チアノーゼのアセスメント|問診の仕方と緊急性の判断
- 公開日: 2017/12/18
STEP1 まずはこれを考えよう!
チアノーゼとはどんな症状をいうのか
健康であれば私たちの唇や爪の色は、ピンクやオレンジがかった赤い色です。チアノーゼとは、こうした唇や指先などが、青っぽい紫色に見える状態です。その原因は、血液中の酸素不足です。
動脈血の色は、血液の中で酸素の運搬役を担っているヘモグロビンの色です。ヘモグロビンが赤い色をしているために、血は赤く見えるのです。ところがこのヘモグロビンは、酸素と結合しているときと結合していないときでは色が違います。前者は鮮やかな赤い色で、後者は赤紫色になります。
爪(の下の皮膚)や唇は、毛細血管が体表に近いので酸素を含んだ動脈血が透けて見えるため、赤みを帯びた色に見えるわけです。ですから、赤く見えるはずの色が青っぽい紫色になっているというチアノーゼの出現は、酸素をもたないヘモグロビンが多い、すなわち患者さんが酸素不足であることを示しているのです。
酸素と結合していないヘモグロビンの量(脱酸素ヘモグロビン)が5g/dL以上になるとチアノーゼが出現します。ただし、貧血の患者さんは、脱酸素ヘモグロビンが基準値を越えにくくチアノーゼ出現がわかりにくいために注意しなければなりません。なぜならば、貧血の患者さんは、もともと血中のヘモグロビンが少ないので、酸素が結合していないヘモグロビンの量が、チアノーゼとしてわかるほどの絶対量に至りにくいからです。
つまり、チアノーゼの出現条件として、血中のヘモグロビンの何パーセントが酸素を離しているのかという「割合(濃度)」ではなく、血液中に脱酸素ヘモグロビンがどのくらい含まれているかという「絶対量」が必要です。
臨床では日常的に利用されているデータである、SpO2はヘモグロビンがどのくらい酸素と結合しているのかを示す指標の一つです。しかし、SpO2はヘモグロビン総量のうち、酸素と結合しているヘモグロビンが何パーセントなのかを示すものであり、絶対量を示しているものではありません。
したがって、測定時の患者さんのヘモグロビン総量が少ない場合、すなわち貧血のときには、測定値が高くても身体の隅々に十分な酸素が行き渡っていないことになります。貧血のある患者さんは、パルスオキシメーターだけで酸素化の状態を判断するのは危険です。
Action1 チアノーゼの原因となる疾患・症状のリストを想定する
チアノーゼには、2つのタイプがあります(表)。
表 チアノーゼのメカニズムと主な原因疾患
メカニズム | 主な原因疾患 | 主な出現部位 | |
---|---|---|---|
中心性チアノーゼ | 呼吸器や循環器に障害が起こると、ガス交換がうまくいかなくなり、脱酸素ヘモグロビンが増加してしまう。青っぽい色の脱酸素ヘモグロビンが増えることにより、皮膚が紫色に見える状態 | 肺水腫、肺炎、肺がん、気管支喘息、COPD、肺血栓塞栓症、気胸、ファロー四徴症、三尖弁閉鎖症 など | 口腔粘膜、眼球結膜 |
末梢性チアノーゼ | 末梢の毛細血管で循環不全が起こり、血液がうっ滞しその部分で酸素消費量が増えてしまい、起こる | 動脈や静脈の閉塞による末梢血管障害、うっ血性心不全、寒冷刺激、緊張など心因性のもの など | 指、耳朶、鼻尖、頬部 |
1つ目は中心性チアノーゼで、血液中の酸素が全身で低下している状態です。口蓋や舌、唇の内側などに見られ、手や足のばち状指を伴うこともしばしばです。中心性チアノーゼは、重篤な疾患の存在を意味しています。
2つ目は、末梢性チアノーゼです。肺から動脈血中の酸素の量は正常ですが、血液循環が悪いため、血流が停滞している部分に局所的に酸素が低下するために起こります。例えば、寒冷にさらされたり、極度の緊張を感じて生じたりするチアノーゼの場合は一過性であり、深刻ではありません。しかし、毛細血管の狭窄や梗塞などに伴って現れるチアノーゼは、中心性と同様に危険なサインです。
いずれにしろ、その原因疾患は、次のように大きく3つに分けられます。
■[呼吸器疾患]
呼吸そのものがうまくいかないため、酸素が取り入れられない。あるいは、外からの酸素の取り入れはできていても、肺でのガス交換(呼吸)がうまくいかない。いずれの場合でも、呼吸器の異常を示し、チアノーゼがあるということは重症ということを意味します。
