おむつを使用している患者さんへのスキンケア【PR】
- 公開日: 2021/12/17
おむつをしているということはスキントラブルのリスクとなります。スキントラブルを起こさないために、どのような点に注意しケアをしていけばよいのか解説します。
おむつをしていることによるスキントラブルのリスクとは
おむつをしていることで起こりうるスキントラブル
IAD(失禁関連皮膚炎)*(図1)や、褥瘡、擦過傷、おむつかぶれなどが挙げられます。おむつかぶれは、おむつのギャザーのような物理的刺激によっても生じ、まれにおむつの素材によるアレルギー(パルプアレルギー)などもみられます。
*IAD:排泄物との接触により生じる失禁に関連した皮膚炎。皮膚カンジダ症などの真菌感染症も含む。
スキントラブルを起こす要因
皮膚バリア機能の低下が最大のリスクとなります。蒸れ、摩擦刺激、圧迫、排泄物による化学的刺激などが主な要因です。
<蒸れ>皮膚の浸軟により皮膚バリア機能が低下します。蒸れの原因には、排泄物による浸軟や、生体の生理機能としての不感蒸泄があります。
最近では、おむつの吸収力が向上し、吸収ポリマーが多くの水分を含むことにより、蒸れが生じやすくなっています。マットレスやシーツといった寝床環境も蒸れに影響していて、ウレタンマットレスや体圧分散寝具によって通気性が悪くなったり、防水シートやバスタオルを敷いていることで汗の蒸発ができず、蒸れやすくなります。
<摩擦刺激>食事のときのヘッドアップ、車椅子の利用、リハビリテーション、不快感を回避するための動きなど、体動によって皮膚におむつの摩擦刺激が加わります。排泄物で湿ったおむつをつけていると、摩擦刺激力はさらに強まります。
<圧迫>圧迫の原因として、おむつのテープやギャザー、排泄物を吸収した吸水ポリマーの膨張などがあります。
<排泄物による化学的刺激>便や尿がアルカリ性に傾くと、皮膚にとって化学的刺激になります。便のpHは約6~7ですが、下痢便では消化酵素が残っていてアルカリ性に傾きます。尿(pH5~7)も空気に触れたり、尿路感染を起こしたりすると、アルカリ性に傾きます。
おむつをしている際のスキンケアの基本
おむつをしている場合でも、「洗浄・保湿・保護」がスキンケアの基本となります。適切なスキンケアを習慣的に行うことで、スキントラブルの予防につなげます。
洗浄
洗浄により汚れだけではなく皮脂膜も洗い流してしまうため、排便回数が多くても、1日1回に留めておきましょう。
弱酸性の洗浄剤をよく泡立てミセル化*してから使います。すぐに凹んでしまう泡では洗浄効果が低下するため、ホイップクリームのような泡をつくるようにします。泡を皮膚の上に置き、泡を上から軽く押さえるようにして(ポンピング)洗います。泡自体が汚れを吸着して浮き上がらせるため、泡で擦る必要はありません。最近では、泡タイプの弱酸性洗浄剤も市販されているので、そういったものを使用するのもよいでしょう。
洗浄剤の成分が残らないように、微温湯(38~40℃)でよく洗い流します。特に鼠径部や臀裂など皮膚が密着している部位は洗い残しが多いので注意しましょう。洗浄後は、水分をタオルで押さえるようにして拭き取ります。
便が皮膚に固着している場合は、擦って取ろうとせずに、クレンジングオイルやオリーブオイルなどで汚れを浮き上がらせてから、洗浄剤による泡洗浄を行います。
*界面活性剤の分子の集合体であるミセルは、汚れを吸着し内側に取り込む作用があります。ミセルを形成することをミセル化といいます。
保湿と保護
おむつ内の皮膚は浸軟が起こりやすいため、保湿剤による保湿よりも、撥水性のある油性のクリームやオイル、皮膚被膜剤で皮膚を保護することを優先することで、生理的な保湿機能を保つとともに、皮膚への排泄物の付着を防ぎます。塗布の範囲は、排泄物の付着しやすい肛門から臀部、仙骨部(突出がある場合)、ギャザーが当たる部分などです。
患者さんや家族への指導の際に注意したいのは、保湿と浸軟を混同しないようにすることです。保湿は、皮膚バリア機能を保持するために角質内の水分を適切に保つことです。一方、浸軟は角質内の水分が過剰になることにより細胞同士の結合が弱くなっている状態です。患者さんや家族の中には、保湿は単に皮膚を水に浸すことだと解釈したり、逆に浸軟がよくないからとドライヤーで皮膚を乾燥させたりする人もいます。保湿と浸軟の違いを説明し、適切なケアを行ってもらいましょう。
