ガス抜き(駆風浣腸)とは|方法と手順〜根拠がわかる看護技術
- 公開日: 2018/2/20
ガス抜き(駆風浣腸)とは
ガスの貯留による腹部膨満、それに伴う腹痛や悪心などを緩和するために行われるケアです。肛門にカテーテルを挿入し、ガスの排出を促します。
大腸内視鏡検査後、腸内に残った空気を抜くために行うこともあります(腸内に空気を送り込んで検査を行うため)。
ガス抜きの禁忌
肛門にカテーテルを挿入するため、肛門周囲に病変がある、炎症性疾患、疼痛や出血がある患者さんには禁忌です。ただし、軽度の痔の場合は、ケアを優先し実施することもあります。実施の際には、必ず医師に確認します。
ガス抜きのケアで注意したいこと
腹部のアセスメント
実施前には、必ず腹部をアセスメントし、ガス貯留による腹部膨満であるかを確認します。腹部が膨満する理由には、ガスの貯留だけではなく、便の貯留、腹水の貯留などがあります。
腹部が張っている部位で打診を行い、ガスであるかどうかを確認することが重要です。ガスは空気のため、打診を行うと鼓音がします。
また、どこに貯留しているかをあらかじめ確認しておきます(図)。
フィジカルアセスメントがとても重要になります。そのために、腸、肛門の解剖生理をよく理解しておきましょう。
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ガス抜きの手順
物品の準備
- ディスポーザブル手袋(未滅菌)
- マスク
- ビニールエプロン
- 潤滑剤(グリセリン液など※キシロカインゼリーはショックを起こすリスクがあるため使用しない)
- おしりふき(ウエットティッシュタイプ)
- ネラトンカテーテル
- 水の入った尿器(カテーテル尾側を浸しガス排出を確認するため)
- 防水シーツ
- タオル(患者さんにかけるため)
看護師の準備
1 カテーテルを固定する看護師とお腹に圧をかける介助をする看護師、二人で行うことが望ましいです。
2 感染対策のため、スタンダードプリコーションのもと、マスク、ビニールエプロン、手袋を着用します。
患者さんの準備
1 周りの患者さんにも配慮して、カーテンでプライバシー空間を確保し、腸内に貯留したガスを排出することを説明します。
また、腹部膨満の苦しみを緩和するケアであることも伝えます。
声掛け例:「お腹の張りをとるために、お尻にカテーテルを入れて、たまっているガスを出します」
2 患者さんを左側臥位にし、膝を少し屈曲してもらいます。
どうして?:下行結腸以下のS状結腸・直腸は、左上より右下方へ走行しています。そのため、左側臥位をとるとS状結腸以下の部位は自然な位置になり、ガスが排出しやすくなります。
※ただし、側臥位がとれない場合は仰臥位でも行うこともあります。
3 臀部を露出します。患者さんの臀部以外には、タオルをかけるなど、できる限り露出を少なくして、患者さんの羞恥心に配慮します。
ガス抜きの実施
※ケアの実施には、手順ごとに患者さんに説明を行い、不安を取り除くように配慮します。
※実施中は、患者さんの様子を観察し、痛みや異常がないかどうかを確認します。
1 腹部をアセスメントし、ガスの貯留している部位を確認します。
2 防水シーツをしき、その上に水の入った尿器などを配置します。
3 潤滑剤をカテーテルの先端に塗布します。
4 患者さんに口で呼吸をしてもらいます。
どうして?:肛門の筋肉の緊張を緩ませるためです。
5 片側の拇指と示指で肛門を開きながら、もう一方の手でカテーテルを肛門に、5~6センチ程度、脊髄に添うように挿入します。
6 尾側のカテーテルは水の入った尿器に浸します(図)。
7 一人の看護師がそのまま、カテーテルを固定し、もう一人の看護師がガスの貯留部位から肛門に向かって、腸管の走行にそって圧をかけていきます。
圧は、ガスを肛門まで押し出すようなイメージでかけていきます。
8 ガスが排出されると、水に浸したカテーテルから泡が出てくるので確認します。
9 腹部膨満感が解消されたら終了します。
まだ腹部が張っている、もしくはガスが排出されない場合は、腹水などガス貯留以外の理由が考えられるため、医師に報告します。
10 臀部をきれいに拭き、衣服、寝具を整えます。
11 ガスの排出により、身体状態に異常がないかどうか、鼓腸の程度やバイタルサインなどのフィジカルアセスメントを行います。
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