●肺水腫:肺の中に余分な血液、水分がたまった状態。肺が水浸しになると、ガス交換を行うことができなくなり、酸素不足でチアノーゼが生じます。全身が低酸素状態になるので、脳をはじめとする全身の臓器に連鎖的に悪影響が及ぶ重篤な状況です。
●肺炎:肺に炎症が起こった状態です。主な症状は咳嗽、発熱、悪寒、胸痛、喀痰などで、呼吸困難やチアノーゼ、血圧低下が見られたら重症肺炎の徴候です。
●肺がん:進行すると、咳嗽、喀痰・血痰、胸痛、息苦しさなどの症状が現れるようになります。
●気管支喘息:慢性的に気管支に炎症を起こしている状態。刺激因子によって喘息発作が引き起こされ、呼吸困難に陥ります。
●COPD(慢性閉塞性肺疾患):末梢気道に慢性的な炎症が起こり、気流が制限されるためガス交換が障害され、呼吸困難を起こしやすくなります。不可逆的な疾患なので、酸素不足は慢性的であることが考えられます。
■[循環障害]
循環器疾患があると、全身の細胞に十分な酸素を供給できなくなります。
●心不全:心臓のポンプ機能が低下して、臓器が必要としている血液を十分に提供できなくなった状態です。特に左心不全は左心室から全身に血液を送り出す働きが悪くなるので、その手前にある左心房や肺静脈に血液が貯留し、肺水腫を招きます。
●末梢血管障害:手足末梢の小動脈が寒冷刺激、精神的緊張などの生理的条件や、僧帽弁狭窄、心筋梗塞などの疾患により、過度に収縮する病態。末梢組織への酸素の移行が増し、静脈血の脱酸素ヘモグロビンが増えるためにチアノーゼが生じます。
●肺血栓塞栓症・肺梗塞:血栓が肺動脈を梗塞して、呼吸困難や胸痛を引き起こす病態を肺血栓塞栓症といいます。心肺停止に至る危険もあります。ほとんどが、下肢の太い静脈にできた血栓が血液に乗って流れ、肺に詰まって起こります。その結果、末梢の肺組織が壊れて壊死を起こした状態を肺梗塞といいます。詰まった血管が太くて、壊死を起こした部分が大きいほど重症です。エコノミークラス症候群(ロングフライト血栓症)は急性肺血栓塞栓症です。
●ショック:心筋梗塞や重篤な外傷などにより、生命維持に支障をきたすほど血圧が低下した状態。循環血流量の減少により、細胞が酸素不足に陥って壊死します。
●メトヘモグロビン血症:メトヘモグロビンが、血液中のヘモグロビン総量の1割以上になると、酸素供給が不十分となり、チアノーゼ症状を引き起こします。遺伝性と中毒性があり、中毒性はアミン類、ニトロ化合物、亜硝酸エステル類、サルファ剤などが原因物質とされています。動脈血を採血すると血液がチョコレート色を呈していることがあります。
■[その他]
何らかの理由で異常ヘモグロビンが血中に増加するとチアノーゼが現れます。毒物(シアン化物)もチアノーゼを生じさせます。
STEP2 命の危機にかかわる緊急性を判断しよう
中心性チアノーゼは、主に口腔粘膜、眼瞼結膜などに出現し、末梢性チアノーゼは、指、耳朶、鼻尖、頬部などに出現します。ですから、チアノーゼの出現部位を見極めることも、アセスメントの重要な手がかりです。呼吸器疾患に起因するチアノーゼは、頻呼吸、呼吸困難、喘鳴、咳嗽、喀痰などの呼吸器症状を伴っていることが多いのが特徴です。また、これらの随伴症状があれば、胸部所見、胸部X線写真により精査できることも多いので、主治医に伝えて検査の準備を進めましょう。
Action2 問診で原因を推定しながらリストを精査する
チアノーゼの原因疾患をリストアップしたら、患者さんの状態を把握しながらアセスメントを進めていきます。
まずは、問診で絞り込んでいきましょう。
■問診の流れ
01 既往歴を確認する
「肺や心臓の病気などはありませんか?」
【こんな質問で絞り込もう】
●喘息やCOPDと診断されたことはないですか?
●これまでに狭心症や心筋梗塞の発作を起こしたことはありますか?
●多血症といわれたことはありますか?
【アセスメントのヒント】
●チアノーゼが出現するような疾患があるかどうかを確認します。
●肺や心臓の病気の多くは、血液中の酸素濃度低下の原因となる可能性があります。
●赤血球数が増加してしまう多血症の場合は、軽度の酸素欠乏でもチアノーゼがみられることがあります。
02 呼吸状態を確認する
「息苦しくないですか?」
【こんな質問で絞り込もう】
●動くと苦しさは増しますか?
●楽になる体勢はありますか?
