【連載】ICU・HCU看護のQ&A! 皆さんの疑問にお答えします!
Aライン(動脈ライン)のヘパリンロック。ヘパリンを溶解するのに生理食塩水以外を使ってもよい?
- 公開日: 2025/8/27
ヘパリンとは
Aライン(動脈ライン)のように、一定期間挿入したままになるデバイスでは、ライン内に血栓が形成されるリスクがあります。そのため、定期的なフラッシュやヘパリンロックを行い、血栓が形成されないようにします。
ヘパリンは抗凝固薬であり、血管内デバイスやライン内にある血液の凝固を防ぐ目的で使用されます。ヘパリンロックを行う際は、一時的にヘパリンロック用のプレフィルドシリンジ製剤を用いることもあれば、生理食塩水にヘパリンを加えて持続的に投与することもあります。
ヘパリンは何で溶解すべきか
今回の質問のケースでは、生理食塩水ではなく、ラクテックにヘパリンを混注していたということですが、ここで重要なのは、「ヘパリンを何で溶解するか」という点でしょう。
ヘパリンは生理食塩水で溶解するのが基本です。これはヘパリンの添付文書にも記載されており、標準的な希釈法・使用法と考えられます。また、生理食塩水に含まれている電解質はナトリウムやクロールといったもので、他の薬剤を混注しても配合変化が起こりにくく、安定性や安全性があることから、ヘパリンを混注しても問題になることはない溶解液といえます。
一方、ラクテックのような乳酸リンゲル液には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、乳酸といったさまざまな電解質が含まれており、これらがヘパリンの抗凝固作用に影響を及ぼすおそれがあります。例えば、カルシウムは血液凝固にかかわる因子のため、ヘパリンの抗凝固作用を妨げる可能性があると理論上は考えることができます。
以上のことから、ヘパリンの溶解液としては生理食塩水を用いるのがよいでしょう。もし、臨床で質問のようなケースに遭遇した場合には、必要に応じて医師や薬剤師に情報を共有するとともに、刺入部やその周囲に出血を示唆する所見がないか、Aラインの波形が正しく描出されているか確認することも必要です。
なお、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)が生じる懸念から、ヘパリンをルーチンで使用しない施設もあるかもしれません。自施設のプロトコールを改めて確認することも大切です。