Introduction いまなぜ「がんの緩和ケア」を学ぶのか
- 公開日: 2018/7/31
がん対策30年。がんと共生するための緩和ケアが整備されてきた
わが国において、がん(悪性新生物)は1981年より死因の第1位であり、2016年には37万人以上が亡くなり、生涯で2人に1人ががんに罹患すると推計されています。こうしたことから、依然として、がんは私たち国民の生命と健康にとって、身近で重大な問題になっています。
わが国は、1984年より、「対がん10カ年総合戦略」を策定し、それに続く「がん克服新10か年戦略」「第3次対がん10か年総合戦略」と30年間にわたり取り組むとともに、2014年からは「がん研究10か年戦略」として、がん研究を推進しています。法律の整備も進められ、2006年6月にがん対策基本法が成立しました。2018年度からは、この法律に基づく第3次がん対策推進基本計画が実施されています1)。
このような背景や国の支援を得ながら、がんとの共生=緩和ケア提供体制整備が進められました。この30年の間に医療を取り巻く環境も教育も変化し、患者さんの疾病だけを捉えるのでなく、QOLを大切にするために、チーム医療(医師だけが中心ではない)が推進されるようになりました。
いま、がんは、患者さんを医師、看護師、薬剤師、リハビリテーションの専門家(理学療法士・作業療法士)、歯科医師、歯科衛生士、管理栄養士、メディカルソーシャルワーカー(MSW)など多くの職種がかかわり、支えていく病気となっています。 しかし 、規模の大きながん診療連携拠点病院であるなら、多職種によるチーム医療は実践されることが多いですが、まだまだ、国指定のがん診療連携拠点病院は全国に400施設ほどで、十分とはいえません。また、今後は在宅での緩和ケアの必要性も大きくなっていく状況のなかで、幅広い知識をもつ看護師の役割はますます重要となっています。
あらゆる現場で緩和ケアを担う看護師の方々へ――すぐ活かせる実践の知識です
患者さんの全体像(疾患・症状・社会的背景・家族背景など)を捉えながら、日々、より苦痛が少なくなるようにケアしていくには、がんが及ぼす症状や治療の副作用、正しいアセスメント方法を知ることが重要です。また、患者さんだけではなく家族を含めたこころのケアが求められます。そのすべてにかかわり、ケアが実践できる職種は看護師をおいてほかはありません。
今回の連載では、臨床経験年数に関係なく多くの看護師が学習ができるように、概論からはじまり、がんの痛み、治療期の症状、医療用麻薬の副作用、終末期に出てくるそれぞれの症状への対応、がん患者さんの精神的ケア、家族・遺族ケアまでを現在第一線で活躍する、がん看護専門看護師、緩和ケア認定看護師が実践を意識した視点で作成いたしました。どの回も緩和ケアの基礎を示すとともに、「すぐ実践できる看護」として即現場で活かせる内容を含んでいます。看護師のみなさんの臨床のお役に立てることを願っています 。
【引用・参考文献】
1) 厚生労働省:がん対策推進基本計画第3期.2018年3月.(2018年7月24日閲覧)http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000196975.pdf