衣服に付着していることもあるので、着用後の衣服も観察しましょう。

自覚症状の確認

 痒みや痛みなどの自覚症状を確認し、必要があれば皮膚科の受診につなげるようにします。痒みの症状には、真菌感染の可能性や、強い乾燥により医療用の保湿剤が必要となる場合があります。




敏感肌にも使えるミノンシリーズ

ミノンやさしく洗う弱酸性タオル

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詳しい製品内容についてはこちら → https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_minon/


がん治療の皮膚ケア情報サイト はだカレッジ


第一三共ヘルスケアのはだカレッジ画像

薬物療法の皮膚障害の情報を提供するサイト。
患者・家族向けの情報と医療従事者向けの情報を掲載。
医療従事者向けでは、「皮膚に学ぶ・薬に学ぶ・症例から学ぶ」「外来で役立つ・病棟で役立つ・生活で役立つ」の6つテーマに分けた情報が得られます。

https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_hada-college/hcp/

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