痛みが強く触らせたがらない患者さんの褥瘡ケア
- 公開日: 2014/3/21
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褥瘡とは?褥瘡の看護ケア|原因と分類、評価・予防・治療など
褥瘡ケアのコツ
褥瘡への理解がないとき
患者さんの中には、自分は寝たきりではないので、褥瘡はできないと思っている人がいます。しかし、たとえばトイレ歩行が4時間間隔で、それ以外はベッドで寝て過ごしているなど、寝たきりの少し手前ぐらいでも、褥瘡のリスクは十分にあります。そこで、少しでも痛みや異変を感じたら、早めに看護師に報告してもらうなど、セルフケアができるような患者指導も大切です。その場合は、単に「床ずれを予防しましょう」では患者さんには伝わらないので、「同じ姿勢を続けていると~」、「痩せている部分の骨が飛び出していると~」など、患者さんが具体的にイメージできるように話すと、協力をしてもらいやすくなります。
ケア用品の使い方のコツ
現在、さまざまなタイプのドレッシング材が出ていますが、それぞれの特徴を知り、褥瘡の状態に合わせて使い分けることが大切です。
たとえば、皮膚の損傷があり、滲出液のある褥瘡では、吸収力のある素材のものを選択します。ただし、密閉するタイプのドレッシング材は、あまり頻回に交換すると、剥離刺激で皮膚にダメージを与えてしまうので、交換頻度は2~3日に1回が目安です。また、排泄物でふやけている皮膚は非常に脆弱なので、こすりすぎないようにし、石けんでの洗浄は1日1回程度にします。オイルタイプの清拭剤で、汚れを浮かせてから、それを押し取るような感じで、やさしく拭いてください。軟膏は、塗布面積や塗布量が重要です。下痢の患者さんに対して使用する亜鉛化軟膏などは、便と皮膚の接触を避けるよう皮膚が見えないくらいに、パックするイメージで厚く塗布します。「3㎜程度の厚さで」など、スタッフ間で統一してできるような工夫が必要です。
下痢のアセスメントと排便コントロール
下痢などで排便コントロールの難しい患者さんは、皮膚の処置と同時に、早く下痢から抜け出すことが大切です。ただし、感染性胃腸炎など止めてはいけない下痢もあるので、下痢の原因を見極めた上で、主治医と相談して内服薬で腸内環境を整えます。
痛みが強く、触らせたがらない患者さんにどう対処する?
痛みを訴える場合、多くは褥瘡そのものの痛みだったり、がんなどの疾患による痛みです。基本的には鎮痛剤で対処しますが、体位変換やドレッシング材の交換といったケアの際の痛みにも配慮して行います。
①褥瘡そのものの痛み
■〔理 由〕
褥瘡の中でも、真皮層が損傷した状態、NPUAPの分類でいうとステージⅡでは、強い痛みを感じます。それは、神経終末が真皮層に集中しているためで、むしろ深い創のほうが痛みは少ないといわれます。また、創に炎症や感染などがみられる場合も痛みを伴いやすいといえます。
■〔対処法〕
このような場合は、内服薬か点滴による消炎鎮痛剤を処方してもらい、処置の前に鎮痛剤を使用します。さらに、創は空気に触れると痛むため、手早く軟膏を塗る、あるいはドレッシング材を貼るなど、創を早めに密閉するようにします。そして、患者さんにも、処置をすれば痛みが落ち着くことを、しっかり説明しましょう。
さらに創を洗浄する場合も、水道水のお湯はしみて痛む場合があるので、生理食塩水で洗浄するとよいでしょう。また、洗浄水の温度は、冷たいと皮膚温を下げ、創傷治癒を遅延させるため、人肌に温めます。水圧はある程度ないと洗浄効果が得られませんが、患者さんの疼痛を考慮した水圧で行います。
②がん性疼痛の痛み
■〔理 由〕
がんの種類によっては、がんそのものの痛み、つまりがん性疼痛があり、体位変換や褥瘡の処置のために体を動かすことによっても、痛みを増強させる場合があります。特にがんのターミナル期では、体に触れられただけで痛みが生じたり、体中が痛くて寝返りすらできない患者さんもいます。
■〔対処法〕
