第4回 大阪労災病院での取り組み紹介
- 公開日: 2014/6/13
がんの化学療法では 、抗がん剤の副作用が口腔粘膜に及びやすく、高頻度で口腔粘膜炎などの口腔合併症が起こります。その結果、食事や水分摂取、会話などが困難になり、患者さんのQOLが著しく阻害されます。
外来でのがん化学療法がますます増える中で、どんなケアや支援が求められるのか。看護師に求められる口腔ケアのスキルを身につけるセミナーが開催されました。
外来化学療法を受けている間に口腔外科の診察も終了
大阪労災病院は、堺市にある病床数678 床の総合病院。地域がん診療連携拠点病院ではありますが、がん専門病院ではない総合病院から、積極的な取り組みの事例報告をいただきました。
同病院の外来化学療法診療科開設は、2005 年。8床、年間治療件数2,000 件弱でのスタートでしたが、2012年には年間治療件数6,000件以上と3倍に激増。新たに病棟を改装し、21床規模の新しい外来化学療法室が誕生したところから、外来化学療法室の先進的な口腔合併症対策が始まりました。
最大の特徴は、外来化学療法室に、本日の講師、澤田恵里さんが常駐する口腔外科診察室が設けられ、化学療法室内での診察が始まった点にあります。
看護師の問題意識を直接、口腔外科医師に依頼・相談
同院では、外来化学療法を選択した患者さんは、開始に先立ち基本的に口腔外科医の診察を受けます。また、オリエンテーションでは、看護師によるモニタリングやアセスメントが実施されます。
そこで、口腔内を観察し、自覚症状を聞き取り、さらに定期的な歯科受診の有無や口腔ケアの習慣も確認した上で、口腔合併症の発現リスクを検討。同時に、患者さん自身がセルフケアの実施状況や自覚症状などを記入する治療日記も開始され、迅速な情報キャッチに貢献します。
このようなシステムにより、個々の患者さんの口腔ケアの問題点は、看護師が発見できるようになりました。それを、すぐに澤田さんに報告して、診察が実施されます。
うがい薬や軟膏なら、当該科として処方されます。抜歯や歯を削る処置が必要になったり、継続介入が必要な場合のみ、主治医からの紹介状が必要になり、これをもって口腔外科受診というかたちになります。
担当医から依頼のあった患者さんのみが口腔外科を受診していた2012 年以前は、トラブルが発生してからの依頼が多かったと言います。外来化学療法室の看護師が直接、依頼・相談ができるようになって、予防的介入が可能になりました。
この先進的な改革の秘訣をたずねると、「『できない』ではなく『どうしたらできるか』、各部門の担当者と前向きな意見交換をすることだと思います」という答えが返ってきました。
患者さんは化学療法を受けている間に、同スペース内の診察室で口腔外科の診察もすませることができる。口腔外科のカルテなしでOK、診察は無料。
病棟を改装してつくられた外来化学療法室。21床が横に並び、化学療法前診察室、口腔外科診察室も隣接。担当医師、口腔外科医師、看護師、薬剤師が常勤する。