第59回 日本糖尿病学会年次学術集会 ランチョンセミナー14 糖尿病内科に求められる“Act Against Amputation”
- 公開日: 2016/7/15
2016年5月19~21日、第59回日本糖尿病学会年次学術集会が京都で開催されました。増え続ける糖尿病の治療のあり方が問われるなか、最新の知見が結集、19日に行われた「糖尿病内科に求められる“Act Against Amputation”」では 、糖尿病患者さんの足の切断を防ぐために医療従事者が取り組むべき課題が提示されました。
今回はその様子をレポートします。
糖尿病患者の増加と足病変の現状
厚生労働省の患者調査によると、糖尿病の患者数は、2011年には約270万人(文献1)、2014年には約316万6,000人(文献2)と、年々増加しています。糖尿病の合併症の1つでもある足病変は、60歳以上のおよそ700万人にみられ、重症化して、足の切断に至る患者さんは年間約1万人に上るといわれています*1。
下北沢病院糖尿病センターのディレクターである富田益臣さんはこうした現状を踏まえ、今後も高齢化の進展により糖尿病患者数が増えるとともに、足病変の患者さんも増加していくことが予想されると話します。
また、足病変の治癒には長い期間を要すること、特に高位切断例では予後が思わしくない(文献3、4)実態を伝え(図1)、次のことを強調しました。
「何よりも大切なことは、足病変の予防と早期発見です。そこで、医療従事者は足をみて“何が危ないのか”“いつ受診させるのか”という共通のアラームをもち、患者さんに“どうなったら危ないのか”“何が危ないのか”をきちんと伝えることが重要です」
足病変の発症リスク因子には、主に神経障害、血流障害、高足底圧(足底腱膜の肥厚)の3つがあり、これらの因子について、事例を挙げて、診断の経過や治療などの解説がありました。
血流障害のある患者さんの例では、陥入爪からの感染により壊疽が生じ、足背動脈の血管内治療を行ったものの、足趾までは血行が改善されず、切断の検討に至ったといいます。また、重症下肢虚血の患者さんの例では、典型的な症状である間欠性跛行がみられない人も多いことから、あらためて早期発見・治療の大切さと難しさが示されました。
*1 日本フットケア学会、日本下肢救済足病学会、日本メドトロニック調べ。