おむつ内の皮膚は、生理機能として備わっている角質の水分量で保たれており、撥水して保護することにより浸軟を防ぐことが、皮膚バリア機能を保つことにつながります。
スキントラブル早期発見のための観察ポイント
スキントラブルのリスクである蒸れ・摩擦刺激・圧迫についてアセスメントを行い、その程度を確認していきます(表1)。特に好発部位は注意深く観察するようにします。スキントラブルが発生しやすい状態だと評価した場合、リスクを取り除くための対策をしっかりと行いましょう。
好発部位 |
鼠径部、臀部、陰部 |
観察ポイント |
蒸れ:おむつ内の皮膚の状態、失禁の頻度 摩擦刺激:活動性・可動性の低下、認知機能の低下 圧迫:苦痛回避行動の低下とその原因(感覚の低下・身体機能の低下など) |
注意すべき皮膚症状 |
発赤、紅斑、びらん、ただれ、潰瘍、白苔、鱗屑、皮疹など |
全身状態やスキンフレイル(脆弱な皮膚状態)の確認も重要です。全身状態が低下した状態では、生理機能が維持できなくなり、スキントラブルを生じやすくなります。
スキンフレイルでは、栄養状態低下の皮膚への影響、汗や皮脂の分泌低下による皮膚の乾燥(全身)、皮下組織や筋組織の萎縮による皮膚の粘弾性の低下(たるみ)などの症状に注意します。
おむつ内の皮膚に問題がなくても、全身的にスキンフレイルが起きている場合、おむつ内の皮膚の耐久性も低下していると考えたほうがよいでしょう。
在宅療養中、特に気をつけること
在宅では、入院中に比べ医療者の目が届きにくく、観察の機会が減ることは否めません。清潔保持、認知機能、ADLが低下しやすいことからも、いっそう注意を払う必要があります。
医療者の観察の機会の低下
全介助の場合は、おむつ交換や入浴時に臀部を観察する機会がありますが、自分で履き替えができる紙パンツを使用している患者さんなど、自身で排泄行為ができる場合、臀部を家族や医療者に見せたくないという人も少なくありません。かゆみや痛みなどの症状が出現したら家族や医療者に伝えてもらうようにして、スキントラブルをできるかぎり早期に発見することに努めます。
清潔保持の低下
排泄物の洗い残しの有無、おむつの交換頻度、入浴の頻度など、清潔が保持されているかを確認します。
認知機能の低下
認知機能の低下に伴い、本人に自覚がなくても排泄コントロールに問題が生じている場合があります。失禁やその対策としてパッドの重ね付けや失禁量に見合わないパッドや紙パンツを使っているといった不適切なおむつの使用は、スキントラブルの原因になります。トイレ排泄や失禁の状況、おむつの使用状態などを確認し、認知機能を考慮した排泄へのサポートやケアを検討します。
ADL低下
ADLの低下については「できるけどしないADL」に目を向けましょう。日中座ってずっとテレビを見ていて動かない、今までのようにできなくなってきたので料理をしないといった状態が続くことで、身体機能にも影響が生じます。
ADL低下から身体機能が低下し、おむつ排泄、ひいてはスキントラブルにつながることも視野に入れ、できるだけ早い段階で、どういったサポートができるか介入方法を検討します。
参考文献
●紙屋克子,他監:褥瘡ケアのプロになる―看護の技とおむつケア.医学と看護社,2012.
敏感肌にも使えるミノンシリーズ
ミノン薬用保湿入浴剤
しっしん・肌あれ対策ができる入浴剤。お湯に溶けるクリームのようなうるおい。敏感肌・乾燥肌の方へお勧め。グリーンフローラルの香り(微香性)。
[医薬部外品]販売名:ミノン入浴剤
480mL、400mL(つめかえ用)
詳しい製品内容についてはこちら → https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_minon/
がん治療の皮膚ケア情報サイト はだカレッジ
薬物療法の皮膚障害の情報を提供するサイト。
患者・家族向けの情報と医療従事者向けの情報を掲載。
医療従事者向けでは、「皮膚に学ぶ・薬に学ぶ・症例から学ぶ」「外来で役立つ・病棟で役立つ・生活で役立つ」の6つテーマに分けた情報が得られます。