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【連載】臨床で使える精神科看護

[不安が強い]精神科患者さんにみられる症状を学ぼう❶

  • 公開日: 2017/9/20

具体的な症状の把握とその対応を!

不安のとらえかた

 不安は「未知の、内面的で漠然とした、あるいは葛藤的な脅威に対する反応」とされます。ですから不安は、自然災害やごく日常のありふれた生活の中でも経験されるもので、軽度の不安は誰もが経験する反応です。
しかしうつ病など精神疾患の症状として現れたり、不安自体が主症状として現れたりする病的な不安もあります。正常な不安は、原因となる出来事に対処できたり、それが過ぎてしまうと消えたりします。一方、病的な不安は、「原因」「強さ」「持続時間」が鮮明になります。
不安の程度が強くなり、頻繁で慢性的になっていたら病的と考えられるでしょう。病的な不安は、多くの精神疾患や身体疾患でみられます。
 また、不安に似ている症状として恐怖がありますが、これははっきりとした外的対象への感情となります。

不安の症状

 不安の症状は、「不安」「心配」「怖い」「憂うつ」といった主観的な訴えのほか、行動面では、不安への防衛反応として、話題が変わりやすかったり、表情が硬くなったり、落ち着きがなくなるといった変化を伴う場合があります。また身体面では、不安を感知した脳の刺激を受け、脈拍上昇や発汗、口渇、嘔気、動悸などがみられます。

不安を主症状とする精神疾患「不安障害」

 病的な不安としては、精神疾患の1つである「不安障害」が代表的です。
 不安障害は、誘因や病態によって分類することができます。主なものを取り上げ以下の表にまとめます。

代表的な不安障害の図

主症状の1つに不安が挙げられる精神疾患

 不安障害のほかに、精神疾患の主症状として不安がみられることもあります。

 うつ病では、しばしば不安焦燥感(イライラ、あせり、落ち着かない)、苦悶(苦しい)、罪責感、絶望感などが、うつ症状と入り混じった形で現れることがあります。また、統合失調症の場合、妄想や幻聴などといった陽性症状や離人感など、特有の精神病症状に伴う不気味で深刻な不安感が体験されることがあります。
心気症(身体表現性障害)では「何らかの重い疾患にかかっているのではないか」と身体や病気に対する過剰な不安がみられます。ストレスに対する反応である適応障害では、不安症状はうつ症状とともに、最もありふれた症状です。

一般身体疾患や物質などが原因となって現れる不安

 一般身体疾患や薬物などの物質が原因で不安症状を呈する場合もあります。身体疾患では、脳器質性疾患、甲状腺機能障害などの内分泌疾患、膠原病などです。また薬剤性では、アルコール、危険ドラッグ、処方薬剤(ステロイド、インターフェロン、抗がん薬、降圧薬、制吐薬など)が挙げられ、全身状態をアセスメントして、検査や診断に結びつけることが大切です。場合よっては、生命にかかわるケースもあります。

不安に対する治療

 治療は、薬物療法と認知行動療法や精神療法、精神分析療法などが併用されます。薬物療法は、抗うつ薬(SSRI)と抗不安薬が主に用いられます。

不安への対応

 まずは、不安の程度をアセスメントします。不安の症状として現れている心理的、身体的なサインの内容と程度を確認します。必要に応じてバイタルサインを測定し、科学的な指標を用います。

 さらに、不安による日常生活への影響をアセスメントします。特に認められやすいのは、食欲不振や睡眠障害(入眠困難、早朝覚醒等)です。また、社会生活への影響によって症状の程度をアセスメントすることもできます。確認行為が頻回で遅刻したり、回避行動で外出できなくなったりする場合などです。
また、必要に応じて環境調整を行います。そして看護師として落ち着きのある保護的な態度や説明を心がけ、患者さんが安心感や安全感をもてるように配慮しましょう。治療のほか、落ち着いた環境下で、時間をかけて十分に話を聴くことで、不安感を軽減できる場合もあります。また話を聴く中で、患者さんが自分自身で不安の整理ができ、対策が立てられることもあります。


参考文献
井上令一 監:カプラン臨床精神医学テキスト第3版 DSM-5 診断基準の臨床への展開,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2016.

厚生労働省:不安・緊張 気持ちが落ち着かない・どきどきして心細い,みんなのメンタルヘルス(2017年6月30日最終閲覧)
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/symptom/2_01_02symptom.html

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