労作時のサチュレーションの低下は危険信号[うまくいかなかったcase]
- 公開日: 2018/5/9
酸素の上げ下げを考えるとき、患者さんが低酸素状態になっているかどうかを見極めなければなりません。ここでは、うまくいかなかった事例から見極め方を解説します。
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事例紹介
75歳男性間質性肺炎
合併症:非結核性抗酸菌症(NTM)、肺アスペルギルス症
●入院に至る経過
2年前に間質性肺炎の診断を受けたが、呼吸状態は安定していた。外来フォロー中に合併症が出現し、内服治療を開始した。血痰の喀出は認めるものの、止血剤の内服でコントロール良好であった。しかし、1週間前から咳嗽と喀痰が増加したため、受診したところ炎症反応が上昇。喀痰よりNTM検出、浸潤影の増大を認め、NTM感染の疑いにて入院となった。入院時は、「咳が出るとなかなか止まらないからつらい」と話すが、ADLは自立していた。
●入院時の状態
[バイタルサイン]体温36.0℃、脈拍109回/分、血圧93/61mmHg、呼吸回数16回/分、SpO2 96%(室内気下)
[身体所見]呼吸音正常、両側肺野fine crakles(+)、右上肺野coase crakles(+)、血痰(+)、咳嗽(+)[画像検査]胸部X線網状影、CT 蜂巣肺
間質性肺炎とは
間質性肺炎は、肺の間質(狭義では肺胞隔壁、広義では小葉間間質、胸膜近傍などを含む)を炎症の場とする疾患で、さまざまな原因によって肺胞壁に炎症を起こし、壁が厚く硬くなり(線維化)、呼吸をしてもガス交換に時間がかかります。
肺胞壁は保たれていても、小葉間隔壁や肺を包む胸膜が厚く線維化して肺が膨らむことができなくなる病態も知られるようになりました。線維化が進んで肺が硬く縮むと、蜂巣病変(嚢胞)ができて胸部CTで確認されます。
特徴的な症状は、歩行中や入浴・排便などの日常生活の動作の中で感じる労作時呼吸困難、乾性咳嗽。長年かけて次第に進行してくるため、自覚症状が出るころにはかなり病態が悪化していることが多いですが、風邪様症状の後に急激に呼吸困難となる急性増悪で病院に搬送されることもあります。
男性に多く、発症は通常50歳以降であり、危険因子として「喫煙」がもっとも重要です。原因を特定できない間質性肺炎を「特発性間質性肺炎」と呼び、特定疾患治療研究事業対象(公費対象)の疾患となっています。