【書籍紹介】アドラー心理学の考え方を看護に活かす
- 公開日: 2017/12/19
キーワードは「勇気づけ」
数年前から、アドラー心理学の関連本が多く出版されています。アドラー心理学は自己啓発本に使用されることが多く、看護には関係なさそうにみえますが、実は看護に活用できる点が多くあります。本書には、具体的にどのような場面でどのように活用できるのかということが、看護師ならではの悩みをまじえながら、簡潔にわかりやすく書かれています。
アドラー心理学は、医師であったアルフレッド・アドラーによって提唱されました。アドラーは、「個人心理学」という独自の心理学理論を確立し、フロイトやユングとともに「心理学の三大巨頭」の一人と呼ばれています。
アドラー心理学を知る上でポイントとなるキーワードは「勇気づけ」(困難を克服する活力を与えること)です。一般的に、勇気づけは他者に対して行いますが、アドラー心理学においての勇気づけはまずは自分自身に対して行います。看護師は、人のため、患者さんのため、ということを自然と求められています。しかし、他者への勇気づけも、自分の心を勇気や満足感で満たすことができて初めて行うことができると述べられています。
自分を勇気づけるための具体例として
・短所を長所に言い換える(リフレーミング)
・ダメ出しではなく、できたことや良かったことに目をむけて“ヨイ出し”をする
・6割でいいや、と楽観主義で生きる
など、その他にもいくつか挙げられていますが、特に難しいことは書かれていません。
思考にはクセがあり、毎日少しずつ意識するだけでも、気づいたときには大きく変わることができると述べられています。
また、古典的フロイト心理学では「原因論」を重視するのに対し、アドラー心理学では「目的論」を重視します。なぜ?(原因論)ではなく、なんのために?(目的論)と考えることで、大切なのは過去の原因ではなく未来の目的であると、物事をより前向きに受け止めることができます。
本書は、これらアドラー心理学の考え方をもとに、看護師の悩みについて具体的な対処法を示しています。
相性の合わない人と一緒に仕事をするにはどうすればいいのか。
指導してくれる人によって、やり方が違う場合の対処法は。
仕事をこなすのが遅く、テキパキしている人と比べて萎縮してしまう。
失敗して注意されると立ち直れない など
看護師であれば一度は体験したことがあるのではないか、という悩みばかりです。加えて、上司・同僚・後輩との職場の人間関係や患者さんとの関係についてなども書かれており、幅広い場面で活用できることがわかります。
看護師は、不規則なシフト、責任重大な仕事、常に人とかかわっていなければならないなどストレスの多い職業です。我慢をしてストレスを抱えたままだと自分だけが辛くなり、心が疲れ、いつか折れてしまいます。
この本は、実際に看護師として働いていた長谷氏とアドラー心理学実践の第一人者である岩井氏の共著で執筆されています。そのため看護師の立場に寄り添ってまとめられていますので、この一冊を読めば、アドラー心理学の基本となる考え方、そのポイントが自然に学習でき、まさに時間のない看護師にはぴったりです。
そして、どんな年代・性別・環境の看護師でも、きっと今の仕事や生活をよくするエッセンスに出会えるであろう一冊となっています。
著:岩井俊憲、長谷静香
定価:本体1,500円(税別)
サイズ:四六判
ページ数:208ページ
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