処置の際には、場合によってはレスキューを使用し、なるべく手早くすませ、早く安楽な体位に戻してあげることが大切です。また、毎日のガーゼ交換や創の洗浄は、ターミナル期の患者さんにとっては、苦痛でしかない場合もあります。滲出液が多い場合は、吸収力のあるドレッシング材を使用して、交換回数をなるべく少なくすることも一つの対応策です。
③剥離刺激に対する痛み
■〔理 由〕
ドレッシング材やテープを皮膚から剥がす時に、皮膚の角質が取られると同時に痛みを強く感じる場合があります。また、脆弱な皮膚の場合は、痛みだけでなく、皮膚も一緒に剥がれてしまう場合があります。
■〔対処法〕
テープやドレッシング材を剥がす場合は、基本的には剥離剤を使用します。ただし、剥離剤は保険適用がなく、雑品扱いとなり、患者さんに購入してもらう必要があります。また、ドレッシング材やテープは、アクリル系よりシリコン系の粘着剤を使ったものを選ぶほうが、肌にはやさしいといえます。剥がし方でも痛み方はずいぶん違います。もう一方の手で皮膚を押さえながら、必ず両手でゆっくりと愛護的な剥がし方をします。また、ドレッシング材やテープの基材によって剥がし方も異なるため、正しい剥がし方を知っておきましょう。非粘着性ドレッシング材の場合は、ドレッシング材が創に固着していることによる痛みもあります。そのときは温湯で湿らせながら剥離します。
ケア用品が限られている場合はどう対処する?
最近では、ドレッシング材もポリウレタンフィルムやハイドロジェル、ハイドロコロイド、ポリウレタンフォームなど、さまざまなタイプが出ています。これらは、滲出液の量や感染の有無、創の大きさなどによって、使い分けるのが理想です。また、外用薬(軟膏)についても同様です。
しかし、病院や施設によっては、ドレッシング材や軟膏が、それぞれ1種類しかないなど、ケア用品が限られている場合も多いと思います。特に新規のケア用品を採用するのはなかなか難しく、当院のような大学病院でも、申請してもすぐには採用されないのが実情です。ケア用品が限られている場合は、今あるもので何とか工夫をするしかないでしょう。
そこで、まずは今あるケア用品の特徴や薬効、使用の目的をしっかり理解しましょう。看護師の中には、使用している軟膏が、創にどのように作用するのかを知らない人もいます。ただ、「指示されたからこの軟膏を使うのではなく、軟膏を使用する目的は何か、どんな効果を発揮するのかを知り、塗り方や塗る量を考えて、施設内でケアの方法を統一すことが大切です。
近隣のWOCとの連携でケアや物品の情報交換を
また皮膚・排泄ケア認定看護師(WOC)がいない施設では、近隣の施設のWOCと連携し、ケアについての情報交換を行ったり、勉強会を開催するなど、「看看連携」を持つことをお勧めします。
この看看連携ができたら、一度、自分の施設にあるケア用品を、WOCに見てもらうといいでしょう。中には、「Ⅱ度のドレッシング材や軟膏ばかりがある」といったように、ケア用品の偏りが見られる施設もあります。褥瘡のステージ別、感染の場合、ガーゼなどの物品についてのバランスをWOCにチェックしてもらい、バランスよくそろえておくことで、限られた用品でも応用が利くようになり、ケアの幅も広がります。
一方、軟膏やドレッシング材など、処方箋でまかなえるものは、病院が採用しているものを使用しなければならない場合がありますが、テープやガーゼ、保湿剤、剥離剤などは「雑品」として、患者さんに購入してもらうことで、使用できるようになります。そのためには、物品ごとの価格や得られる効果など、患者さんにしっかり説明できるだけの知識が必要です。
さらに、最近では、「ラップ療法」など被覆材の代用品を使用するケースもあるようです。日本褥瘡学会では、医療用として認可された創傷被覆材の継続使用が困難な在宅などの療養環境では、使用することを考慮してもよいとしています。その場合は、褥瘡治療について十分な知識を持った医師の責任のもとで、患者さん、家族に説明、同意を得て実施すべきとされています。
(ナース専科マガジン2014年4月号より転載)
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