【連載】ICU・HCU看護のQ&A! 皆さんの疑問にお答えします!
ICUに入室中の患者さん、清潔ケアは毎日行うべき?
- 公開日: 2025/8/28
治療や安静の維持を優先する場合も
清潔ケアは、入院中の患者さんに対して行われる基本的なケアの一つです。皮膚や陰部、口腔内などを清潔に保ち、身体的・精神的な快適さを提供することにもつながります。しかし、どの患者さんに対しても一律に「毎日必ず実施する」と決めることが本当に適切かどうか、一度立ち止まって考えてみてもよいかもしれません。
清潔ケアを実施する際は、患者さんの全身状態や治療状況、身体的・精神的負担、感染リスクなど、さまざまな要素を考慮しながら、ケアの必要性と優先順位を判断することが求められます。
集中治療室(ICU)に入室している重症患者さんは、循環動態が不安定で、高用量の昇圧剤の投与や循環動態をサポートするデバイスを使用していたり、呼吸不全から人工呼吸器管理中であったりします。こうした状況では、体位変換によって循環動態や呼吸状態が変動する可能性が高く、もし変動すれば命にかかわることもあるため、清潔ケアよりも治療や安静を保つことが優先されます。
一方で、皮膚や口腔内の清潔が長期間保たれない状況が続くと、皮膚炎、褥瘡、誤嚥性肺炎、人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発生リスクが高まることが考えられます。また、重症で意思疎通が難しい患者さんでも、発汗や皮脂による不快感、口腔内の乾燥に伴う苦痛を感じている可能性は十分考えられ、清潔が保たれないことで患者さんの尊厳が損なわれるおそれがあります。そのため、タイミングを見極めて、清潔ケアを行っていくことも重要です。
清潔ケアはどのタイミングで行うべきか
清潔ケアを行うタイミングは、いくつかの視点から判断します。まずは、患者さんの循環動態や呼吸状態が安定しているかどうかです。循環動態や呼吸状態が安定している場合は、使用中の薬剤やデバイスを考慮しながら、安全に実施できる方法を検討したうえで清潔ケアを行っていきます。次に、清潔ケアによって期待できる効果が身体的負担を上回るかどうかです。例えば、発熱による発汗や便失禁による皮膚の汚染がある場合、清拭を行うことで皮膚トラブルや褥瘡の発生を予防できるだけでなく、患者さんの安楽にもつながります。
施設によっては、清潔ケアはスケジュール化されているかもしれませんが、特に重症な患者さんの場合、状態に応じてケアの必要性をアセスメントし、柔軟に対応していく姿勢が看護師として大切です。清潔ケアは良い意味でも悪い意味でも、患者さんに影響を及ぼすケアであるということを改めて考えてみてもよいかもしれません。