【アセスメントのヒント】
●呼吸の苦しさを自覚している場合には、呼吸器や循環器の疾患が考えられます。
●息苦しさを感じていない場合には、気温の変化やストレスなどによる末梢性チアノーゼと考えられるので、身体を温め、心身をリラックスさせるケアを行いましょう。
03 随伴症状の有無を聞く
「他に何か気になる症状はありませんか?」
【こんな質問で絞り込もう】
●痰や咳は出ませんか?
●胸の痛みはありませんか?
●熱はありませんか?
【アセスメントのヒント】
●胸痛、咳嗽、喀痰、喘鳴、呼吸困難が続いている場合、何らかの呼吸器疾患が疑われます。
●ピンクの喀痰が見られたら、肺水腫の可能性もあります。
●発熱を伴う場合には、肺炎も考慮しましょう。
●20分以上継続する胸痛がある場合は心筋梗塞と考えられるので、緊急対応が必要です。
●胸痛があり、短時間で治まった場合にも、狭心症の可能性があるので、迅速な対応が求められます。
Action3 緊急度を判断する
患者さんの状態をより詳しく把握するために、問診の他に聴診や視診によるアセスメントを行いましょう。
■バイタルサインをチェックする
ショックを起こしていないかどうかを確認します。脈や血圧に異常があると緊急性が高いといえます。また、発熱がある場合は肺炎の疑いもあります。
■呼吸状態の確認
呼吸音を聴取した際に、副雑音が聞こえると肺炎や肺水腫、気管支喘息などの呼吸器の疾患である可能性があります。ただし、粗い断続性の副雑音はうっ血性心不全でも聴取できるため、その他の所見も考慮して精査しましょう。さらに、呼吸数や努力呼吸を行っているかどうかも確認します。
■酸素飽和度を確認する
数値に異常がない場合は、寒冷によって末梢血管が収縮し、チアノーゼを起こしていると考えられます。動脈血を採血した際に、血液がチョコレート色をしていた場合、メトヘモグロビン血症の可能性があります。
■ばち状指の有無
ばち状指が確認できる場合は、先天性心疾患や肺疾患などによる中心性チアノーゼを伴うことが多く、慢性的に低酸素状態であるといえます。
STEP3 アセスメントを看護につなごう
患者さんにチアノーゼが現れているということは、酸素不足のサインです。特にショック状態や心筋梗塞など一目でわかる強度のチアノーゼの場合には、窒息などの超緊急事態である可能性が高く、意識レベル、自発呼吸の有無を確認し、すぐに医師に連絡しましょう。
呼吸器疾患のチアノーゼは、多くの場合、酸素吸入によって消失します。しかし、心性あるいは脈管疾患によるチアノーゼは酸素吸入でも消失しません。COPDの場合、高濃度酸素投与によってCO2ナルコーシスを誘発することがあるので、必ず既往歴を確認しましょう。
緊急性のある場合の看護
全身性のチアノーゼで急激なバイタルサインの異常を伴う場合は、ショック状態として所定の対応を迅速に開始します。
急激に起こった末梢性のチアノーゼに対しては、急性の動脈狭窄または動脈塞栓と考えて、エコーや血管造影などの検査および血栓溶解や除去などの治療を始めなくてはなりません。気道閉塞などの呼吸不全の場合は、ただちに心肺蘇生を開始します。いずれも迅速に救命救急を行います。
ここがPOINT! 糖尿病の患者さん
糖尿病の患者さんの場合、狭心症や心筋梗塞の発作が起こっても、胸痛を感じにくくなっていることがあります。糖尿病の患者さんにチアノーゼがみられたら、こうした発作を見逃さないように注意しましょう。また、高齢者も無痛性の心筋梗塞を起こすことがあるので、注意が必要です。
緊急性のない場合の看護
安静を保ち、酸素消費量を増やさないようにして、全身の酸素不足を軽減し、呼吸困難を緩和します。起座呼吸など患者さんが呼吸しやすい体位を取るように促しましょう。また、全身状態の経過観察を細かく行い、症状の悪化を防ぎます。酸素飽和度に異常がない場合は、寒冷刺激によるチアノーゼと考えられるので末梢を温めます。確定診断に応じて、原因疾患の治療を行います。いずれにしろ、酸素投与と心身のリラックスを基本に、個々の原因疾患に即した看護を組み立てることが、チアノーゼが現れた際のケアの基本です。
まとめ
チアノーゼは身体が酸素不足に陥っているサインです。これもまた、急激に起こった激しい症状の場合は、生命危機につながる危険が高いといえます。空気の取り入れ、すなわち換気に問題があるのか、それとも呼吸はできていても体内のガス交換や酸素の運搬に問題が起こっているのか。酸素をキーワードに精査していくと、的確にアセスメントの筋道がたどれるでしょう。
(「患者さんのサインを読み取る! 山内先生のフィジカルアセスメント【症状編】」より転載)
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